まとめ
- すべての大学では合理的調整(合理的2024年4月の改正障害者差別解消法施行により、私立大学を含むすべての大学で障害のある学生への「
合理的配慮」の提供が法的義務となりました。)を行うことが義務付けられています。
- 身体的障害だけでなく、神経発達症(発達障害)や精神的障害も配慮すべき障害として認められています。
- 大学における合理的調整の中心的な考えは「成績評価のダブルスタンダードは設けない」です。
- このため、合理的調整は「ずる」ではありません。
- うまくいかなかった前学期のことはおいておいて、新年度は合理的調整を申請して、新しい気持ちで学業に取り組みましょう。
大学における合理的調整(合理的配慮)
2016の試行時には国立大学では義務、私立大学では努力義務でしたが、2024年4月の改正障害者差別解消法施行により、私立大学を含むすべての大学で障害のある学生への「合理的配慮」の提供が法的義務となりました。
合理的「配慮」だと、健常者集団に「配慮してもらう」という印象が強いので合理的「調整」という呼び方の方が適していると主張している方々もいます。私も賛同します。
shohgaisha.com
──令和6年4月から障害者差別解消法が改正され、合理的配慮の提供が民間事業者にも義務化されましたが、日本の「障害者差別解消法」に対して思うところがあれば、お聞かせください
「作家としてここは『言葉』について語ります。『合理的配慮』という訳はほとんど誤訳と言ってよく、今からでも『合理的調整』とするべきだと考えています。例えば『rights』は『権利』ではなく『権理(権理通義)』(by福沢諭吉)と訳すべきだった、つまり『利』という字のネガティブな印象のせいで人権を理解できない国民になってしまったという話もあるように、こうした言葉の誤選択は国民の精神性に悪影響を及ぼし尾を引いたりするので、私は意地でも『合理的調整』と書いていこうと思います」
大学の講義における合理的配慮の中心的な考えは「成績評価のダブルスタンダードは設けない」です。学力を測る際の段差を合理的配慮で埋めた上で、他の学生と同等の基準で成績評価を行うという考え方になります。
内容決定の際の留意事項:教育の目的・内容・評価
合理的配慮の内容が妥当かどうかの判断基準として、教育の目的・内容・評価の本質を変えないという原則があります。合理的配慮としてできること、できないことの基準が明確となるよう、これらの本質は明確にして公開される必要があります。具体的には、次に挙げる教育に関する三つのポリシーや授業のシラバスがそれに当たります。判断の基準になるよう、抽象的で形式的記述ではなく、具体的であることが期待されます。
(日本学生支援機構:合理的配慮ハンドブックより)
合理的調整の対象範囲に神経発達症(発達障害)や精神的障害も入る
障害というと身体的障害を思い浮かべる方も多いと思いますが、日本学生支援機構が出している「教職員のための障害学生修学支援ガイド」では、発達障害や精神的障害も配慮すべき障害として例示されています。
発達障害は、これまで乳幼児や児童の問題とされてきました。しかしながら、その特徴や問題は長期にわたって変わらずに続くこと、知的に問題はなくとも発達障害のある人がとても多いことが指摘されています。平成16年12月に成立した発達障害者支援法第八条第2項では「大学及び高等専門学校は、発達障害者の障害の状態に応じ、適切な教育上の配慮をするものとする。」と明記され、支援の必要性が示されました。大学等においてもかなりの学生にこの障害があると想定されるため、発達障害も“障害”の一つとして、その困難さに応じた支援が必要です。
大学生の年代にあっても精神疾患はもはや珍しいものではありません。自殺が依然として大学生の死因の上位を占めており(大学における休・退学、留年学生に関する調査、平成23年)、精神疾患の早期発見に力を注ぐ大学もあります。従来、精神疾患のある大学生の多くが、症状が増悪した時に休学し、回復したら復学するという決断をしてきました。そのため、療養に専念する期間が数か月程度でも半年単位の休学や留年を経験することがしばしばありました。大学生の年代に見られる精神疾患の多くは医学的治療によってかなりの程度まで回復が期待できますが、復学の時点では、必ずしも通常のレベルで修学や生活に取り組めるとは限らず、症状が残遺したり知的作業の能力が十分に回復していなかったりします。このように平均的な状態から多少とも偏りが認められる精神状態が続くようであれば、精神障害のある学生として修学上の配慮や環境調整が必要となるでしょう。そこで復学が決まったら、支援を申請する手続きや具体的な支援内容の決定について検討されることになります。
精神障害のある学生に提供される合理的配慮は、各人の精神疾患固有の経過や症状を理解した上で、個別的な対応を決定するプロセスの基礎をなします。精神障害のある学生の支援について、大学として明確なポリシーを発信することが重要です。
精神障害の例として以下のものがあげられています(主な精神障害より)。
1. 統合失調症
2. 気分障害(大うつ病性障害、双極性感情障害を含む)
3. 不安性障害
4. 睡眠障害
5. 高次脳機能障害
また、主な精神障害のページにはそれぞれの障害について「どのような疾患か 」「どのような困難があるか 」「どのような支援・配慮が必要か」が説明されています。
気分障害(大うつ病性障害、双極性感情障害を含む)の「どのような困難があるか 」は以下のとおりです(赤字強調はnext49による)。
気分障害は、軽度であれば病感や病識が十分にないまま年月を経過することがありますが、多大なストレスに遭遇するなどのきっかけにより、社会生活や体調の面で急激に支障が生じることがあります。試験や授業への出席が困難になって欠席が続いたり、教職員や家族からの連絡に無反応になったりします。うつ状態があると、集中力や意欲が低下して修学が全般的に困難になり、さらに対人関係を避けたり、物事を決断できなくなったりします。深刻な状態の時期に講義や試験が重なった場合、支援を申請して変更・調整を講じてもらうか、あるいは進学や卒業を延期することもあります。また、就職活動をしている時期に不調に陥ると、就職、卒業論文、履修などが予定どおりにこなせず、留年や休学を余儀なくされる場合があります。このような場合、なるべく早急に診断書を提出して休養や休学、あるいは支援つきの試験を受けるなど、具体的な支援を選択することが大切です。
気分障害の配慮例としては以下のようなものが考えられると思います。これらが配慮されているだけで、だいぶ講義を受けやすくなると思います。
- 遅刻や欠席を成績評価に反映させない(うつ状態のときには起きられない/家から出られない場合もあるため)
- 中間試験や期末試験を欠席した場合、可能であるならば再試験を行う(同上)
- レポートなどの提出日の延期を認める(同上)
- 欠席した講義のレジュメなどを渡す(同上)
- 人前でのプレゼンテーションやグループワークなど免除する(ストレス要因を減らす)
- 講義中の水分摂取を許可する(服薬のため)
状況別の配慮事例としては場面一覧にあります。
これから太陽光が増え、精神的な状況が多少はましになる季節です。比較的調子がよいうちに講義において合理的調整をもとめて、生きづらい環境を少しでもマシなものにしていきましょう。