研究者データベースと公募データベース

最近の論文を学術雑誌や学術会議に投稿している職業研究者の多くは、自分のWebページを持っている。昔は当然ながら自分のWebページなどは持っていない。最近でも、昔ながらの研究者の方々は案外Webページを持っていないと思われる。なにせ、2006年にこれからホームページをつくる研究者のために―ウェブから学術情報を発信する実践ガイド (ACADEMIC RESOURCE GUIDE) という本がでているくらいなので(この本の悪口を言っているわけではなく、この本を出版しなければならないという動機が生じる現状から)。

研究者情報のデータベースとしては、多くの大学や旧国立研究所(今は軒並み独立行政法人)が独自に所属研究者のデータベースを持っている。国内横断的なデータベースとしてはReaDが有名。運営は、独立行政法人科学技術振興機構JST)。

ReaDは、国立大学と旧国立研究所と提携して研究者情報を更新しているらしい(余談ながら、私の情報はReaDにはない。所属大学のデータベースにデータを毎年提供しているのに・・・)。提携していない大学や研究所は、自分で登録作業が必要らしい。

おなじく科学技術振興機構が運営しているのが、研究者求人データベース。JREC-IN

研究者人材データベースとあるが、研究者に対する求人情報のデータベースみたい。研究者が登録しておくと、自分が求める求人情報がデータベースに届いたら、その旨を連絡してくれるらしい。求人情報は、企業や大学、研究所が投稿するらしい。

これとは別に産学連携を考えた研究者データベースもあるみたい。

運営母体は、特定非営利活動法人JRCM産学金連携センター。ただし、上記ReaDやJREC-INとはまったく独立にデータ収集をしている様子。

国内横断レベルの研究者データベースが必要な理由はいくつかあると思う。

  1. 求人のため
  2. 共同研究、共同開発のため
  3. 取材、助言、コメントのため
  4. その他依頼のため(講演など)

2〜4番目の目的は、主に職業研究者が対象となる。1番目の目的は、職業研究者ならびに研究者の卵、もしくは在野の研究者(職業研究者ではないが研究を行っている人たち)が対象となる。

現在のReaDを見る限り、利用目的は2〜4の目的に使われることを想定していると思う。けれども、日本の研究活動の少なくない部分は企業にいる職業研究者が行っているので、この部分をReaDはカバーしていない。また、求人目的でみると、研究者の卵(ポストドクター、博士課程の学生)や在野の研究者はReaDでカバーされていない。

論文のデータベースのたとえで考えると、ReaDというのは、Web of ScienceやScienceDirect、あるいはDBLPのように品質をある基準で保証されたデータベースと言える(大学や旧国立研究所に勤めているというのが妥当な基準であるかどうかは別として)。しかしながら、今の時代は、Web上に存在する論文は玉石混合で引っ掛けてくるGoogle Scholarのような、自称研究者をすべて引っ掛けるデータベースが必要ではないかと思う。

情報の共有が加速した結果、さまざまな学際領域が日々生まれているが、これらの学際領域の研究者を受け入れる機関は日々生まれるわけではない(当たり前の話)。けれども、企業やマスコミ、場合によっては他の分野の専門家はその新しい領域の研究者とコンタクトをとり、何らかの働きかけをしたいと思っているに違いない。現在は、そのような研究者を探す方法は人脈に頼るか、出版物(Webを含む)を漁って探しだすしかない。

もし、自称研究者をすべて引っ掛けるデータベースが存在すれば、ファーストコンタクトはとても楽になる。しかも、その領域の研究者を複数探し出し、比較検討してよりまともな研究者にコンタクトをとることが可能となるのではないかと思う。

このような玉石混合なデータベースの使命は、「研究者としての自分の存在証明する場所をWeb上に提供する」で良いと思う。別に自分で証明したくないならば、そのデータベースに登録してなくてもかまわないというスタンス。

一方で、そのデータベースの内容更新が面倒であるならば、利用者は使ってくれない。また、研究者が明らかにすべき情報というものは、分野によって大きく異なる(主たる業績が論文の世界もあれば、本の世界もある。また、分野によってはメーリングリストでの発表で業績とみなすかもしれない)。よって、データベースが持つのは氏名、年齢、所属、連絡先、詳細が載っているWebページぐらいのメタ情報を扱うのが好ましいと思う。玉石を区別する責任は、利用者かこのメタ情報データベースの二次利用者に持たせるのが現実的だと思う。

いつかこのアイデアを実現したい。また、これと似たような人材情報のデータベースとしてプログラマ(IT分野のエンジニア)のデータベースも構築したい。人材の流動性が高くなる時代には、このように職業人としての存在証明を行うための場がどうしても必要だと思う。