いまさらながらWebページは参考文献にするのは難しい

以下の記事を読んで思った事「サービス提供主体自体が廃業するならばともかく、存続するのに掲載記事を削除するのか」
news.yahoo.co.jp

Yahoo!ニュース 個人では、オーサーとの契約が終了した際には、記事の掲載もあわせて終了することとしています。これは、契約終了後の記事の問い合わせ対応において、Yahoo!ニュース 個人側では事実確認をすることができない、時間の経過によって状況が変わった際などに追加の記事の配信をお願いすることができないなどの理由によります。ただし、例外的に、契約終了後も記事掲載を継続する場合があり、今回の山本一郎氏のケースにおいても、掲載継続のご要望があり、訴訟に関わる記事もあることも踏まえ、契約終了後も掲載を継続しておりました。

そもそも、新聞や雑誌、本など、物理媒体での出版物は、いちど出版したものをなかったことにするのは難しい(当該出版物の保管の責任がその出版物の所有者に移転するため)。この性質があるため、たとえ出版元が廃業したとしても、既に流通している出版物はそのままであるので、その出版物を正当な方法で閲覧できる蓋然性は高い(国会図書館もあるし)。

一方で、Webページはその出版物の保管は出版元が行っており、保管にはコストがかかる。さらに、今回のYahoo Japan!のように、出版元の判断で流通自体を止めることができる。このため、流通停止後にその出版物を正当な方法で閲覧できる蓋然性は低い(Web Archiveがあるけれども)。

私が考える専門書や論文の参考文献の位置づけは以下の通り。
next49.hatenadiary.jp

参考文献リストの位置づけ

参考文献リストは、論文中の引用の元となる文献や論文中で利用している先人の成果が記載されている文献にアクセスするために必要な情報をリストアップしたものです。なぜ、リストアップしなければならないのかといえば、読者が疑義を覚えたとき、興味を覚えたときに、その文献を直に読めるようにするためです。

このため、論文の想定読者がアクセスできない文献を参考文献として使うべきではありません。ただし、ここでいう「アクセスできる」というのは「そこそこの労力や対価を払えば読むことができる」という意味です。

もともとWebページは自由なタイミングで編集されてしまうことから、参考文献にすべきではないとされてきたけれども(今はどうしても必要な場合には参考文献とする。その際にはいつのバージョンなのかを記載する)、そもそも、その存在がなくなってしまうのでは、心許ない。

ジャーナリストや専門家の方がWebメディアでどんどん発信するようになっている今日、10年後、20年後にはその発信した記事が消えてしまいアクセス不可能になってしまうならば、10年後、20年後の専門家や研究者、ジャーナリストはすごく苦労するんだろうなぁと思う次第。

Yahoo Japan!は日本での位置づけを考えると、その掲載記事について自分から「国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」に定期的に掲載記事を提示しても良いのではないか思うところ。
warp.da.ndl.go.jp

国立国会図書館インターネット資料収集保存事業は、収集対象に民間含んでいないみたいだから。

Q: どのようなウェブサイトを保存していますか。
A: 国の機関、都道府県、政令指定都市、市町村、市町村合併の法定合併協議会、独立行政法人や特殊法人等の法人・機構、大学、イベント、電子雑誌などを保存しています。
よくあるご質問より)

ニコニコ動画とかの日本を主戦場としている動画メディアが廃業するとき、そのコンテンツをちゃんとサルベージしておかないと、その20年後、30年後の人文系の面白ネタや研究ネタが消えてしまって悶絶する人続出になってしまいそう。