リンク:東北大院生自殺

やるせない。でも、こういう不明確な情報しか明らかにならないのは正直怖い。2年連続で論文を差し戻されたという事実が問題なのではなく、学位審査に十分な業績をあげているのにも関わらず2年連続で論文を差し戻されたという事実が問題。東北大学には詳細を発表して欲しい。そうしないと、大学院のイメージが悪くなりすぎてしまうよ。

2009年5月13日13時31分

東北大学仙台市青葉区)の大学院生が昨年8月、担当の教員に論文を差し戻された後、自殺していたことがわかった。大学は13日に記者会見し、「教員の指導に重大な過失があり、自殺の要因になった」とする調査報告書を発表した。担当した准教授(52)は先月下旬、辞表を提出して既に受理されている。

自殺したのは東北大大学院の理学研究科博士課程に在籍していた男子学生(当時29)。花輪公雄理学研究科長によると、学生は07年12月に博士論文の草稿を提出しようとしたが、准教授は本人と十分議論することなく受け取らなかった。さらにその前年にも博士論文の提出を見送るよう指示していたため、学生は2年続けて論文を出すことができなかったという。

学生の自殺後、両親から「教員の指導に問題があったのではないか」との指摘が寄せられ、大学が調査委員会を設けて調べていた。大学は懲戒委員会で准教授の処分を検討するという。

東北大は13日、大学院理学研究科で教員の指導に過失があり、担当していた大学院生の自殺につながったとする内部調査結果を公表した。

大学院生は2年続けての教員による博士論文の受け取り拒否などで修了できなかった。同大は懲戒委員会で処分を検討しているが、この教員は今月に入り辞職した。

同大によると、自殺したのは理学研究科で生物関係の研究をしていた博士課程の男性大学院生(当時29歳)。大学院生は昨年8月、研究のデータ集めをした滋賀県内で自殺した。遺書には指導法への不満などはなかったが、翌月、両親から男性准教授(52)の指導に問題があったのではとの指摘を受け、内部調査委員会を設置していた。

大学院生は2007年12月、博士論文の草稿を事前提出したが、准教授は大学院生と十分に議論せず受け取りを拒否。准教授は06年11月ごろにも、論文提出を延期するように指示しており、大学院生は2年連続で博士号の取得に失敗した。

調査は、残された論文草稿やデータを見る限り、大学院生の研究は博士論文の審査水準に到達していたと判断。准教授が、具体的な指示を与えず、適切な指導を行わなかった結果、大学院生は学位取得や将来に希望を抱けなくなり、自殺に至ったと結論づけた。准教授は、08年1月に科学誌から大学院生の論文が掲載を拒否され、書き直しが必要になった際も、適切な指導を行わなかった。准教授は調査に「論文提出の直前までデータ整理に追われており、時間がかかると判断したが、指導に不適切な点があった」と話したという。
(2009年5月13日12時38分 読売新聞)

東北大は13日、大学院理学研究科に在籍していた男子大学院生=当時(29)=が昨年8月、担当の男性准教授(52)から論文を差し戻されるなどした後に自殺していたことを公表した。内部調査で今年4月、「指導に重大な過失があり、自殺につながった」とする報告書をまとめており、准教授は4月下旬に辞表を提出、辞職した。

准教授は大学側に対し「指導上、不適切な点があったかもしれない」と話しているという。

東北大によると、准教授は2007年12月、大学院生が博士号取得のために提出した論文を本人と十分に議論しないまま、差し戻した。准教授は06年にも博士論文の提出を見送るよう指示。このほか、大学院生が雑誌向けに書いた論文の書き直しが必要となった際も具体的な指導をしなかったとしている。

准教授は論文差し戻しの経緯について「まさか提出するとは思わなかった」などと説明したという。

 東北大は13日、学術資源研究公開センターの男性准教授(52)が、指導していた大学院理学研究科博士課程に在籍する男性(当時29歳)による博士論文の受け取りを2年連続して拒否し、この男性が昨年8月に自殺していたとの調査結果を発表した。准教授の行為を「重大な過失」とし、自殺につながったと判断した。准教授は今月になって自主退職したが、同大は懲戒委員会で退職金減額などの処分を検討する。

 同大調査委員会がまとめた報告書によると、男性は博士課程3年目の06年に准教授から論文提出の延期を指導され、07年12月には准教授に論文を提出したが、准教授は男性が07年度の提出予定者ではなかったことなどから受理しなかった。報告書は「(不受理によって)将来に深い絶望感を抱いたことが自殺の直接のきっかけになった」としている。

 調査は、男性の研究を「博士授与について審査を受けうる状態にあった」と判断する一方、准教授については「研究の進展状況を十分に把握しておらず、論文の具体的な改訂指示などの適切な研究指導を行ったとは認めがたい」とした。

 男性は昨年8月28日、滋賀県内で自殺。翌月に父親から「指導教員の不適切な指導がなかったか調査してほしい」との手紙が届き、同大が調査委を設置していた。【鈴木一也】

東北大大学院理学研究科の男性大学院生=当時(29)=が昨年8月、指導教官の男性准教授(52)に博士論文を差し戻された後に自殺した問題で、東北大は13日、内部調査の結果を公表した。報告書は、准教授の指導の過失が「自殺の要因になった」と認定。大学院生の論文は、学位授与の審査を受けられる段階に達していたことも判明した。

東北大によると、大学院生は2006年と07年の2回、准教授に博士号を取得するための論文を提出したが、「データ収集が不十分」などとして受け取りを拒まれた。

大学の調査で、大学院生が残した論文の草稿や実験データは博士号の審査を十分に受けられる内容だったと判断された。理学研究科の花輪公雄科長は記者会見で「准教授は研究の進展状況をきちんと把握していなかった上、大学院生とも議論していなかった」と述べた。

自殺に至った経緯について、花輪科長は「准教授の不適切な研究指導により、大学院生は将来に深い絶望感を抱いた」との見方を示した。理学研究科が06年度に導入した複数教員指導制も「十分に機能していなかった」という。

東北大は大学院生の自殺後、家族から「教員の指導に問題があったのではないか」と指摘を受け、調査委員会を設置した。准教授は辞表を提出し6日付で辞職しているが、大学は近く懲戒委員会で退職の扱いなどを含めて懲戒処分を決める。

2009年05月14日木曜日

追記

大学院/研究科ごとに違うと思うけれども、私の勤務している大学院の研究科における博士の授与に関する手続きを参考までにご紹介する。

pre-defence(予備審査)

3月修了予定の場合10月頭に実施(9月修了予定なら4月の頭に実施)。指導教員と副指導教員(博士を指導もしくは指導補助できる資格を持った准教授・教授3名以上)で審査委員会を組み3月修了希望の学生が本当に学位を得るに値するかを口頭試問する。副指導教員は、指導教員が博士を指導もしくは指導補助できる資格を持った准教授・教授にお願いし、なってもらっている。私の所属する大学院では副指導教員の選出に関して博士を指導もしくは指導補助できる資格以外の制限はない。このため、先生ごとに選択の方針は異なる。大学院/研究科によっては、副指導教員のうち一人は別の大学・研究機関の先生でなければいけないとか、副指導教員の一人は、他分野の先生でなければいけないとか異なる。

指導教員を委員長、副指導教員を委員とした審査委員会が研究科教授会の承認を得られたならば、指導教員が予備審査を開催することを研究科に申請できる。このような仕組みで予備審査の開催に進むので、うちの研究科では予備審査を受けられるかどうかは指導教員の判断に任せられている。予備審査の開催が学位授与に至るプロセスのすべての始まりなので、ここの部分でトラブルが発生することもある。研究科が定めている学位授与要件を満たしているかどうか(学術雑誌掲載論文X編以上)が争点ならば話は簡単なのだけれども、「研究成果が博士論文として不十分」という点が争点の場合はやっかい。

うちの研究科では予備審査は、90分を審査の時間とし、60分発表、30分試問という割合。審査委員会メンバーによって発表途中でも質問がバンバンくる場合もあれば、発表が終わってからおもむろに質問ということもある。試問後に審査委員会で審査が行われ、学位請求をしてよいかどうかを判定する。研究科によっては審査に1日かけたりするところもある。条件付きで学位請求を許すことも多いみたい(「〜の内容について疑問があるので、その部分について公表論文があるならば学位を認める」など)。

私は博士を指導もしくは指導補助できる資格を持っていないので博士学生の指導教員/副指導教員になれない。この資格は大学院設置基準第九条の2に基づき、研究科が認定している(研究業績がないと認定してもらえないので教授/准教授だけど博士の指導教員になれない先生もいる)。

学位請求

12月ごろに学位請求のための書類を整え、申請する。書類の主な内容は、学位論文と公表論文の別刷、公表論文が共著の場合には共著者から公表論文を学位申請に使わないと宣言する誓約書も合わせて提出になる。予備審査が通っていない学生は、学位請求を申請しても無条件で却下される。

defence(本審査)

1〜2月中に審査委員会によって再び審査が行われる。やり方は予備審査と同じ。この審査に通ったら実質的に学位の授与が決定する。指導教員(審査委員会委員長)から研究科に審査結果報告書が提出される。

学位授与の決定

2〜3月中の研究科教授会において、審査委員会から審査結果を報告し、無記名投票で学位の授与が決定される。よほどのことがない限り審査委員会の審査結果はひっくり返されない。ただし、この投票によって、ひっくり返されたときには審査委員会の面子が丸つぶれになるので、そんなことが起こらないようにそもそもの予備審査でふるい落としをしておくという動機付けが発生していると思うのでこのプロセスは悪くないと個人的には思っている。

学位論文最終提出&修了

3月末に学位論文の最終提出がある。提出された学位論文国会図書館に収められる。学位記授与式にて、学位記が授与される。

審査結果報告書の発行

翌5〜6月ぐらいまでに、前半期に研究科を修了した博士後期課程の学生に関する審査結果報告書が製本され、大学図書館に収められる。