南京事件「検証写真」を検証する

南京事件「検証写真」を検証する

南京大虐殺について異論があるというのはネット上の知識でうすうす知っていたので、せっかくだからその異論について
知ってみようと思って読んだ本です。

第一章の南京事件の経緯は南京事件がどういう経緯で発生したのかを説明していて、私のような門外漢にとってありがたっかったです。

2章以降の写真の検証については、もともとの写真が別の文脈で使われているという点についてはよく納得できました。また、
南京事件当時の季節からすると、写真に写っている人々の服装が季節にあっていないというする話も説得力はありました。

これらの写真は南京事件の写真といえるのかいえないのか?と質問されたら「わからない」と答えるぐらいまで中立化されたと思います。

しかしながら、著者はエピローグにて、証拠写真とされるものに信用できるものは一枚もないと言い切っています。その根拠は、
発見されたという国民党宣伝部極秘文書「中央宣伝部国際宣伝処工作概要」という資料です。

これは、著者自身が発見したそうですが、まずはこの資料のの信憑性が学問的に認められているのかについては、Googleで検索してもよくわかりませんでした。

この「中央宣伝部国際宣伝処工作概要」という資料が信頼できる資料であると保証されない限り、著者の主張は納得のいくものでは
ありません。まずは、その資料の信憑性について厳密に吟味すべきであると思いますが、本中では、この資料の信憑性を高めるデータを全く与えてくれませんでした。

また、本の検証も写真の説明が適当に書き換えられているという部分の検証に関しては客観的であると思われるのですが、そうでない部分、すなわち写真の内容の否定に関しては、中国側の発表をまるっきり信じない割には日本側の発表を信じすぎているように感じます。

日本側だって、当然国内、国際向けに都合の良い発表をするはずですので、日本側の発表も割り引いて考えるべきではないでしょうか?

これらをあわせて、私の結論は、「南京事件の写真とされるものの多くはそうではないと思われる。ただし、この本に載っている写真すべてが南京事件に関する写真でないとは言い切れない。」です。