「大学研究室の歩き方講座」の感想

いきいき研究室増産プロジェクト:大学研究室の歩き方講座がおもしろそう。こういう講座がどんどん共有されると暗黙知形式知化されて、研究室運営が底上げされるように思う。

読むだけではつまらないので、自分の感想をメモしながら読むことにする。

  • 教員がイヤな言葉その1:ありませんでした
    • あるある。「サイエンティストとしてあきらめるということは,死ぬのに近いといっても過言ではないんです.」には賛同しないけど、「無い」と言い切ることの難しさを知っているので気軽に「ありませんでした」と言ってほしくないというのがある。助言には心から賛同。
  • 教員がイヤな言葉その2:しませんでした
    • 複雑。総論は賛成だけど詳細は飲み込めない。別に教員やサイエンティストがわがままだから、「〜しませんでした」が許せないのではなく、それを行わない理由についてこちらを納得させていないのが嫌なだけ。これは、別に大学教員やサイエンティストの特性ではないと思う。「〜買いたいと思っているけどどうかな?」と友達に聞いて何かしらの返事をもらったら、その友達も「あいつは〜を買ったのかな?」と気になり、その子が助言の反対の行動をとったら「どうしてそうしたの?」と当たり前に問い返すと思う。
    • 報告・相談・連絡の基本として、指示されたこと、助言されたことに関しては従うにせよ、従わないにせよ、理由付きで結局どうしたのかを報告するのが無難(礼儀)だと思う。
  • 教員がイヤな言葉その3:今週はこれだけです
    • 私はこの言葉は嫌じゃない。「そう。」でおしまい。期限間近なら教育的観点から多少尻を叩くけど、最終的には学生が卒業するか残るか決めるだけなので。
    • 助言の第一には賛成。助言の第二については、私の場合あんまり。
  • 教員がイヤな言葉その4:忘れてました
    • 人間は完璧でないし、私も忘れっぽいので連続しなければ言い訳として許す。でも、連続したり、あまりにも頻繁に起こるならば、「自分が忘れっぽいということを認識しているにも関わらず、それへの対策をとる努力をしない」と認識するので、その学生を諦める。
    • 「ここもサイエンティストとしての特性が色濃く出てる部分なんですね.つまり,学生のセンスを認めない,自分のセンスに染めようという傾向にある」については、別にサイエンティストの特性でなく教える側の特性。どの分野においても教師役と学生役の間には必ず発生する問題。
    • 助言の学生同士で助け合うというのは素敵。うちの研究室では、第一にメモをとる。第二にゼミやミーティングでは録音機を回す。第三にわからなかったら先輩や教員にすぐ聞く。というように指導している。
  • 教員がイヤな言葉その5:どうしたらいいでしょう
    • 教員がこの言葉を嫌だと思う理由と助言が対応していない。私が「どうしたらいいでしょう」を嫌な理由は「それを教えたら私の研究になるから」。逆にいえば、「それを教えたら私の研究になるから」にならないことについては「どうしたらいいでしょう」と聞かれても特に気にならない。「先生、PCがBootメッセージの後でエラーメッセージを吐いて止まってしまいます。どうしたらいいでしょう。」みたいな質問は、私が忙しくない限り気にならない。
    • 助言は素晴らしい。
  • 教員がイヤな言葉その7:○○先生が言っていたので
    • 理由も助言も一理あると思う。私が「○○先生が言っていたので〜」だけでは嫌と思う理由はそう判断した理由の説明がないから。「○○先生が言っていたのですが、〜と理由で私も正しいと思いました。だから、そうしました。」だったら、議論の中心は「〜という理由」に移ると思う。
    • なので、対私用助言は「自分の判断の元でそうしたと伝え、判断の根拠を説明する」となる。
  • 教員がイヤな言葉その8:一ヶ月間の夏休みをとりたいのですが・・・
    • 理由にも助言にも全面的に賛同。でも、私および私のボスは学部生からこれを求めている。基本、大学4年生以降に夏季休業なんてない。あるのはお盆休み。
    • あと、経験上、夏休みに一ヶ月研究しない人は卒論締切り3ヶ月前でも研究していない。私を含めて今のところメリハリつけられる学生なんて見たこと無い。
  • 教員がガックリくる言葉その1:今週のゼミはここまでだしてあとは来週にしようかと.
    • 内容読まないと何故この言葉にがっかりするのかわからないと思うけど、これはかなりがっかりする。というか、かなり激しく叱るケース。理由は、ここできっちり叱っておかないと「自分が都合と良いと思うことだけを報告して、そうじゃないときはごまかす」という悪いくせがつくから。
    • 助言にも書いてあるとおり、卒業研究や修士研究は努力が評価対象。そして、努力されるのは実際に手をうごかしたり、頭をうごかしたりしたことを目に見える形にしたものであること学生はよく覚えておかないといけない。教員が結果しか評価しないというのは、もしかしたら学生側が結果しか、努力していることを判定できる材料を提供していないからかもしれないということ。人間の在り方として、見えない努力をするのは美しいけれども、評価側の能力不足を考慮してくれるならば、見える努力をするというのも選択肢に入れてほしい。
  • 教員がガックリくる言葉 その2:全然わからないよ
    • これは「学生がガックリくる言葉」。教員が学生に言う「全然わからないよ」が学生にとっては「何が悪いと言われているのか全然わからない」という事態。
    • 助言がとてもうまい。このメソッドは、相手の能力に関わらず自分にとって有益なアドバイスを手に入れる素晴らしい方法。
    • 私がこの言葉を発するときは悲鳴の場合が5割、本当にわからない場合が4割、鼻っ柱のへし折りの場合が1割。
    • 悲鳴の場合は、全面的に作り直さなければいけないレベルの発表や論文を見せられたときに出る。直すところがありすぎて、しかも、土台レベルでグラグラしていてどうして良いのかわからないときに、とりあえず自分を落ち着かせるために発するのが「全然わからないよ。」
    • 本当にわからない場合は、あまりにも何を伝えたいのかわからなくて、アドバイスができない状態。大抵「ごめん、全然わからない」といってから、一つ一つこちらから質問して、相手が何を言いたいのかを把握し、その後、アドバイスに移ることが多い。たまに、一つ一つ確認しているにも関わらずそれでも分からず悲鳴的に「ごめん、本当にわからない」となるときもある。
    • 鼻っ柱のへし折りの場合は、やけに自信満々で、人の指導を聞かない学生がしょうもない発表したときに発することがある。「うん、全然わからない。ちゃんとスライド作ったの?」。大抵、悪い点を1から10まで全部指摘する。
  • 教員がガックリくる言葉 その3:風邪を引いたので今日のゼミは行けませんとのことでした
    • これはガックリくる。でも、それを理由にゼミに参加している学生に八つ当たりしないよう努力している。ただし、そういう行動をとる学生に対して良い印象を持たないということは伝える。
    • 助言が素晴らしい。このとおりにするのがベストだと思う。
  • 教員がガックリくる言葉 その4:それは発表スライドにはのせません
    • これはガックリくる。私なりの言い方でいえば、「研究の本質は誰も正解がわからないものについて、自分が行ったことが正解であるということを主張すること」にあるので、他人からツッコミが入るのは当然であるということ。
    • で、これは別に研究に限らず「正解がわからない」あるいは「正解がない」ものについてはすべて通ずることなので、ツッコミが入るから主張しないということは、正解が分からないことや正解がないものに関しては主張しないといっていることになる。
  • 教員がガックリくる言葉 その5:プリンターの調子が悪かったので・・・
    • あるある。全面的にこのスキットのとおりなのでそうして欲しい。ただし、教員は知らないことはできないということを分かっていないといけない。
    • ちなみに、学生側は「知らなかった」というのは何かをできなかったときの言い訳として役にたたないときもあることを知っておかないといけない。
  • 教員をいらっとさせる場面 その1:意見を言うとき「でもそれは・・・」から始める学生
    • これは私の方が気をつけないといけない。
  • 教員をいらっとさせる場面 その2:先生に何かをお願いするとき
    • 私はこのケースは大丈夫。追い返すから。むしろ、余裕を見ていないことにいらっとする。昔、社会人の部活のOBに飲み会の誘いを1日前にしてこっぴどくしかられたなぁ。
  • 教員をいらっとさせる場面 その3:教員も学生も不毛な発表〜説明不足だよ・・・〜
    • 助言の「おかんに説明すると思え」は万能な教え
  • 教員をいらっとさせる場面 その4:一応やったつもりですけど・・・
    • 「一応」は超禁句。「一応やってきた?じゃあ、納得できるまでやってきてからまた発表して」と言われないためにも、この口癖は早く直したほうが良い。
    • でも、学生が思わず「一応」といってしまう気持ちはわかる。胸をはって良い基準は「与えられた時間と条件でベターを尽くした(ベストとは言わない)」とき。能力や時間の問題があるのだから、ある程度の労力をつぎ込んで行ったことは自信を持って報告して良い。もちろん、不十分なときは不十分といわれると思うけど、そのときこそ、助言のメソッドを使ったらよい。
  • 教員をいらっとさせる場面 その5:卒論・修論締め切り前によくある風景〜なんでもっと早く持ってこないの?!〜
    • これを防ぐために5年間ずっとあがいている。今年はある程度うまくいった。
  • 教員をいらっとさせる場面 その6:〜メールの主張がわからない〜
    • 最近は助言のとおり「型」を先に学生に送って、それに従うようにさせている。
    • その結果「型」を年がら年中考えている始末。
  • 学生が困る教員の理不尽な言動 その1:そんなこと誰がいったの?(←自分なのに)
    • あるある。言い訳になりませんが、教員と学生の関係は1対多なので結構きつい。
    • このメソッドは学生にとってとても役に立つ。あと、さらにゼミ中の教員の指示を録音、ゼミ後に本日のまとめをメールで報告しておくと万全。「誰がそんなこと指示したんだ?」といわれたときに「先生です。メールでも確認させていただきました」と防御可能。
    • 議事録というのはこういう言った言わない論争を避けるためにも存在しているということを知るべき
  • 学生が困る教員の理不尽な言動 その2:前回の打ち合わせを全く覚えていない編
    • あるある。学生のみなさん、ごめんなさい。
    • 私は自分の記憶力をさっぱり信じていないので、学生や自分のボス、同僚の先生方、家族の記憶量も信じていない。なので、自分にとって重要なことならば、相手がうんざいりしようがお構いなく何回も確認することにしている。自分の印象が悪くなったとしても、重要な用事を忘れられるよりははるかにまし。
    • 社会人の基本に重要な用事は2つの媒体で伝えろというのがあるけど、これは学生のうちから学んでおくと良い。古くは「訪問と電話」や「電話とFAX」、いまや「電話とメール」か「訪問とメール」。
  • 新4回生のテーマ決めによくある風景 その1
    • うーん。実験系じゃないのでよく分からない。「研究内容」が重要でなく「研究を通して学ぶメタ技術・知識」が重要というのは賛成なのだけど、今回のメソッドは最初の問題を回避できているの?
  • 教員がゼミ発表でいつも言うつっこみ その1:その方法で知りたいことがわかるの?
    • 研究を通して問題解決のメタ的技術を身につけて欲しいので、自分の行っていることの意味が説明できないというのは常に教員からのお叱りを誘う
  • 教員が特にうれしい学生の言葉 その1:これ見てください!
    • 賛同。私としては「うまくいかない」という報告も「よく研究しているんだな。」と確認できて結構うれしい
  • 教員が困る学生の態度 その1:コレが逆ギレ?!
    • 私の基本は「礼儀には礼儀、無礼には無礼」なので、逆切れされてきたら無視する
    • メソッド中の「あらかじめ研究とはそういうものだ」というのをつたえておくべきというのには賛同。
  • 教員ががっくりくるシーン その1:スライドが前回リハと同じとき!
    • 2回は指導する。3回目以降は学生が自分で質問してくるまで無視。
  • 教員ががっくりくるシーン その2:学生の実験データの見せ方
    • おっしゃるとおり
  • 教員の悩み その1:学生にプロ意識をどうやって持ってもらうか?
    • おっしゃるとおり
  • 学生が困る状況によくある風景:ボスからの一見無理な要求
    • この助言はあまり賛成しない。もうちょっと率直に教員側の意図を尋ねて、その意図に納得できたら提案に乗ったら良いと思う。学生が「ムリ」と思っても、教員の経験からすると「大丈夫」ということも多々あるので。
  • 教員がイヤな言葉その6:時間がありません
    • これは難しい。この解説のように教員が実験のつらさを忘れていたり、自分が基本的には苦にならないから学生もそうすべきだと思っているかもしれないけど、学生が経験不足や理解不足から時間がないと予防線を張っている場合がある。
    • やはり、ここは学生と教員が謙虚に双方が納得するまでつめてみれば良いのではないかと思う。まずは、乱暴でも時間を見積もってみるのがベターかと思う。
  • 「しっくりこない打ち合わせ」によくある風景
    • 今回の例について、私は「ああ、この学生は提出を諦めたいんだな」と判断してしまうと思う
    • 助言はとてもうまい方法。私もこれをモノにしたい。
  • 実験装置が故障したら
    • トラブルの報告については、「何を行って何が発生したのか」と「自分で調べてみたこと」をあわせて報告するというのが重要。


以上、勉強になった。