博士号審査プロセスの透明性と教員・学生負担

見聞きしたり、ブログを読んだりしたところ博士号審査プロセスは大雑把に以下のプロセスにわかれるのではないかと思う。

  • ステップ0:博士号授与候補生(Ph.D candidate)になる
  • ステップ1:博士論文審査委員会を組織する
  • ステップ2:学位授与要件(必要条件であることに注意)を満たしているか調べる
  • ステップ3:予備審査
  • ステップ4:学位申請(学位論文提出)
  • ステップ5:本審査

日本の大学では博士後期課程に進学したら自動的に博士号授与候補者になることが多いと思う(たぶん、全部)。アメリカでは、試験に合格しないと博士課程の学生でも博士号授与候補者になれないとのこと。以下に見つけたWebページで紹介されていた博士号審査プロセスにおける違いをまとめてみる。

next49 apjさん フィンランド MIT T
何系 工学系 医学系 不明 不明 生物・医学系
誰が審査委員会を組織するか 指導教員 教員間で投票 不明 学生自身 指導教員
審査委員会に指導教員は含まれるか 含まれる 含まれない 含まれない 含まれる 含まれない
審査委員会に分野外の人間を含むか 必須ではない 不明 不明 不明 必須ではない
審査委員会に学外の専門家が含まれるか 必須ではない 不明 全員学外 不明 必須ではない
予備審査はあるか ある ない 不明 不明 ある
予備審査は公開か 公開(ただし通知は研究科内) 不明 不明 不明 不明
学位申請に指導教員のサインがいるか 必要 必要 不明  不明 必要
本審査は公開か 公開(ただし通知は研究科内) 不明 公開 不明 公開
学位授与要件(必要条件) 雑誌など2報 未公開の仕事であること 不明 不明 英雑誌1報

表2

BU kelokelo
何系 工学部 理学系・生物系
誰が審査委員会を組織するか 学生が指導教員と相談 学生が指導教員と相談
審査委員会に指導教員は含まれるか 含まれる 含まれる
審査委員会に分野外の人間を含むか 必須ではない 必須ではない
審査委員会に学外の専門家が含まれるか 必須ではない 必須ではない
予備審査はあるか ある ない
予備審査は公開か 公開(質疑応答後半は非公開) --
学位申請に指導教員のサインがいるか  必要 必要
本審査は公開か 公開(質疑応答後半は非公開) 非公開(別の日に公開発表会)
学位授与要件(必要条件) BUの博士修了要件 英雑誌1報

私のケースは、apjさんの言う工学系のやり方だ。博士号審査プロセスは透明にするべきではあるけれども、フィンランドのように審査委員が全員学外の専門家であるようになったら、審査委員会の組織を行うだけでも一苦労。もし、それを指導教員が行うのであれば、まだともかくとして、MIT式に学生が自分で審査委員会を組織するのであれば、これはこれで大変だ。もちろん、こういう制度の下では、審査委員会に名を連ねるのは名誉であるとともに業績としてカウントされるのだろうけど。

一番透明性が高いのは、

  • 審査委員会の組織を学生が行い
  • 審査委員会に指導教員を含まず
  • 審査委員会は学外の専門家で構成され、かつ、数名は分野外の人間であり、
  • 学位申請は学位授与要件を満たしているならば機械的に受け付け、
  • 本審査一発勝負で審査

という形式だと思う。でも、これは学生の負担も審査委員の負担もめっちゃ高い。

無難なのは、

  • 審査委員会の組織は学生が行い
  • 審査委員会に指導教員を含まず
  • 審査委員会は学内・学外の専門家で構成され
  • 学位申請は学位授与要件を満たしているならば機械的に受け付け、
  • 本審査一発勝負で審査

  • 審査委員会の組織は指導教員が行い
  • 審査委員会に指導教員を含まず
  • 審査委員会は学内・学外の専門家で構成され、かつ、数名は分野外の人間であり、
  • 学位申請は指導教員の承諾の下で行われ
  • 本審査一発勝負で審査

が良いのではないのかと。

審査委員会を組織し、審査会の日程を調整する作業の負荷がかなり高いので、これを学生自身が行うならば学位申請を機械的にうけつける。指導教員が行う場合は、何らかの形で学位申請に縛りをつける(博士号授与候補資格認定制度を取り入れても良い)ようにしないときついと思う。

でも、どこまでも嫌がらせはできるものなので、アカデミック・ハラスメント報告窓口&裁判による判定システムを整えて、ケースバイケースで対処したほうが良いと思うというのが正直なところ。少なくとも、審査プロセスと学位授与要件ははっきりと公開するべき。