提出した博士論文のオープンアクセス化に向けて、学位規則改正案に関するパブリックコメントの内容

博士論文のオープンアクセス化に向けて、学位規則改正案に関するパブリックコメントの続き。1案件1メールとのことなので、いくつかに分けて送った。

著作権について

改正について賛成します。
ただし、著作権については検討することを希望します。

博士論文を本として出版する分野があることから、商用利用は
不可とするべきです。また、学術論文であるため改変も不可と
するべきだと思います。

再配布に関しては、国立国会図書館が常にアクセスできる状態で
博士論文を提供するため、不許可にしてもよいとは思うのですが、
分野別およびテーマ別に学位論文をコレクションし提供するサービス
なども今後生まれることが期待できるので、再配布は許可して良いと
思います(商用と改変を許さないので特段の問題はないと思います)

以上の条件を見たし、かつ、法律的にもよく考えられているのが
クリエイティブ・コモンズの「表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 
日本 (CC BY-NC-ND 2.1 JP)」ですので、これを採用したらよいと
思います。

 表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本 (CC BY-NC-ND 2.1 JP)
 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/2.1/jp/

博士論文提出時に、この著作権で国立国会図書館に博士論文の電子ファイル
を提供することに承諾をとればよいと思います。

以上です。

全文掲載猶予期間(Embargo)について

改正に賛成です。ただし、全文掲載猶予期間(Embargo)について、
検討することを希望します。

分野によっては、a) 既に公開済みの論文の内容を編集して博士論文を書く
b) 未公開内容で博士論文を書く に分かれます。また、b)については、
b-1) 特許申請後、公表論文として発表する。b-2) 博論提出後公表論文
として発表する。 b-3)本として博士論文を出版する。 に分かれると
思います。

b-1)と b-2)についてはおおよそ1〜3年で公表論文がでますので、
全文掲載猶予期間(Embargo)を高々3年にしておけばよいのですが、
b-3)の単行本として博士論文を出版する分野の場合、3年で必ずしも
博士論文が本として出版できない場合があります。

そこで、全文掲載猶予期間(Embargo)について以下のようにすることを
提案します。

1. 国会図書館に博士論文を提出する際、半年区切り(4/1〜9/30、10/1〜3/31)
   かつ最長3年間で全文掲載猶予期間を指定することができる

2. 全文掲載猶予期間の終了半年前から期間終了1か月前までの間に、
  博士論文の著者は申請により、全文掲載猶予期間を2年間延長できる

3. 博士論文の著者は全文掲載猶予期間の再延長を申請により行える

4. 全文掲載猶予期間中は論文要旨も公開されないこととする。ただし、
  全文掲載猶予期間が1年半以上の場合は、博士論文提出の
   1年後から、論文要旨は公開されることとする

5. 博士論文タイトル、著者名、博士号授与機関名、授与機関への
  博士論文提出日時については、全文掲載猶予期間に関わらず
   公開する

以上です。

論文要旨および論文審査の結果の要旨の日本語訳の提出について

改正について賛成します。
ただし、日本語版の論文要旨も提出させることを検討していただきたいと
思います。

オープンアクセス化するので、日本のみならず、世界中からの
アクセスがあることを想定していると思いますが、博士論文の
オープンアクセス化によって、受益を得る第一の対象は日本国民
であると思います。

一方で、その研究分野の事実上の標準言語を用いて論文を発表する
分野では、外国語を用いて博士論文を執筆している可能性があり、
論文要旨も当該言語で書かれている可能性があります。

このとき、博士論文自体を日本語に翻訳して提出させるのは、実際的
ではありませんが、論文要旨および論文審査の結果の要旨については、
日本語翻訳したものを提出するのはそれほどのコストがかからないと
思います。

論文要旨や論文審査の結果の要旨だけが、日本語であったとしても、
博士論文自体が非日本語ならば、多くの日本国民が読めないから意味が
ないという意見もあるでしょうが、東日本大震災に伴う福島第一原発事故
によって、非専門家が英語論文やロシア、北欧諸国、東欧諸国のチェルノブイリ
事故報告書をネットで収集し、読んでいる事実があります。

この事実から考えれば、論文要旨だけでも日本語であれば、情報収集の手間を
大きく省くことができ、博士論文へのアクセシビリティを大きく高めることが
できます。

以上より、論文要旨および論文審査の結果の要旨について以下の提案をします。

・ 非日本語で書かれた博士論文については、タイトル、著者名、指導教員名、
   所属、論文要旨、論文審査の結果の要旨の日本語訳を合わせて提出すること

以上です。

その他

今回のパブリックコメントは学位規則の改正案に対するものだったので、以下の話は提出しなかった。でも、以下のようにしてほしい

  • 論文をPDFで公開するだけだとあまり意味がなく、メタデータも合わせて公開し、それを多くのサービスが利用できるようにした方が良い。少なくとも CiNiiと ORCIDには連携してほしい。
  • 博士論文にDOI、最悪でもNAIDを割り振って、パーマリンクはそれにしてほしい
  • 博論提出時に任意で構わないので著者連絡先(e-mailアドレス、ORCID、ReaD&ResearchmapのURI)も合わせて提出し、学位論文の読者から著者に連絡がとれる導線を1つは用意してほしい。
  • 公開した学位論文のダウンロード数や閲覧数のデータをWeb APIでとれるようにしてほしい。