レシピは著作物でないけど、レシピの説明文や写真は著作物

Togetter:クックパッドに進出したEM菌の衝撃を読んで、クックパッドに掲載レシピが食べれるものであるのかを管理する責任があるのかなぁとおもい利用規約などを読んでみたけど、当然、免責だった。

【第12条 自己責任の原則】

  1. 利用者は、利用者自身の自己責任において本サービスを利用するものとし、本サービスを利用してなされた一切の行為およびその結果についてその責任を負うものとします。
  2. 利用者は、本サービスのご利用に際し、他の利用者その他の第三者および当社に損害または不利益を与えた場合、自己の責任と費用においてこれを解決するものとします。

禁止行為にも食べれないレシピや健康を害するレシピを掲載しないでくださいというのはなかった。で、知的財産権のところを読んでいたところ、「レシピを一度アップロードしたら、ID削除、レシピ削除してもクックパッドがそれを使い続けられるのか?」と思ったしだい。

【第13条 知的財産権等】
1. 利用者は、利用者が送信(発信)したコンテンツにつき、当社に対して、当社又は当社の指定する者が当該コンテンツを日本国内外問わず対価の支払いなく非独占的にいかなる制約も受けずに自由に使用する(複製、公開、送信、頒布、譲渡、貸与、翻訳、翻案を含みます。)権利(サブライセンス権も含みます。)を、当該コンテンツに係る著作権その他一切の権利の存続期間が満了するまでの間、許諾したものとみなされるものとし、これをあらかじめ承諾します。利用者は当社および当社の指定する者に対して、当該コンテンツに係る著作者人格権を保有していたとしても、当該権利を行使しないものとします。

ところが、料理レシピの著作権について...Yahoo知恵袋:料理レシピの著作権について教えてくださいによると、そもそもレシピは著作権法が守るものではないとのこと。「調理法」の法的保護を受けようとするのであれば、「製法特許」「製法の実用新案」を取得する必要があるとのこと。なので、製法特許や実用新案をとっていないレシピについては知られたら、それを誰が広めても文句言えないというものらしい。まあ、おいしそうだと思って料理したら、ライセンス料要求されるという事態や嫌だものね。

相手の前提知識を把握できるのは基本的に良いこと

はてなブックマークでは厳しいコメントが多いけど、この記事は研究者および専門家にとって、科学コミュニケーションの普及にとって、新聞の読者にとってとても有意義な記事だと思う。叩かれたり、批判されるから隠してしまうようになる方がよくない。

〜前略〜

吉岡助教は筋力余裕度計を持参した。よし、準備万全。取材するぞ。そう意気込んでいた。ところが…。説明が始まったとたん、言葉が全く頭に入ってこない。

「最小下肢関節モーメント」「インバースダイナミクス解析値」「物体の回転速度を計測するジャイロセンサ」「膝と股関節で生み出されるトルク」…。

淡々と専門用語を使って説明する吉岡助教。単語の意味が分からず、言葉というより機関銃の弾のようにも感じた。私大文系卒の私にはほとんど理解不能の世界だった。
〜中略〜

説明が終わり質疑応答に入った。質問したいのだが、「何がわからないのか」が、わからず声をあげることができない。頭が真っ白になった。
〜中略〜

集中力が切れかけたころだった。吉岡助教が「超高齢社会を迎えた日本では、長く生きることに加え、お年寄りが元気に自分で動けることが大事。筋力余裕度計を普及させ、老後の生活の質を向上させたい」と力強く話した。

初めて話がすとんと頭に入った。研究は、寝たきりのお年寄りが後を絶たない状況を変えたいとの気持ちで進めていたという。

上司に電話連絡したところ、「この研究、お前はどう思ったの」と聞かれた。「説明がまだうまくできないんですけど、興味あります」と言うと笑われたが、「わかった。30〜40行程度で出稿して」といわれ、急いで執筆にかかった。

だが、研究の意義はわかったものの、開発の経緯や詳細はまだ理解できていない。そこで会見後も吉岡助教にくっつき、何度も質問して簡単な言い換え表現を探した。繰り返すうちに、専門的な単語は原稿に必要ないことがわかってきた。時間はかかったが、何とか原稿をまとめ送稿した。
〜後略〜

この記事を信じるならば、この不幸な事態は以下の組み合わせで起こっている。

  • 発表者の聴衆の前提知識の想定が高すぎる
  • 記者の事前勉強が足りない

余程のスター研究者・技術者でないかぎり、記者会見なんて頻繁にやらないしやれない。なので、講義、学会発表や研究費申請書などと違い、何度か経験して聴衆の前提知識にあたりをつけることができない。その点、このように素直にどこまでわかっているのかを教えてくれると、将来、記者会見や取材を受ける立場になったときに前提知識に当たりをつけることができる(もちろん、十分な前提知識を持っている記者の方もいるはず)。

また、事前勉強をしてもらうための補足資料やポインターをプレスリリース(記者会見のお知らせ)に示しておいた方が、やる気のある記者にとっても、記者会見する側の研究者・技術者にとっても幸せになれるみたい。

以下のNatureの記事にあるように「非常に愚かなことだ」と一言でばっさりいかれてしまう日本社会に住んでいる我々は、マスコミだけ叩いていてもアレなので、自衛としても、社会貢献の一種としても、お仕事としても、うまい付き合い方を考えた方が良いと思う。

そういう意味で、記者の方が科学や技術分野の取材においてしんどい点をどんどんカミングアウトしてくれた方が「あれまぁ。それは困りますね。じゃあ、どうしましょうね。」という次のステップにすすめるのではないかと思う。

まあ、私の場合は心配する前に、まずは取材してもらえるぐらいインパクトのある研究成果をだせという話なので、いつもどおりブーメランな話なのだけど。

少人数学級が学力向上に寄与するかの話

追記:「経済学が〜」と思われた方はぜひリンクしてある「文部科学省:2011年7月:公立義務教育諸学校の学級規模及び教職員配置の適正化に関する検討会議(第3回) 議事録」の前半部を読まれることをお勧めします。参考人として呼ばれた方々もこれは測定自体が難しい話ですと言っています。

NHKニュース:“教職員定数 5年で1万人削減”案のはてなブックマークコメント

  • いや、財務省はあながちウソ言ってない。少人数学級化だと、上位学力層の競争が緩み、上位学力層が劣化する副作用がある(クラスサイズパズルと言う)。経済学者が立証してるが教育学者は認めたがらない

を読み、Googleでクラスサイズパズルを検索したら以下の議事録が見つかった。簡単な話ではないらしい。

少人数学級というのは、当然ながら、釈迦に説法ですが、一人一人にきめ細かく教育ができるという意味で学力とかさまざまな効果が、よい効果が期待されるという、それをクラスサイズ効果なんというようなことで呼んでおりますけれども、いざそのデータを持ってきて分析すると、どうも必ずしもクラスサイズ効果という、少人数学級、学級の規模を小さく、 1クラス当たりの人数を少なくするとよりよい効果が出るということばかりが観察されるわけではないという、クラスサイズパズルと呼ばれている現象というのが起こっているというのが今の経済学の分野でも一つの論争の種となっております。

経済学的手法と言いますと耳なれないかもしれませんので、まず簡単に、それがどういう概念に基づいて行われているのかを説明し、学級規模縮小の教育効果について分析した既存の研究を紹介いたします。教育政策の分析においては、政策評価の難しさがかなり集約されておりますので、教育政策の効果の推計を意味あるものにするためには、どういう点をクリアにしなければならないのか、という点も強調したいと思います。最後に、最近日本経済学会で発表しましたオリジナルの研究、すなわち、横浜市のデータを利用して学級規模縮小の教育効果を分析しました結果を紹介したいと思います。

結果を先取りいたしますと、小学校の国語のテストの点は、学級規模を縮小したほうが向上するように見えます。しかし算数ではそれが統計的に有意には見られません。中学校に関しては、どちらの科目でも統計的に有意な効果は見られなかったという結論でございます。

混雑緩和効果があるにも関わらず,少人数学級のメリットが観察されにくいのはなぜか。まず少人数学級には,クラス内での競争を通じた切磋琢磨(せっさたくま)が損なわれてしまう可能性がある。

筆者は2004年に公表した研究において,学級規模を小さくすると,能力が低い子どもの学習意欲が増加する代わりに,能力が高い子どもの努力が低下する効果が存在することを発見し,後者の効果の方が前者よりも大きいことを理論的に示した(ただし,能力別ではない学級編成の下で,成績がクラス内の相対評価により付けられている場合を分析した)。つまり少人数化には,格差を縮小させる一方で平均的な達成度を低下させてしまう可能性がある。

大学で卒業論文や修士論文の指導をしている観点からすると、文章とか考え方をきっちり指導するなら20人ぐらいが限度じゃないかなという気はしている。

追記

自分を敗者であると自認してしまうと学習モチベーションが保てずドロップアウトしてしまう危険があるので、単純な能力別はまずいっぽい。

科目数や能力別グループ編成期間を制限し、進路や学級を変更する機会を増やし、進路が異なっても生徒に高いカリキュラム基準を提供することで、早期の進路選択と能力別コース・グループ編成の悪影響を軽減し得る。

追記2

件の記事のはてなブックマークで財務省の説明用PPTのリンクがあった。これは面白い。文科省は厚労省とタッグを組んで財務省の理屈に対抗するべき。少子化を食い止めたいの国の方針なのに、少子化進行を前提に少子化進行が加速しそうな施策を打ちそうになっている。スライド一枚一枚は説得力あるけど、理想との適合度合いやスライド間の整合性に「?」となる。

追記3(2018年8月16日)

少人数のクラスができやすい学校とそうじゃない学校だとその学校間の環境の影響がクラスサイズの影響を相殺しているかもしれないので、それを取り除いて分析したという論文。その結果、クラスサイズ(1クラス当たりの人数)が大きくなるのは学業にも精神面にも悪影響を与えそうだという話。

www.jstage.jst.go.jp