子宮頸がんワクチンと線維筋痛症

子宮頸(けい)がんワクチン接種後に継続的な痛みなどを訴える人が相次ぎ、国が接種の推奨を中止している問題をめぐり、12日に名古屋市で開かれた日本小児科学会学術集会で、子宮頸がんワクチン接種後に痛みを訴えた10代の女性2人が、全身に痛みの出る「線維筋痛症」と診断されていたことが報告された。発表者はワクチンの副作用の疑いが強いとみている。

〜中略〜

集会で説明した札幌北辰病院小児科の木澤敏毅・医長によると、2012年に胸の痛みや両足のしびれ、握力低下を訴え来院した女児(11)は、痛みの基準などから線維筋痛症と診断された。しかし、薬が効かず、母親からの聞き取りで子宮頸がんワクチン接種後に症状が始まっていたことがわかった。翌年の再接種後に症状が悪化しており、ワクチンとの関連性が強く疑われるという。

朝日新聞:全身の痛みは線維筋痛症 子宮頸がんワクチン副作用かより)

線維筋痛症とは。

線維筋痛症 (FM)は関節、筋肉、腱など身体の広範な部位に慢性の「痛み」と「こわばり」を主症状とし、身体の明確な部位に圧痛を認める以外、診察所見ならびに一般的な臨床検査成績に異常がなく、治療抵抗性であり、強い疲労・倦怠感、眼や口の乾燥感、不眠や抑うつ気分など多彩な身体的訴えがみられ、中年以降の女性に好発する原因不明のリウマチ類似の病気です。

線維筋痛症は新興疾患ではなく、古くから同様の病気の存在は知られており、心因性リウマチ、非関節性リウマチ、軟部組織性リウマチ、結合組織炎、あるいは結合組織炎症候群などで呼ばれていましたが、1990年アメリカリウマチ学会による病気の概念と定義、分類(診断)基準が提案され、線維筋痛症あるいは線維筋痛症候群が一般的となりました。一方、我が国では数年前までは国民のみならず医療者間でもこの病気に対する認知が極めて低いことが問題でした。しかし、最近急速にこの病気に対する認知度が医療者間で高まってきましたが、診療を避ける医師が多いことが大きな問題となっています。

公益財団法人日本リウマチ財団:1. 線維筋痛症とは?(疾患概念・定義) より)

性差は圧倒的に女性が優位であり、わが国では男:女=1:5(欧米1:8〜9)です。平均年齢は51.5±16.9(11〜84)歳で、年齢とともに増加し、55〜65歳代にピークを認めます。小児は全体の4.1%にみられ、12%が65歳の高齢者が占めるとされています。また、発病年齢の平均は43.8±16.3(11〜77)歳です。
公益財団法人日本リウマチ財団:3.この病気はどのような人に多いのですか?( 性別、年齢分布 ) より)

全身や広範囲が痛み、またある部分だけが痛むことがあります。
その痛みは軽度のものから激痛まであり、耐え難い痛みであることが多いです。痛みの部位が移動したり、天候によって痛みの強さが変わったりすることもあります。痛みが強いと日常生活に支障をきたすことが多く、重症化すると、軽微の刺激(爪や髪への刺激、温度・湿度の変化、音など)で激痛がはしり、自力での生活は困難になりますが、重症化する前に早めに受診して対策することが必要です。
随伴症状として、こわばり感、倦怠感、疲労感、睡眠障害抑うつ、自律神経失調、頭痛、過敏性腸炎、微熱、ドライアイ、記憶障害、集中力欠如、レストレスレッグス症候群などが伴う事もあり、症状は個人差があります。
中には、リウマチや他の膠原病を併発している場合もあります。
痛みによって不眠となりストレスが溜まり、それがまた痛みを増強させる場合もあると考えられています。
死に至る病ではありません。
線維筋痛症は男性よりも女性に多く、中高年の方に多い病気です。そのため自律神経失調症更年期障害不定愁訴などど他の病気と診断されることも少なくありません。
現在人口の1.66%、約200万人の患者がいるのではないかと疫学的に発表されています。
線維筋痛症友の会 JFSA:線維筋痛症とはより)

病因は?

これまでさまざまな検討が行われてきましたが、線維筋痛症の原因は現状では明らかではありません。疼痛を訴える部位(関節、筋肉、腱、内臓など)には明らかな異常が見いだせず、この病気の疼痛は帯状疱疹後の神経痛、糖尿病性神経障害時の疼痛やがん性疼痛のような神経障害性(痛み情報を伝達する神経経路の障害)疼痛であり、また脳における痛みの情報の処理に障害のある中枢性疼痛です。この病気の痛みの仕組みとして最近注目されているのは、この病気発病の素因をもった人に各種身体的、精神的ストレス反応が加わることによって、痛み刺激の伝達路(疼痛知覚神経)の過剰興奮(車のアクセルの踏み込み状態)と痛みを脳が認識した時に反応する痛みを抑える経路(下行疼痛抑制経路)の機能不全(車のブレーキが効かない状態)であり、いわば車のアクセルが踏み込まれ、ブレーキの効かない暴走状態です。したがって、治療もアクセルを戻す(痛み神経の過剰興奮を抑える)薬剤やブレーキ機能を高める(下行性疼痛抑制系の賦活)薬剤が使用されます。

公益財団法人日本リウマチ財団5.この病気の原因はわかっているのですか?(病因)より)

原因はまだ未解明ですが、中枢神経の異常によって痛みの回路が変わり痛みを増幅させているのではないかと考えられているようです。
また、肉体的・精神的ストレスや事故、手術等が引き金となって発症するのではないかとも言われています。
線維筋痛症友の会 JFSA:線維筋痛症とはより)

前に子宮頚癌ワクチンの副反応の記事リンクを作ったときに子宮頚癌ワクチンの予防接種は非常に痛いという話を見つけたので、その事実と上記の発症仮説、および今回の報告は結構整合的なのではないかと思う。