いきいき研究室コミュニケーション, 人工知能, 2014年1月号 pp. 72 - 77.

いきいき研究室増産プロジェクトの活動報告が巷で話題の人工知能学会学会誌「人工知能」1月号に載っていた。

pp. 74 - 76に紹介されているケーススタディ「研究室がうまくいかないのは誰のせい?」は実際にやってみて非常によくできたものだと思ったのでお勧め。以下、やってみたときの感想。

ある研究室において、M2の昌子さんが研究がうまくいかなくなった経緯について書かれたA4用紙2枚程度のケースを読み、それを元に誰にどういう責任があるのか、そして、何をどうすればうまくいくのかを6人ほどのメンバーで話し合おうというものだった。

これが非常にうまくできていた。

第一に、このケースが非常にリアリティーがあって良く出来ていた。登場人物は、修士2年の昌子、同級生の男子学生、博士1年生の男子学生、助教、そして教授の計6名。誰もがそれぞれの自分の理由で振舞っており、悪意を持って振舞っている人は誰もいないという状況。

第二に、議論を行うメンバーについてPI、助教ポスドク、学生の3種類の立場の人が少なくとも1人ずつ割り振っているということ。これにより、それぞれの立場より多様性のある意見が交換できる。

第三に、議論をうまく制御していたこと。意見の交換を以下のステップで行われた。

  1. まず、個人ごとに昌子の研究がうまく行かなかった件について上記の6名を責任が重い順に順位付ける
  2. 全員が順位をつけ終わった後に、それぞれがそうした理由を他のメンバーに説明していく
  3. 上記6名に対して、何が悪いのかについて列挙し、意見の交換を行う
  4. 上記6名に対して、何を変えたら現状を変えられるのかを列挙し、意見の交換を行う

このように、個々人でまず自分の考えを決めてから、他の人にその考えを説明するという順番で進むので、誰かおしゃべりな人がしゃべり続けるという事態を回避できる。また、誰が悪いのかで終わらせず、どうやったら解決できるのかを考えさせるため、それぞれの立場から前向きな考えを得ることができ、参加者にとって有意義になる

ぜひ、このケーススタディのやり方がより洗練されて、どの大学でも行われる授業になると良いと思う。
いきいき研究室増産プロジェクトFORUM2011より)

上記の昌子さんのケースは「研究室がうまくいかないのは誰のせい?」のケース(PDF)で公開されている。学会誌 p. 75に掲載されているワークショップのプログラム構成は以下のとおり。

実施時間 ワーク内容
15分 導入プレゼンテーション
10分 個人ワーク1 (教材を読み原因分析)
40分 グループワーク(意見の共有・議論)
20分 個人ワーク2 (解決策を考える)
10分 グループワーク2 (解決策の共有・議論)
10分 全体共有
20分 振り返り・まとめ