ニセ科学を信じていた過去語り大会:メガビタミン健康法

ニセ科学を信じていた過去語り大会に私も便乗。私が実践していたのはメガビタミン健康法。

そもそもの姿勢

本を読むのが好きだったのと、小学生のころに姉に「ラピス・ラズリを買うからお金かして」とお小遣いを巻き上げられた経験から、そういう現世利益を前面に押したオカルト系やニセ科学系には早いうちから冷めていたと思う。

一方で、霊的なものについては今でも心のどこかで信じていて正直怖い。神域や霊域、パワースポットはあるとは思っているけど、誰でもそこに行けば何かを力を得られるとは全然思っていない。

現実世界があんまり好きじゃなかったので、小学校〜大学までは「この世界ではない別の世界の話」、すなわちファンタジー小説歴史小説、伝記、SFなどの漫画や小説をよく読んでいた。映画も現実世界を直視させられるようなものは今でも好きではない。

信販売への嫌悪感

高校3年生のときに大学受験のために塾に行こうか迷っているときに、「基本はテキストで自学自習、わからないことがあったら100時間分電話や教室で個別指導をしてくれる」という通信教材のテレアポにひっかかってしまい、強く断れず、結局100万円を親に払わせてしまった。

実際にそのテキストを使って勉強し、大学にも合格したが、テキストは解答つきだったので解答みれば説明を受けるまでも無くわかった。そのため、結局電話相談も個別指導も使わなかった(この電話相談と個別指導がその教材の売りだった)。なので、なおさら親にムダ金使わせたという思いがある。

悪徳商法マニアックスとの出会い

大学に入ったのが1997年、はじめてWebの世界に出会う。そして、翌年にインターネット接続が基本的な機能として含まれているWindows 98が登場し、インターネットプロバイダーもたくさん増えた。このタイミングで大学の授業の復習のためにパソコンを買ってもらい、ずっぽりとWebの世界にはまる。特にはまったのが悪徳商法?マニアックス。通信販売への嫌悪感を持っていたのでこの掲示板は非常に楽しかった。私、いくつかは投稿したことがある。

ニセ科学らしきものを初めて認識したのはこの掲示板だったと思う。水商売ウォッチングのapjさんがこの掲示板の常連でいらしたので、浄水器系のニセ科学の被害者事例がたくさん眺めていた。

この掲示板の常連「ものつくり」屋さんにの発言や掲示板での振舞いは、非常に勉強になった。Web上での私の振る舞いの基盤は「ものつくり」屋さんにある。一番の「ものつくり」屋さんの名言は以下だと思う。

悪徳業者が『世の中こんなものさ』とうそぶいても、悪徳商法で儲けた金を使うときは、悪徳じゃない業者の真面目さに頼らなくては幸せには成れないんだよ

良くね、「悪徳商法で稼いだ業者は心安らかに暮らせるか」みたいな事も書くのね。土地を買って家を建てるにしても、不動産屋の誠実さをどこかで信じ、建築士の設計の誠実さを信じ、工務店の施行の誠実さや建材屋の誠実さを信じなくては、心安らかに家を建てることもできはしないのですよ。

メガビタミン健康法

大学2年生ぐらいから2〜3年くらいやっていた。きっかけは、愛読しているSF作家の平井和正さんが自サイトで紹介していたため。

メガビタミン健康法とはライナス・ポーリング博士が提唱したもの。ビタミンCを1日数グラム摂取すると病気になりにくいという健康法。

当時、運動部に在籍していたこととずっと肥満だったのでちょっとは健康に気をつけたいなぁと思っていたところに平井和正さんがメガビタミン・ショック―隠蔽されてきた「病気産業」震撼のビタミンC超健康パワーという本を出し、かつ、自サイトでビタミンCの通販を始めたので、私も始めた。

一応以下の事柄は考えた。

  1. ビタミンCは水溶性ビタミンであり、過剰摂取分は尿として排出される
  2. 風邪のときにはビタミンCを取ることは推奨されていた
  3. メガビタミン理論はがんにも効くと歌っていたが、私として風邪がひきづらくなればそれでよかった
  4. アスコルビン酸原末(ビタミンC)はそれほど高くなかった
  5. メガビタミン健康法を実施するときのデメリットはおならが出ることと、便がゆるくなることだけ(だと思っていた)ので、許容範囲だった。

アスコルビン酸原末を水に溶かして飲んでいたのだけど、1gも溶かすと水が300mlぐらいないと濃すぎて飲めない。朝と夜(寝る前)に1gずつ摂取していた。始めたのが春だったので半年ぐらいは熱心に続けられたのだけど、冬になると寝る前に水を300ml飲むと夜にトイレに起きてしまうので段々続けるのがきつくなり、残り2年くらいは気が付いたら飲むぐらいになっていった。

その後、通販していたサイトが機能しなくなり、アスコルビン酸原末を手に入れるのが難しくなってきたのにあわせて、めんどうに感じていつのまにかやめていた。メガビタミン健康法に対するネガティブな情報を目にするようになったのも関連していると思う。

論理と理屈にうるさくなった理由

どちらかと言えば気分で動くタイプだったのだけど、大学4年生のときに転機がおとずれた。原因は三つ。

  1. 人に指示する立場になり、自分の発言に責任をとらなければならなくなった
  2. 卒業研究が論理の応用だった
  3. 指導教員が理屈の鬼だった

4年生のときに所属している部活の主将になり、私の発言や行動について後輩たちから問い返されることが多くなった。たとえば「遅刻するな」というと「**さんだって遅刻したじゃないですか」と言われる。だから「遅刻するな」と叱るためには、私が遅刻してはいけなくなった。こういう風に発言に責任をとらなければならないようになると、論理や理屈、基準の大切さを徐々に実感するようになっていった。

また、追い討ちをかけるように卒業研究が論理の応用だったのでそれまで全然やっていなかった論理学を勉強し、さらに、指導教員が理屈の鬼だったので指導教員に自分のやっていることを理解してもらうためには論理的話し方を学ぶしかなかった。

そして、大学院生になり後輩の論文指導をするようになって、より論理と理屈、基準の大切さを実感するようになり、今のようになった。

数年ぶりにあった部活の後輩には「**さんの話は正確で論理的だけど長いし、そこまで細かく知りたくない」と言われたことがある。

今の「ニセ科学批判」との出会い

水からの伝言についてkikulogでいろいろと議論が交わされていたのがきっかけ。当初は冗談だと思っていたのに、TOSSの教材として小学校の先生が使っているという現実があるという、あまりのわけのわからなさに衝撃を受けたのを覚えている。

このときのkikulogにあった「水からの伝言」擁護のコメントが悪徳商法?マニアックスでよくみかけたようなやり取りだったのも興味を持ったきっかけの一つ。ネットワークビジネスの人たちと議論したときの展開にすっごく似ている。

また、2005年から大学教員として働き始めたので、科学、技術や大学についてネガティブな印象が社会に広まると個人的に困るというのも理由。なので、以下のようなエントリーもたまに書いている。