「リフレ」の話はどの段階まで共通認識になったのだろうか?

黒田日銀総裁のインフレ目標およびアメリカのイエレンFRB総裁の就任、さらにはギリシア危機直前のドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁の金融緩和政策ぐらいで、外国為替は金利差に強く影響されるということが地上派のニュースでも当たり前になってきたような気がする(白川日銀総裁時代は金融緩和しても為替に影響しないという論調が地上派のニュースや大手新聞で支配的だったと思う)。また、デフレーション状態では景気はどんどんと悪くなるというのも当たり前になっている感がある(その前は「良いデフレ」という言葉が出回っていた。今もちょっと出回っている)。



2009年に以下のエントリーを書いたけど、今、現在はリフレ話に絡みたいときのチェックポイントはどこまでが共通認識になっているのだろう?
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最初に、私が理解するリフレ政策とは以下の政策。

この小文では、(1)インフレは貨幣(お金)の価値が低下すること、デフレはその逆、(2)デフレでは「ただ何もせずに貨幣を持ち続けている人が強い」、つまり経済が停滞する、(3)リフレ政策とは(元々は)『インフレターゲット+無制限の長期国債買いオペ』を意味する(ただし、無制限の長期国債買いオペはデフレから脱却するまでの限定された期間に実施されるだけ)、(4)デフレから脱却するには「中央銀行に新しい政策ルールを与えてやる必要がある(つまり、日銀法改正を通じた政策レジームの変化)」が必要、以上の4点を解説させていただきました。
Synodos 「二つの悪」の悪い方と戦う ―― リフレーション政策と政策ゲームの変更 矢野浩一 / 応用統計学より)

また、リフレ政策は「昭和恐慌の研究」で「インフレターゲット+無制限の長期国債買いオペ」と定義されましたが、財政政策の併用を妨げるものではありませんし、リフレ派の中には財政政策積極派は少なくありません。
Synodos 「二つの悪」の悪い方と戦う ―― リフレーション政策と政策ゲームの変更 矢野浩一 / 応用統計学より)

黒田日銀総裁がインフレ目標を掲げたことにより、以下の7.3までは現実が進んでいるのだけど(7.2の民主党政権は自民党政権へ変わった)、世の共通認識は8まで進んでいるのだろうか?8の先として、インフレターゲット政策の効果を削ぐので消費税増税は止めろとか需要喚起が必要なので金融政策に合わせて財政政策も行えとか、分かれて言っているのだと思うのだけど共産党や民主党(場合によっては自民党のほとんども)は未だに5の段階で議論がストップしているような。6の議論はバーナンキFRB総裁やドラキECB総裁がやったことで、もう、クリアじゃないんだろうか。

この議論に絡む際のチェックポイント(インフレーション、デフレーション、インフレターゲット政策の定義は岩田規久男:「景気ってなんだろう」にしたがっている)。

  • 1. 現在の日本は好況期と思うか不況期と思うか?
  • 2. 現在の日本はインフレーション(物価が持続的に上がっている状況)なのかデフレーション(物価が持続的に下がっている状況)なのか?
  • 3. 現在の状況が不況期として、不況期から脱するべきか否か?
  • 4. 現在が不況期かつデフレーションであるとして
    • 4.1デフレーションから脱するべきか否か?
    • 4.2 不況期から脱する他の政策とデフレーション脱却は排他的(片方を実施したら片方を実施できない)な政策か否か?
    • 4.3 デフレーション脱却は不況期脱却の一手法であるか否か?
  • 5. デフレーションを脱却するとして
    • 5.1 インフレーションを人為的に起こすことができるか否か?
    • 5.2 インフレーションを人為的に起こすことでデフレーション脱却ができるか否か?
  • 6. インフレーションを人為的に起こすことが出来るとして、
    • 6.1 インフレターゲット政策(消費者物価の上昇率を1年半〜二年半の間に1%〜3%の範囲に維持する金融政策)でインフレーションを起こすことができるか否か?
    • 6.2 インフレターゲット政策でデフレーション脱却ができるか否か?
    • 6.3 インフレターゲット政策で高インフレーションを防げるかどうか?
  • 7. インフレターゲット政策でインフレ率(消費者物価の上昇率)が制御できるとして
    • 7.1 日本においてインフレターゲット政策が実施できるか否か?
    • 7.2 民主党政権においてインフレターゲット政策が実施できるか否か?
    • 7.3 現在の日本銀行幹部たちがインフレターゲット政策が実施できるか否か?
  • 8. 今の日本において、インフレターゲット政策は技術的にどのように実施するのか?

ちゃんと経済学を勉強した人に2016年現在のリフレーション政策は何が論点で、どこまではほとんど合意ができていて、どこから意見がわかれているのかまとめてほしい。

個人的にインフレーターゲットが機能していないのは、日銀と政府をあわせた統合政府がマイルドインフレに対してちゃんとコミットメントできていないからだと思う。期待を変えるためのコミットメントの一環として金融政策や財政政策があるわけなのに、消費を冷やす消費税増税してみたり、福祉削ってみたり、物価あがっていないのに追加緩和しないし。子育てとかも期待を変えさせないといけないのでコミットメントが重要なのだと思うのだけど。