いまさっきThe Economistのウェブページ見たら、中央大の鳥谷部先生たちの「マクスウェルの悪魔の実現」の話が科学欄の記事になっていた。[ここ]
「世の末のための熱力学」として、この欄で二週ほど前に紹介したあの話です。
(土佐交換日記:Researchmapが"The Economist"に勝つより)
リンク:博士に求めたい能力
- Researchmap:押木俊之研究ブログ
論理学を勉強する時に私は何が難しいと思ったのか
そこで、誠に勝手ではありますが、「こういう手順を踏めばよかったのではないか」と思う論理の習得のステップを、以下のように考えて見ました。
- 推論と、推論と似て非なるもの(例えば推測など)の違いを知る
- 正しい推論の具体例を実際にいくつか見て、正しい推論が正しいかどうかを自分で確かめる(あるいは、必ずしも正しくない推論の具体例を実際にいくつか見て、それらの推論が必ずしも正しくないことを自分で確かめる)
- 正しい推論のパターンがどのように定義されるのかを知る。
- 日本語と推論のパターンとがどのように対応しているか知る
上のエントリーは「論理」について勉強するときの話だけれども、便乗して自分が論理学を学ぶときに何が難しいと思ったのかを思いつくままに列挙してみる。
- 現実世界での応用が即座に思いつかず、記号遊びにしか思えない
- メタ言語と対象言語の区別がついていなかった
- 論理学の本ごとに形式システム(Formal system)が異なっており、同じことについて書かれているとは思えなかった
- ヒルベルト形式の公理系システム(Hilbert style axiomatic system、公理たくさん、推論規則少ない)、ゲンツェンの自然演繹システム(Natural deduction system、公理少ない、推論規則たくさん)、ゲンツェンのシーケント計算システム(Sequent calculus system、シーケントという式と推論規則で構成)が主な形式システム。本ごとに形式システムが違うので最高に混乱する。
- 論理学の本ごとに論理式の表現、論理結合子の表現、用語が異なる
- 本の中で一貫していれば、どんな表現でも良いので。用語が異なるのは翻訳が違うから。
- 構文論の話の中で論理式の真・偽が登場する。結果、構文論と意味論の区別がつかなくなる。
- 議論の焦点が「個々の命題の真偽」なのか「論証(inference)が妥当かどうか」なのかが混乱する
- 一階述語論理式の真偽を判定する話のところで、何気に計算可能性理論(決定可能性)が登場して、その知識がなくて意味がわからなくなる
- 論理学の教科書で扱っている(古典数理)論理における「真・偽」の概念と私たちの日常的感覚の「真・偽」の概念の差が理解できず、混乱する
- たまに、現実世界の事柄において古典数理論理における「真・偽」の概念を使って、「だから、論理的におかしい」と言う人がいるけど、そもそも、議論している部分が古典数理論理における「真・偽」に対する話かどうかを良く検討しないとそんな主張は意味ない。
「論理学をつくる」は、上の私の混乱した部分の大半を丁寧に解説してくれているとても良い自習書。
世代別大学経験者、修士課程進学者のいる割合 with 投票率
衆議院議員選挙年齢別投票率の推移というデータを見つけたので、世代別大学経験者、修士課程進学者のいる割合のデータと合わせてみた。
世代別大学進学者、修士課程進学者、博士課程進学者
以下のように計算してみた。
- 統計局:20010年2月の人口推計から20歳以上の5歳区分けの年齢階級ごとの人口をとってくる
- 20歳、25歳、30歳、40歳、50歳、55歳、60歳、70歳、80歳、75歳を各年齢階級の代表値とし、この年齢の人が18歳のとき、22歳のときの大学進学率と修士課程進学率をとってくる
- 大学進学率は文部科学省:大学・短期大学等の入学者数及び進学率の推移(PDF)のグラフから目分量でおおよその値を取得した。
- 大学進学率は、その年の大学入学者数を3年前の中学校卒業者数で割った値である(資料をご参照のこと)
- 修士課程進学率は、ベネッセ:図1 大学院入学者数と進学率の推移のグラフから目分量でおおよその値を取得した。ただし、1989年からの進学率しかなかったので、それ以前の進学率は1989年の値とした。
- 修士課程進学率は、学部卒業者で直接修士課程に進学した人数を学部卒業者で割った値である。
- 本来は、大学進学率の定義、修士課程進学率の定義、学歴と死亡者の関係などいろいろと考慮しなければならないけど、ざっくりと、「年齢階級ごとの人口×大学進学率/100」を大学進学者数として計算した。
- 同様に「年齢階級ごとの人口×大学進学率/100×修士課程進学率/100」を修士課程進学者数とした。ただし、20歳?24歳の階級はまだ大学を卒業していない学生も含まれるので、前述の式を0.5倍している。
- ベネッセ:図1 大学院入学者数と進学率の推移を参考に、博士課程への進学率を一律2%としたとき、上記と同じように年齢階級別に博士課程進学者数を考えてみる。計算式は「大学進学者×博士課程進学率/100」
- 「ほげほげ進学者が占める割合」=「ほげほげ進学者数/人口推計値×100」で計算している。よって、大学進学者が占める割合は大学進学率と同じになる。
年齢階級 | 人口推計値(千人) | 大学進学率(%) | 修士進学率(%) | 博士進学率(%) | 大学進学者(千人) | 修士進学者(千人) | 博士課程進学者(千人) | 大学進学者が占める割合(%) | 修士進学者が占める割合(%) | 博士進学者が占める割合(%) | |
20~24 | 6,701 | 47 | 14 | 2 | 3149.47 | 220.4629 | 0 | 47 | 3.29 | 0 | |
25~29 | 7,282 | 40 | 14 | 2 | 2912.8 | 407.792 | 58.256 | 40 | 5.6 | 0.8 | |
30~34 | 8,426 | 35 | 14 | 2 | 2949.1 | 412.874 | 58.982 | 35 | 4.9 | 0.7 | |
35~39 | 9,518 | 26 | 11 | 2 | 2474.68 | 272.2148 | 49.4936 | 26 | 2.86 | 0.52 | |
40~44 | 8,414 | 26 | 8 | 2 | 2187.64 | 175.0112 | 43.7528 | 26 | 2.08 | 0.52 | |
45~49 | 7,687 | 27 | 6 | 2 | 2075.49 | 124.5294 | 41.5098 | 27 | 1.62 | 0.54 | |
50~54 | 7,661 | 27 | 6 | 2 | 2068.47 | 124.1082 | 41.3694 | 27 | 1.62 | 0.54 | |
55~59 | 9,120 | 25 | 6 | 2 | 2280 | 136.8 | 45.6 | 25 | 1.5 | 0.5 | |
60~64 | 9,305 | 16 | 6 | 2 | 1488.8 | 89.328 | 29.776 | 16 | 0.96 | 0.32 | |
65~69 | 8,330 | 12 | 6 | 2 | 999.6 | 59.976 | 19.992 | 12 | 0.72 | 0.24 | |
70~74 | 6,873 | 10 | 6 | 2 | 687.3 | 41.238 | 13.746 | 10 | 0.6 | 0.2 | |
75~79 | 5,781 | 9 | 6 | 2 | 520.29 | 31.2174 | 10.4058 | 9 | 0.54 | 0.18 | |
80~84 | 4,209 | 7 | 6 | 2 | 294.63 | 17.6778 | 5.8926 | 7 | 0.42 | 0.14 | |
85歳以上 | 3,633 | 5 | 6 | 2 | 181.65 | 10.899 | 3.633 | 5 | 0.3 | 0.1 | |
合計&全有権者数に占める割合 | 1,0294,0 | -- | -- | -- | 24269.92 | 2124.13 | 422.41 | 23.58 | 2.06 | 0.41% |
博士進学者の大学進学者に占める割合 | |
1.74% |
投票者数との関連
- 衆議院議員選挙年齢別投票率の推移の45回(平成21年8月)の年代別投票率を用いる
- 投票者数=人口推計×投票率/100
- ほげほげ進学者かつ投票者数=投票者数×ほげほげ進学者が占める割合
- 全投票者数に占める割合=全年代のほげほげ進学者かつ投票者数の和/全年代の投票者数×100
年齢階級 | 年代別投票率 | 投票者数(千人) | 大学進学者かつ投票者数(千人) | 修士進学者かつ投票者数(千人) | 博士進学者かつ投票者数(千人) | |
20~24 | 49.45 | 3313.64 | 1557.41 | 220.46 | 0.00 | |
25~29 | 49.45 | 3600.95 | 1440.38 | 407.79 | 58.26 | |
30~34 | 63.87 | 5381.69 | 1883.59 | 412.87 | 58.98 | |
35~39 | 63.87 | 6079.15 | 1580.58 | 272.21 | 49.49 | |
40~44 | 71.06 | 5978.99 | 1554.54 | 175.01 | 43.75 | |
45~49 | 71.06 | 5462.38 | 1474.84 | 124.53 | 41.51 | |
50~54 | 72.63 | 5564.18 | 1502.33 | 124.11 | 41.37 | |
55~59 | 72.63 | 6623.86 | 1655.96 | 136.80 | 45.60 | |
60~64 | 79.69 | 7415.15 | 1186.42 | 89.33 | 29.78 | |
65~69 | 79.69 | 6638.18 | 796.58 | 59.98 | 19.99 | |
70~74 | 84.15 | 5783.63 | 578.36 | 41.24 | 13.75 | |
75~79 | 84.15 | 4864.71 | 437.82 | 31.22 | 10.41 | |
80~84 | 84.15 | 3541.87 | 247.93 | 17.68 | 5.89 | |
85歳以上 | 84.15 | 3057.17 | 152.86 | 10.90 | 3.63 | |
全投票者に占める割合 | 21.89 | 2.90 | 0.58 |
- 学歴による投票率の偏りは完全に無視しているので、たぶん、もう少し「ほげほげ進学者の全投票者に占める割合」は高いと思う。
- 20代および30代の投票率をあげるとどうなるのかは興味深いところ。
- 大学院の重要性を大学院関係者のみが理解しているならば、政治の場で絶対に考慮されない。明らかに票にならない。