今回のセンター試験の変更点良いところ・悪いところ

センター試験の試験監督をする立場から見ての良いところ・悪いところ

良いところ

  • あらかじめ受験科目を申請させ、事前に誰がどの科目を受けるのかがわかっていたおかげで人員の効率的運用が可能だった
    • 今までは誰がどの科目をうけるかわからないので、科目ごとに受験者をまとめることができなかった
    • 結果として、ある科目をうける受験者が1人の教室が10部屋、試験監督が1部屋に2人ずつという事態が発生していた
    • 今年は受験者ゼロの部屋をつくることができるので、試験監督をそこに配置しなくてもよくなった
  • 30分くらい試験終わりが早くなった

悪いところ

リスニングのICレコーダーの配送ミスは文句なく不手際だけど(そもそも、リスニングやる必要あるのかは要検討)、河北新報:センター試験/たるんだ体質謝罪で済まぬより

今回はさらに、地理歴史と公民で問題の配布ミスが続出、全国の60近い会場で開始時間が遅れるなど、4500人に影響が出る前代未聞の混乱を招いた。

試験方式が変更され、両科目の問題2冊を配らなければならないのに、1冊を配り忘れていた大学が大半。昨年6月に変更が公表されており、監督者への周知が行われていれば、それほど難しい作業とは思えない。

大学当局からの周知徹底が甘かったとしても、新たに方式変更があった科目に対し、監督を任された職員、研究者は細心の注意と事前チェックをするのが普通の感覚だろう。

同じミスがこれだけ広く起きたことに、大学という機構のどこかが崩れ始めているのではないかと憂慮する。

さらに西日本新聞:センター試験 不慣れだったでは済まぬより、

今年の大学入試センター試験は、全国各地でトラブルが多発した。

とりわけ試験方法が大きく変わった社会では、2冊配る問題冊子を1冊しか配布しなかったり、開始時間が遅れたりするケースが続出した。センターによると、少なくとも58会場で4565人が影響を受けた。試験を運営する側の不手際による混乱としては1990年のセンター試験開始以来、最悪の規模となった。

冊子配布に手間取り試験を約50分延長した会場があるなど、他の受験生との公平性が問題となる事例もあった。まだ集計がまとまっておらず、影響を受けた人数などはさらに増える見込みという。

不手際に直面した受験生はかわいそう。試験監督側としては申し訳ない気持ち。でも、大学試験センターや文科省が大学にいろいろ文句言ってくるのはちょっと納得できない。

センター試験始まる 全国40超の会場でトラブルによれば、全国709会場で約55万人が受験、人数の差もあろうが1会場10教室で試験監督3人とすれば、21,000人ぐらいの試験監督が動く。この規模のイベントで10%の会場でトラブル発生、1%の受験生に悪影響があったという結果となっている。

「昨年6月に変更が公表されており、監督者への周知が行われていれば、それほど難しい作業とは思えない。」と言われているけど、部屋ごとにオペレーションが異なり、かつ、初体験事項満載。そして、受験者によって部屋の設定が変わるので人員配置は年末ぐらい。12月から卒論シーズンまっさかりで、年明けて次の週にセンター試験で試験監督。しかも、地歴・公民と理科でオペレーションが違うというトラップあり!

地歴・公民と理科の監督をした場合 地歴・公民 理科
ケース1 1科目受験(地歴か公民の問題冊子だけ配る) 1科目受験(問題冊子1冊、解答用紙1つ)
ケース2 1科目受験(地歴か公民の問題冊子だけ配る) 2科目受験(冊配り、60分で解答用紙1を回収、10分の休み時間が受験生を退出させない)
ケース3 2科目受験(2冊配り、60分で解答用紙1を回収、10分の休み時間が受験生を退出させない)  1科目受験(問題冊子1冊、解答用紙1つ)
ケース4 2科目受験(2冊配り、60分で解答用紙1を回収、10分の休み時間が受験生を退出させない)  2科目受験(冊配り、60分で解答用紙1を回収、10分の休み時間が受験生を退出させない)

私の所属大学は人員が少ないので毎年かならずセンター試験の監督をしなければならないが、大規模な大学(旧帝大など)では数年に一度しかセンター試験の監督業務が回ってこない。そういう人は、数年前のセンター試験の知識しかない。でも、ここ毎年、ちょっとずつ制度変更があり(大きかったのは数年まえのリスニング導入、その後毎年リスニングのオペレーションがちょっとずつ変更)。試験監督が100人単位でトラブル発生するのはあらかじめ織り込んでおいて良いと思う。21,000人(事務の方と会場設置などの学生アルバイトもいれれば1.5倍〜2倍の人員)に一切のミスをさせないようにするならば、ミスが発生し辛いオペレーションを構築すべき。

手当てはでるけど、末端の教員としてはセンター試験の業務をやらなくてよいならありがたいので、一度、大学以外の別組織にセンター試験の運営をやってみてもらいたい。別にセンター試験は大学の「正規」の業務ではないので(あれは、大学入試センターの委託業務のはず)正規の業務だった。コメント欄と追記参照

なお、私の勤務校が担当している会場ではトラブルなしだった。

追記

コメント欄でwd0さんに教えていただいたが、大学入試センター試験の実施は大学の正規業務だった。

第三章 業務等

(業務の範囲)
十三条 センターは、第三条の目的を達成するため、次の業務を行う。
 一 大学に入学を志願する者の高等学校の段階における基礎的な学習の達成の程度を判定することを主たる目的として大学が共同して実施することとする試験に関し、問題の作成及び採点その他一括して処理することが適当な業務を行うこと。
 二 大学の入学者の選抜方法の改善に関する調査及び研究を行うこと。
 三 大学に入学を志望する者の進路選択に資するための大学に関する情報の提供を行うこと。
 四 前三号の業務に附帯する業務を行うこと。
2 前項第一号の試験の実施の方法その他同号の試験に関し必要な事項は、文部科学省令で定める。
3 センターは、第一項の業務のほか、同項の業務の遂行に支障のない範囲内で、国、地方公共団体又は一般社団法人若しくは一般財団法人その他の営利を目的としない法人の委託を受けて、これらの者が実施する試験の採点及び結果の分析に関する業務を行うことができる。

(関係機関等との連携協力体制の整備)
第十四条 センターは、前条第一項に規定する業務を円滑に遂行するため、大学、高等学校その他の関係機関及び関係団体との緊密な連携協力体制の整備に努めなければならない。

また、平成23年行政事業レビューシート:独立行政法人大学入試センター運営費交付金に必要な経費を見る限り、各大学に大学入試センターから試験監督などの経費が支払われていない。ただ、Googleで「大学入試センター試験 試験監督 手当」で検索すると、各国立大学の教職員組合の機関紙がヒットする。たとえば、島根大学職員組合:大学入試センター試験業務に関わる休日給についてなど。これによると国立大学の法人化直後(2005〜2007年くらい)までは、大学入試センターから実施費用が支払われていた様子。京都大学職員組合ニュース : 職員組合ニュース 2010年度第16号によれば以下のように書かれている。

数年前まではセンター試験実施の受託経費を原資とした試験監督者への手当がありましたが「センター試験監督業務は教職員の本来業務である」として、支給がなくなりました。

試験業務手当の原資がどこからでているかは別として大学ごとにセンター試験業務の手当ては異なる様子。国立大学だと1万数千円/日が相場らしい。

どの大学が試験実施を行うかについては該当地区内の大学間で協議されるらしい。「平成24 年度大学入学者選抜大学入試センター試験実施要項」より

各大学は,大学入試センターと協力して,原則として都道府県ごとに,各大学の入学者選抜の実施責任者等による連絡会議を組織し,試験場の設定等試験実施上の具体的取扱いについて協議するものとする。なお,連絡会議を組織するに当たっては,この会議の取りまとめや当該地域内の各大学間の連絡調整等を行う世話大学を置き,大学入試センター試験の円滑な実施を図るものとする。

大学入試センター:平成13事業年度事業報告書によると世話大学は大学入試センターが決めている様子、そして、各都道府県の国立大学が世話大学になっているみたい。
例:平成24年度大学入試センター試験に係る茨城地区志願者の各大学への割り当てについて(PDF)