紹介の仕方があまりにも型通りなので反発招いているのだと思うけど、私はそんなに批判されるべきことだと思わない。
当該おにぎり記事
三宅さんの代はもともとマネジャーが1人しかいなかった。掃除など本来なら3〜4人で分担する仕事を全て1人でこなした。きつくて、1年生の時は何度も辞めたいと思った。それでも頑張れたのは「一人という責任感」と、部員たちの笑顔。「おはよう」「荷物持つよ」とか、笑顔で普通に接してくれたことが何よりも心強く、この上なくうれしかった。「独りじゃないと感じました」
新チームから熱を出した1度以外は常に遠征に帯同し、甲子園でも記録員としてベンチに入る三宅さん。同級生の信頼も厚く、捕手守屋は「メッチャ頼りになって感謝の言葉しかないです」。エース金子も「みんなで(三宅さんを)甲子園に連れて行きたかった。有言実行できて最高です」。
(埼玉新聞:<高校野球>記録員は勝利の女神 春日部共栄・三宅麻未マネジャーより)
観客席からナインの行進を見守ったのは、同校で三年生唯一のマネジャー三宅麻未さん(17)。「ずっと憧れの場所だったから、まだ実感がない。見学に来てるみたい」
下級生のマネジャー六人とナインを陰で支える。大変なのは、練習中に食べるおにぎり作り。部員百二十人で、多い時は一日千個。以前はしょうゆを混ぜただけだったが「いつも同じ味だと食が進まない」と塩昆布を入れる細やかな工夫も。
小林慎太郎主将(三年)も「自覚と気遣いがあり、人一倍働いてくれる」と信頼を寄せる。
当初は野球に詳しくなく、入部の理由も「何となく」。だが今は「ヒットを打っても次の選手の力がないと点は入らない。チームワークが高校野球の魅力です」と熱く語る。
埼玉大会に続き、甲子園でもベンチで記録員を務める。「負けた学校の分まで、自分が埼玉のマネジャー代表だと思って戦うつもりです」
(東京新聞:<甲子園だより>春日部共栄 初戦へ気合十分より)
春王者を沈めた力の源はおにぎりだ。肉体強化のため、ナインは練習中に5個以上食べる。三宅麻未マネジャー(3年)は2年間で約2万個を握り、「もうおにぎりは見るのもイヤ!」と笑うほど。その苦労が選手の体重を軒並み5キロ前後増やし、投手陣の球威増と打線の強打連発につなげた。指揮官も「すべておにぎりのおかげですよ、本当に」としみじみ感謝した。
(日刊スポーツ:春日部共栄が春王者撃破 埼玉春夏100勝より)
チーム内で“まみタス”と呼ばれ親しまれる三宅麻未マネジャーは、記録員としてベンチに入った。おにぎり作り集中のため、最難関校受験の選抜クラスから普通クラスに転籍したほどで、「頑張っておにぎりを作ってきたことが報われて、本当にうれしい」と勝利にニッコリ。守屋は「いつも気を使ってくれる。まみタスを日本一の女子マネにしてあげたい」と誓った。
(日刊スポーツ:春日部共栄 おにぎり作り“女神”マネより)
おにぎりの位置づけ
上の記事からするとおにぎりは練習中に食べるものらしい。補食の必要性は以下のとおり。
先にも述べたように今回のプログラムを実施した4人の選手の食事内容、食習慣の調査と、過去に私が栄養指導、トレーニング指導を行った選手たちの例からも、スポーツ選手の食事には共通して次のような傾向が見られます。
- 高たんぱく、高脂肪、低炭水化物食
- 総摂取カロリー不足
- 食品群と食品のかたより
- ビタミン、ミネラル不足
- 短い食事時間
- 食事抜き
〜中略〜
一方、筋肉と肝臓にどれだけ効率よくグリコーゲンを貯えられるかということがスタミナに直結しているため、グリコーゲンのもととなる炭水化物が不足すると明らかにスタミナ不足になります。1日2時間の激しいトレーニングをする場合、消費された筋肉中のグリコーゲンの回復には糖質のカロリー比が70%になるような食事が有効であると認められています。
したがって、スポーツ選手はかなり意識的にご飯、野菜、イモ類、豆類を食事に取りいれていかなければなりません。
(5.スポーツ選手のための栄養プログラム(2)より)
3)補食のとり方
食事をとらずに空腹状態での練習は好ましくありません。トレーニング前にはグリコーゲンの原料である炭水化物を、トレーニング後は、すみやかに炭水化物とたんぱく質をとるようにしましょう。
「空腹で練習しない」、「トレーニング後速やかに栄養補給する」ことが重要です。ただし、トレーニング後の補食は夕食に支障をきたさない程度にしましょう。そのためには、基本的にトレーニング開始2〜3時間前、トレーニング終了後なるべく早くに食事(補食)がとれるようにスケジュールを組み立てましょう
(成長期女性アスリート指導者のためのハンドブック:「9. 栄養」より)
春日部共栄高校の練習時間は15:30〜19:00とのこと。お昼が12:30ぐらいで、練習後に夕ご飯を食べるとなると20:00ぐらいだとすると食事の時間が7時間強空く。その間に3時間半の練習が入るので疲労回復および体作り(筋力強化)のためには補食が必要。その点、おにぎりを練習前か後に食べるのは理にかなっている。
正直、現在の高校野球は根性論を脱して、食事面からの指導もできるようになっているのかと上記の記事を読んで驚いている。余談ながら、春日部共栄の野球部は現代スポーツをやっている感じ。以下の記事からもそれを感じた。
昨秋、市立川越に痛恨の敗戦を喫すると、本多監督はチームに大なたを振るうことを決断した。勝負弱さが払拭(ふっしょく)されるまで、自身はグラウンドに出ないと選手に通告したのだ。
勝負強さが欠けている要因は、チームがひとつになっていないからだと指揮官は見ていた。具体的に言えば、グラウンドでは懸命に個人練習をするものの、それまでの過程が悪かった。授業中に寝る者がいれば、ホームルームが終わって10分以内にグラウンドに出るという約束を徹底できない者もいる。だからあいさつや私生活、言葉遣い、部の伝統を話し合わせ、すべての姿勢を見直させた。
同時に、コーチ陣には「指導にもっと責任を持て」と話した。「いつまでも監督に頼りすぎず、自分のカラーをどんどん子どもたちにぶつけろ」と、自覚を促したのだ。
1カ月半後、本多監督がグラウンドに戻ると、選手たちは自分の意志で行動するように変わっていた。高いレベルを誇る個々がチーム一丸となり、互いのミスをカバーし合おうという意識が生まれていた。
(スポーツナビ:“波乱”埼玉で春日部共栄が勝てた理由 ピンチでも笑顔を忘れず、聖地10勝目へより)
なんでマネージャにおにぎり握らせるのか
記事によると練習ごとに5個おにぎりを食べるとのこと。コンビニおにぎりだと練習ごとに500円強かかる。週休1日なので500円×6日=週3000円。1か月1万2千円が補食代だけでかかる。家庭(選手自身含む)が握ればよいという考えもあるけど、そうすると部員ごとにおにぎり持ってくるか持ってこないかの差が出てしまう。部の方針として補食をとるとしているときに個人(家庭)ごとに任せて差がでるのは困る。となると部で用意するのが目的にかなう。
練習後(あるいは練習前、練習中の休憩時間)にすぐに補食をとりたいということから考えると、練習時間中比較的体が空いているマネージャに握ってもらうというのは合理的な選択だと思う。
Managerなのに管理していなくて雑用ばかりじゃない!
確かに。でも、効率よく練習をするためには誰かが雑用をやらなければいけないのは確かなので名前はどうあれそれを担ってくれる人が必要。
春日部共栄高校のマネージャがやっているかどうかはわからないけれども、たとえば練習の進行を担当する人はどうしても必要。ノックやシートバッティングの本数 or 時間を計測し、それを監督・コーチに伝えたり、フォームや連携状況チェックのためにビデオとったり、休憩時間の管理&水分補給の管理したり誰かがしないと効率よく練習できないことはたくさんある。コーチや監督がそれをやるというのもありだけど、それよりはコーチや監督は選手の動きを良く見て指導した方が効率的。
記事によるとマネージャが掃除も担当しているようだけど、個人的に部室やグラウンドの掃除&整備、練習着の洗濯、用具の準備・管理などの練習前後の雑用は選手自身にやらせた方がモノを大切に扱う姿勢がついて良いと思っている。でも、練習後にミーティングがあったり、個別練習をしたりする事情があるならばしょうがないかもしれない。
「女子+裏方+食事の準備+犠牲=美談」という構図を批判しているのだ!
確かに犠牲を払っていることを持って美談にしあげているのでよろしくない。
チーム内で“まみタス”と呼ばれ親しまれる三宅麻未マネジャーは、記録員としてベンチに入った。おにぎり作り集中のため、最難関校受験の選抜クラスから普通クラスに転籍したほどで、「頑張っておにぎりを作ってきたことが報われて、本当にうれしい」と勝利にニッコリ。守屋は「いつも気を使ってくれる。まみタスを日本一の女子マネにしてあげたい」と誓った。
(日刊スポーツ:春日部共栄 おにぎり作り“女神”マネより)
「犠牲」は確かによくない。でも、その他については運動部におけるスタッフはそういうものなのでしょうがないと思う。そして、選抜クラスから普通クラスに転籍したのはおにぎりづくりのためかは実際のところわからないので(選抜クラスだと3年生時には部活動ができないのかもしれない)、これを持って誰かを批判するのはちょっといきすぎだと思う。
追記:おにぎり+マネージャ関連エントリー
野球部のマネジャー、大坂宙幹(ひろき)さん(2年)と颯田(さった)千尋さん(同)が、しゃもじ大盛り2すくい分のご飯をラップに包み、手際良く握っていく。ゴールデンウイーク明けから、夕方、選手28人分のおにぎりを作るのが2人の日課になっている。
春季大会は、地区予選で敗退した。相手チームと比べ体が小さく、体力不足で集中力も続かなかった。選手たちの間で「体を作らなければ勝てない」という意識が芽生えた。「運動後、30分以内の栄養補給が効果的」と聞き、話し合った末に行き着いたのが練習後のおにぎりだった。
大坂さんと颯田さんは、塩むすびからスタートし、20回近く試行錯誤を重ねた。ケチャップを入れた「チキンライス風」の味付けを試したこともある。結果的に、16〜17合分の米と水に、だしのもと大さじ2杯としょうゆ250ミリリットル、塩大さじ2杯を加える「炊き込みご飯風」が最も食が進むと分かった。衛生面を配慮し、炊きたてを素早く握るため「熱くて大変」と口をそろえる。
大坂さんは付属中の軟式野球部で主に二塁手としてプレーしていたが、通学に1時間半以上かかり、やむなく高校からマネジャーに転向した。「自分が選手でもきっと、ほかほかのおにぎりを食べられたらうれしいはず」
颯田さんは、1年まで所属していた空手部が廃部となり、途方に暮れていた時に誘われて入部を決意した。「最初は不安もあったけど、みんながあたたかく迎えてくれた」。感謝の気持ちを込めて握っているという。