旅行貯金が趣味の人を郵政の専門家とは呼ばないと思う

以前、安住紳一郎の日曜天国で、旅行貯金という趣味があるのを知った。旅行貯金が趣味の人はさまざまな土地の郵便局に足を運ぶことが多いらしい。

旅行貯金(りょこうちょきん)とは、郵便局や簡易郵便局、ゆうちょ銀行の直営店(以下便宜上「郵便局」に統一)を訪問し、証拠として郵便貯金(現在のゆうちょ銀行総合口座)通帳又は証書に預入、払戻、貸付等を行い、局名印、主務者印等を押印してもらい旅行の記念とする趣味。

また、電車関連の趣味で、いろいろな駅に降りて楽しむ降り鉄という趣味もある。これもさまざまな土地の駅に足を運ぶことが多い趣味だ。

大学教員だからかもしれないけど、田村 耕太郎さんの「知の大国アメリカ〜ランド研究所から〜」という連載は「ええー」と思いながら読むことが多い。そして、今回の記事は一際「ええー」と思った。理由は、内容とそれを論じる専門家のミスマッチがあると思ったため。

 上位校から中堅下位校までの各々が問題を抱えた日本の大学。今回はその日本の大学が抱える問題を検証すべく、47都道府県11ヵ国865大学1152キャンパスを見学してきた大学研究家の山内太地氏に話を聞いた。

山内さんはブログやTwitterででたまに名前や記事を拝見することがあるのだけれども、正直「何の専門家なんだ?」といつも思っていた。ブログの記事をいくつか拝見した限り、山内さんはキャンパスに訪問するのがメインであり、授業を聞いたり、しばらく研究員として滞在されているわけではない。訪問されている大学の数から、大学キャンパスの作りや雰囲気、学生の様子など外部からチェックできるものに関しての専門家であるというのは全く持って正しいし、納得できる。まさに、唯一の専門家だと思う。

一方で、大学運営や授業・研究の質、学生の質などに関する専門家として発言されるのはちょっと受け入れられない。それは旅行貯金の人が郵便局の様子や雰囲気を語るだけでなく、郵便局の運営や郵便局員およびその仕事の質、郵政について語るのと同じだと思う。降り鉄の人が駅の造形や雰囲気を語るだけでなく、その鉄道会社自体や職員の質、鉄道会社の運営について語るのと同じ。それは普通に素人+αの意見として聞くものだと思う。

で、今回の日本の大学教育の失敗(その1)「東大はグローバルリーダーを養成できない!」においては、山内さんは完全に入試制度や大学運営の話、および、学生の質について専門家として語っている。これで、山内さんが東大出身で、ハーバードやエールに短期留学(滞在)経験があるなら、自分の体験談として説得力があるのだろうけど、ja.wikipedia:山内太地によれば、東洋大学出身で東大出身じゃない。ハーバードやエールに関しても出身者からの聞き取りや本での知識収集はされている様子だけど(山内さんのブログの記事より)実際に滞在していた様子はない。おっしゃっていることは当たっている部分もあるのかもしれないが、それに至る理由の説明がなければ単なる印象論にしか聞こえない。

山内太地さんは、キャンパスの造形や雰囲気などの専門家なのだから、そこいらへんの違いと実際の統計データから日本の大学と欧米の有名大学との在り方の違いを探っていけば、持ち味が生きて、説得力もあり、面白い対談になるだろうにどうしてこんな展開にしてしまうのだろう。田村 耕太郎さんは山内太地さんが何の分野に説得力を持つ専門家なのかわかっているのだろうか?この連載を読むたびに「ランド研究所って…」と思ってしまう。

本来は山内さんの著作を読んでからこういう批判をすべきだけど、ちょっとあまりにもと思ったのでエントリーにした。

あと、日本の大学教育の失敗(その1)「東大はグローバルリーダーを養成できない!」の内容自体については、学生寮の復権については賛成だけど、本当に有名校は学生寮に入るのが一般的なのかはデータがあると思うのでまずはデータを見せるべき。私はヨーロッパの大学しか訪問(not 滞在、4〜5校程度)したことないけど、市街地にある大学(東京の大学のように建物が普通に街中にたっておりキャンパスがない)は十分な数の寮をもっていないのではないかと思う。

「年齢:15歳、性別:女性、住んでいる町名:〜町、借りた本:堕胎の仕方」で問題なし?

他にも「年齢:14歳、性別:男性、住んでいる町名:〜町、借りた本:完全自殺マニュアル、図解中毒マニュアル」とかもいろいろとありそう。このプロファイルに当てはまるのが10名程度だと「いつも図書館に行くのは誰?」と近所で聞いたら即座に特定(誤認定)できそう。私がこのデータに触れる担当者だったら当然心配する。でも、こういう自由を認めるのも「図書館の自由に関する宣言」で守りたいこと。

人口が十分に多い土地以外は年齢ピンポイントは危ないと思う。年齢区分は小学校低学年、高学年、ローティーン(中学生)、ハイティーン(高校生〜成人)、20代、30代、…ぐらいの分け方が良いんじゃなかろうか。本の選定につかうならそれで十分でしょ?(あとは、属性を使ったレコメンドもこれぐらいで十分だと思う)。

この話は、プライバシー侵害を懸念する際に「個人情報保護法」でいう個人情報でないから問題ないと主張する組織が相次いでいるのが問題の続き。記事をみるかぎり、やっぱり、個人情報保護法」でいう個人情報でないから問題ないという流れのような気がして怖い。

あと、このタイトルはミスリーディングなので止めて欲しい。「データ収集」行為に問題がないのではなく、「収集するデータ」が問題ないと言われただけ。

武雄市図書館の管理をレンタルソフト店「TSUTAYA(ツタヤ)」の運営会社に委託する計画を進めている佐賀県武雄市は6日、利用者の個人情報の扱いについて、市個人情報保護審議会(会長・松尾弘志弁護士)に諮問した。審議会は収集する統計データは個人を特定しない情報で問題なく、貸し出しに伴うポイント付与のための情報提供も本人同意があれば構わないと答申した。ただ、個人情報の厳格な取り扱いを明文化し、運用にも配慮するよう要請した。

市は3点を諮問。性別、年齢、住んでいる町名の情報だけを残した利用履歴である統計データの収集については、個人と特定できない属性情報で、問題なしと答申。運営会社の「Tカード」を選択した場合のポイントシステムへの情報(T会員番号、使用年月日、使用時刻、ポイント数)の提供は、本人同意があれば構わないとした。

ただ、利用情報の管理については委託時の協定書に厳格な保護、運用にあたっての情報システム構築を明文化することを要請した。市によると、統計データは館内のシステムに13カ月蓄積し蔵書充実などに利用、現行と同じ運用になる。個々人の関心に合った本を推薦する「リコメンド」はしないという。

この記事タイトルもひどい。理屈では収集するデータは「個人情報でない」から問題ないでしょ?

武雄市の個人情報保護審議会(会長、松尾弘志弁護士)が6日開かれた。市図書館の運営をレンタル大手「TSUTAYA」の運営会社、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に委託するために、浦郷究教育長から同日付で諮問された図書館利用情報の適正な管理などについて論議し、いずれも「問題なし」と答申した。

審議会は非公開で、終了後に松尾会長が会見して内容を明らかにした。諮問は(1)統計データで使用する情報の収集(2)図書館システムからポイントシステムへの情報提供(3)図書館利用情報の適正な管理の3項目。

答申では、統計データは個人が特定されない属性情報で個人情報ではないため問題はないとした。ポイントシステムへの情報提供も、本人の同意があれば問題はないとした。

図書館利用情報は、指定管理者と協定書を締結すればよいとしたが、協定書については、個人情報の厳格な取り扱いが明文化され、運用にあたっての情報システムの構築がなされていることを確実に盛り込むよう注文を付けた。

同審議会が「問題なし」と答申したことで、市は今月中旬に開催予定の臨時市議会に、CCCを指定管理者とするための議案を提出する。(安楽秀忠)

このタイトルが一番適切に思う。

武雄市図書館の運営をTSUTAYAの運営会社「カルチャー・コンビニエンス・クラブ(CCC)」に委託する構想で、同市個人情報保護審議会(会長・松尾弘志弁護士)は6日「市の個人情報保護条例上問題ない」と市に答申した。市は近く臨時議会を開き、CCCを指定管理者とする議案を提出する。

計画では、同社などの共通ポイントカード「Tカード」と従来の図書カードを貸し出しで使用。カードからは属性情報(性別・年齢・大まかな居住地)だけを取り出し、購入図書を決める際の資料に使う。貸し出し履歴から本人にお勧めの本を提示するレコメンド機能は断念した。この結果、本の利用履歴だけが統計データとなるので、審議会は「収集されるのは個人情報ではなく、問題ない」とした。

Tカードはポイント取得のため、図書館利用情報がCCCのシステムに提供される。会員番号と利用年月日と時刻、ポイント数の4項目。審議会は「情報提供に本人の同意があれば条例上問題ない」と判断した。【渡部正隆】

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追記

こちらのエントリーで佐賀新聞、読売新聞、朝日新聞毎日新聞サガテレビでの報道比較がされています。