新型うつ(非定型うつ)

Synodos:「新型うつ」は若者のわがままか? 井出草平 / 社会学を読んで、「『新型うつ』ってうつ病の一種なのか」と感心しながら読んでいたのだけど、書いている人の専門が社会学で「?」となった。で、Google先生に尋ねたところ、確かに非定型うつというものがあるらしい。

近年、今までのうつ病とは異なる、新しいタイプのうつ病が増えてきました。従来型のうつ病を「定型うつ病」(メランコリー型うつ病)とすれば、これは「非定型うつ病」(一般的に新型うつ病ともいう)と言われるものです。特に都市部を中心に急増しており、ある報告によれば、全うつ病の30〜40%、または半数近くを占めるのではないかとも言われています。罹患する年齢層で見ても違いがあり、従来型の定型うつ病は40〜50歳代の中高年に多く発症するのに対し、非定型うつ病は20〜30歳代の若い世代に多いのが特徴で、しかも女性に多くみられます。

そもそもこの非定型うつ病が知られるきっかけとなったのは、50数年前の1959年、イギリスの研究者が、それまでうつ病の標準療法として使われていた「三環系抗うつ薬」よりも、「モノアミン酸化酵素阻害薬」(MAOI)の「イプロニアジド」という薬が、あるうつ病患者のグループに劇的に効くことがわかって以来、非定型うつ病という病態の存在が明らかになったと伝えられています。

この非定型うつ病は、従来型のうつ病と比べて、現れる症状が大きく違います。例えば、これまでのうつ病だと、「食欲がない」「眠れない」といった症状はよくあることですが、非定型うつ病になるとその逆で、「過食」とか「過眠」の状態が起こります。また、従来型だと何をするにも憂うつで、意欲も思考力も行動力も低下するのが、非定型になると、好きなこと、例えば趣味や買い物や旅行をしようとすると、人が変わったように、喜々として意欲的になり行動的になります。楽しいことがあると、抑うつ感が消えて急に元気になり、うつ病の人とは思えない状況になるのです。こうした態度や行為の急変が、しばしば周囲の人に誤解を与え、あの人は「気まぐれだ」「わがままだ」と見られがちになったりします。そして、家族や職場の人間関係がぎくしゃくすることもしばしばあることです。また、非定型のうつ病になると、他人からの行為や言葉に対して過剰に反応する拒絶過敏症になり、攻撃的になって、人間関係や社会生活に支障を来たすことがあります。さらに非定型うつ病は、パニック障害などの不安障害を併発しやすいのも特徴です。併発すると、病気が重症化し、慢性的になって治りにくくなります。

〜中略〜

定型うつ病も非定型うつ病も、共に大うつ病ですが、この大うつ病エピソードはDSM-?-TR(アメリカ精神医学会作成)によって診断されます。
姫路 心療内科|前田クリニック 非定型うつ病(新型うつ病)より)

(1984年と2011年のうつ病で医療機関を受診している患者数を比較した表をうけて)
私が「まどろっこしい」表現をしたのには理由があります。というのも、この表の最初のころと現代とでは、うつ病の診断方法が異なるからです。

ときは1980年にさかのぼります。この年に米国精神医学会(American Psychiatric Association)が、精神疾患分類体系「DSM(Diagnostic and Statistical Manual Disordetrs)」の第3版、通称「DSM-III」を発表します。日本語で「精神障害の診断と統計の手引き」と呼ぶこの分類体系は、公式の診断基準として初めて「操作的診断基準」を採用しました。操作的診断とは、平易な言い方をすれば「病気の原因や経過ではなく、現れている症状に着目して診断する方法」で、代表的な症状のうち、一定数以上が認められれば、ある疾患と診断するものです。

DSM-III」は、米国の医学教育での使用を義務付けられ、教科書にも記載されました。また、米国の権威ある医学雑誌がDSMを使用する論文の投稿を求めるようになり、医学研究の世界基準となりました。

DSMは1994年に第4版「DSMーIV」が発表され、非定型うつ病うつ病の下位分類として導入されました。非定型うつ病とは、「楽しいことがあると気分が良くなる」「拒絶や批判に過剰に反応する」などの特徴を持つ、いわゆる「新型うつ」や「ディスチミア型うつ病」などと呼ばれているものです。非定型うつ病うつ病の中に含まれることにより、うつ病の対象範囲が広がりました。なお、DSMは第5版が2013年5月に出版され、日本語版は2014年6月に出版されています。

日本の臨床現場に実際にDSMの影響が出たのは、保険病名をICD-10でコード化して出すようになった1990年代からです。世界保健機関WHOの診断基準「ICD(疾病および関連保険問題の国際統計分類)」は、1990年に発表された「ICD-10」から「DSM-III」スタイルを採用しています。

それまで日本では、ヨーロッパ流の「症状が発生した原因や経緯に着目する」方式を採っていましたが、このときに米国流の「現れている症状に着目する」方式に転換したのです。

簡単に言えば、うつ病と診断される範囲が広がり、軽症うつや、かつてはうつ病と診断されなかった人もうつ病(もしくはうつ状態)と診断され、医療機関を受診するようになったのです。
@IT:なぜ、うつ病は増えたのか (1/3)より)

医療はさっぱりなのだけど以下の論文の序章と結論を読む限り、非定型うつの治療法や分類は今後も動いていきそう。何にせよ、つらい現状がある人がいるので、その治療法が明確になっていくのは良いこと。あと非定型うつのそもそもは若い女性に多いとのことなので、Synodos:「新型うつ」は若者のわがままか? 井出草平 / 社会学にかいてあるとおり、今の「新型うつ」という使い方は若者叩に使われているっぽい。

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