日本語論文を翻訳して外国語学術誌に投稿して大丈夫か

分野が違うためか人文系の査読あり雑誌への投稿についての記事をあまりみないので、こういうのはおもしろい。

日本語論文を翻訳して外国語学術誌に投稿して大丈夫か

残念な話、ある研究分野において事実上の標準言語(自然科学の場合は英語、上記のまとめの場合はドイツ語)で書かれていない論文は、「発表されていない」とみなされると思う。というのは、論文の目的は研究成果を小さくは研究コミュニティに、大きくは世界に還元することなので、そのコミュニティに届かない方法で発表しても論文の目的を果たしていない。なので、事実上の標準言語で発行している学術雑誌側からいえば、「翻訳して投稿して、そしたら査読するから」という話になると思う。一方で、非標準言語で発行する学術雑誌からすると「何語で書いても発表済みとみなす」という話になるはず。そうでないと、非標準言語へ投稿される論文は、標準言語で書かれた論文の翻訳論文ばかりになってしまう。

じゃあ、遠慮なく自分の日本語の論文を訳して投稿して良いかというと、雑誌掲載時に著作権委譲書を出していると思うので止めた方が良い。国内の雑誌が「何語で書いても発表済みとみなす」としているのであれば、普通に多重掲載として論文の取り下げが請求されると思う。新たな内容を付け加えて(私は「3割以上異なるものとしろ」と教えられた)、別の論文として投稿した方が安全だと思う。

「あれ?他の人が書いた日本語の論文をガンガン訳して投稿しちゃえばいいじゃん!」と思う人がいるかもしれないけど、以下の理由でダメ。

  1. 著作権法侵害で訴えられる。研究者は業績命なので絶対にバレる。
    • その論文の著作財産権は、雑誌の出版元が持っている。翻訳権もたぶんそこにある。
    • 著者名を変えることになるので著作人格権を侵害してしまう。
  2. 研究者の仁義に反する行為なので、あなたにパワーがなければ干される。

学術雑誌に投稿する方法

私の分野では、学術雑誌の出版元のWebページや雑誌の後ろの方に書いてある「Call for papers」「Submissions」などに書いてあるとおりに原稿を作り、指定された送り先に投稿するだけ。あらかじめ、編集者に許可を求める必要はない。

ただし、学会論文誌の場合は、著者のうち1名が学会員であることを求める場合がある。

外国語論文の註で日本語研究をどうやって表記するか

論理学の論文や本だと元論文が参照元ドイツ語だったりする場合がある。私が読んだ論文(数編だけど)では、英訳している場合と、原文をそのまま載せている場合があった。論文の基本的な趣旨からすると、引用部分を私訳と断った上で事実上の標準言語に翻訳した方がよいと思う。

日本語などのマルチバイト言語の場合は、問答無用で翻訳するしかないと思う。理由は、先方の組版システムでは、マルチバイトを扱えないと思うから。よって、引用部分も参考文献リストにも日本語を登場させてはいけないと思う。私が見たことがあるのは、最後に(in Japanese)という表記がある参考文献リスト。

  • 著者: 論文題目, 雑誌名, x巻, y号, ほげほげ出版, 2010年12月
  • Authors: Title of paper, journal name, Vol. x, No. y, publisher, year and month (in Japanese).