問:卒業論文や修士論文に何を書けばいいですか?

想定読者をイメージしろ!

同じ学科・コースの同級生で自分の研究室に属しておらず、かつ、普段のおしゃべり・知的水準が具体的にイメージできる人間を1人思い浮かべてください。その人があなたの卒業論文修士論文の読者像です。ただし、その想定読者の好奇心レベルは10倍増しぐらいしてください。何説明しても「うーん、それでいいんじゃない」としか言わない人をですと頭の中のパートナーとして役に立ちません。

その想定読者が必要とする情報すべてをあなたは卒業論文修士論文に書く必要があります。謝辞や参考文献リストをのぞき、想定読者が必要としない情報を書く必要はありません。

すべては「問題」から始まる

あなたの論文で扱う「問題」を5W1Hを明確にした上で、100字以内で書き出してください。「〜が明らかでない」「〜するのが非常に面倒である」「〜するのにコストがかかりすぎる」などなど。

もし「問題」が100字以内で書き出せないならば、あなたは卒業論文修士論文を書くことができません。どうにかしてください。

問題解決の重要性、必要性、新規性を説明せよ

世の中には無限に問題が存在します。その無限にある問題の中であなたがその「問題」を解決しなければならない理由を、読者に納得させる必要があります。理由は必要性、重要性、新規性から構成されます。あなたの「読者」が理解できるぐらいの詳しさ、やさしさで必要性、重要性、新規性を説明してください。

解決策・緩和策を提示せよ

あなたが定めた問題の解決策・緩和策を提示してください。そして、なぜ、その解決策・緩和策が問題の解決・緩和に有効であるのかを説明してください。どこまで詳しく説明するべきかは、あなたの「読者」と相談してください。

解決策・緩和策の有効性、妥当性を証明せよ

あなたの提案した解決策・緩和策で本当に問題が解決・緩和できたことを計算(シミュレーション)、実験、デモなどで提示してください。その際には、できるかぎり定量的に解決策・緩和策の有効性、妥当性を示すようにしてください。結果の信頼性は、定量>定性です。

もちろん、計算、実験、デモの方法の妥当性も、結果の信頼性に関連します。

物語を作れ!

我々人間は、関連した情報を順序よく提示してもらった方が、物事をうまく理解できるという特徴があります。上記で明らかにした情報を適切な順番に配置しましょう。物語の基本は、「〜という問題がある。この問題を解決するための解決法として・・・を提案した。この解決法が問題解決に有効な理由は〜である。実際に解決法を・・・のように行ってみたところ、〜という結果が得られた。この結果から〜という理由で提案した解決法が問題解決に有効であることが証明できた」です。この物語を自分の扱う問題と解決法に合わせてカスタマイズしてください。

重要なポイントは、必ず問題に対して提案した解決法がどうであったのかを説明しなければならないという点にあります。尻切れトンボではいけません。

次に情報の配置を決めます。説明の基本原則は、大枠を先に示し、その後詳細を説明するというものです。以下のように説明します。

  • 過去から未来
  • 抽象から具体
  • 概略から詳細
  • 全体像から個別像

また、私の個人的な経験から言えば、What, Why, Howを適切な順番で提示しないと理解しづらいように思います。

上記の配置を一から考えるのはしんどいです。先人の叡智を利用しましょう。論文には基本的な構成があります。典型的なものはIMRADというものです。数十年の時を経て磨かれてきた効率良く研究成果を伝えるためのフォーマットです。もちろん、IMRADは実験系の論文を書くときのフォーマットですから、あなたの卒業論文修士論文にそのまま適用できないかもしれません。自分のテーマに似た論文を探し、フォーマットを真似しましょう。

再:(´・ω・`) 知らんがな

よく学生のみなさまに「卒業論文に何をかけばよいんですか?」と質問されます。そのときに私は「あなたは何を書きたいんですか?」と尋ね返します。で学生から「わかりません」と言われ、心の中で「じゃあ、(´・ω・`) 知らんがな」と返しています。

論文の内容は、その論文で扱う問題とその解決法、成果(どこまで何をやったか)によって変わります。この3点を論文を書く本人が把握していなければ、何を書けばよいのかを決めることができません。

「〜について書きたいのですが、どういう風に書いたら、良い卒業論文になりますか?」という質問ができるように、卒業論文の書き方の本を読んで勉強してください。

技術的な話

卒業論文、修士論文関連のエントリーに関係ありそうな過去エントリーをリンクしています。

上が多すぎるのでいくつか目的別に絞ったリンク集はこちらです。

邪道:解決法 or 成果から問題を探す

あんまりやらない方が良いですが、手を動かしたり、行動したりして何かしらの結果を得ているのに、「問題は何か?」「その問題の必要性や重要性は何か?」ではまってしまうときがあります。そんなときは、解決法 or 成果から問題を考えるというのは一つの方法です。

「自分が得た結果によって解決される問題にはどんなものがあるか?」「この方法で解決できる問題はどんなものがあるか」と考えるのです。そのあとに、その問題の新規性、重要性、必要性を考えます。

実は、研究歴の長い人ほどこういうことをやっています。

なぜ、解決法 or 成果から問題を決めるのが邪道かというと効率が悪いからです。成果を得るまでにはある程度の時間がかかります。成果を得たあとに、適用できる問題を探し出せればよいですが、もし見つけることができなければ、その成果は価値がありません。なので捨てる必要があります。卒業研究や修士研究の期間は短いので、そんなにたくさんの試行錯誤を繰り返せません。

まあ、どうしても「自分の論文で扱っている問題は何か?」がわからない人はこういう方法があるよということで。