テクニカル・ライティング(技術文書作成法)ついでに、報告書(卒業論文、修士論文含む)作成者は「パラレリズム(Parallelism)」について注意してほしい。
- ja.wikipedia:パラレリズム
- 図解の本質はここにあった ITエンジニアにも必要な国語力:
パラレリズムとはどういうものかというと
同じものは同じように書く
特別にライティングの勉強でもしない限り、パラレリズムという単語を知る機会は少ないだろう。しかしパラレリズムそのものは、別に難しい理屈の必要な概念ではない。要するに、2つ以上のことを対比や列挙して書くときには、文章のうえでもその関係が明確になるように形式を統一しろということだ。
(第6回 微妙な違いを読み解く――パラレリズムより)
シンプルなだけにこれを守るのは案外難しい。でも、これを守ると読みやすい文章になるとともに、報告書作成時に説明の抜け落ちが少なくなる。ひとつ前のエントリーで引用した きしだのはてな:文章に向いてない構造をいかに文章に向いた構造に直列化するかが大事で推奨されている説明したいことのツリー構造化をきちんと行うと、ほぼ自動的にパラレリズムを守ることができる。というのは、ツリー構造において、同じ親ノードを持つノード(節)群は、同じ詳細度・抽象度の事柄でなければならない。あるノードが別のノードの詳細説明や具体説明、構成要素であったりしてはいけない。パラレリズムでいう「同じもの」というのは、「同じ詳細度・抽象度のもの」という意味でもある。
報告書において、パラレリズムを典型的に守らなければいけない個所は以下のとおり
- 章、節の構成
- 同じ詳細度・抽象度の文章の塊を章にしなければいけない。章と同じ詳細度・抽象度の節、小節を作ってはいけない。
- ある章、節、小節はそれぞれ2つ以上(2章以上、2節以上、2小節以上)でなければいけない。同じ詳細度・抽象度の事柄が存在しないならば、新たに章、節、小節を設ける必要はない(パラレルに説明する必要がないため)
- 段落(パラグラフ)
- 報告書の場合は、段落も、英語文ライティングのルールにのっとってパラグラフとして書く方が読み手にとって読みやすい
- パラグラフは1トピック(話題)を説明する文章であるため、ある章、節、小節におけるパラグラフ群はパラレリズムのルールを満たす必要がある。つまり、あるパラグラフは別のパラグラフの詳細説明、具体例、構成要素であってはならない。
- 同じ種類の事柄を説明するパラグラフは同じ形式、論の進め方になっているべきである。途中で説明の仕方を変えてはいけない。
- 箇条書き
- 箇条書きは典型的にパラレリズムの考えに従って書かれなければならない。同じ詳細度・抽象度の事柄をパラレルに説明したいから箇条書きを使うのが一般的。箇条書きで列挙されている項目は、互いに独立でなければいけない(ある項目が別の項目の詳細説明、具体説明、構成要素であってはいけない)
- 番号付き箇条書きであっても、項目は互いに独立でなければならない(順序の依存関係は合ってよい)
- 「〜と…」、「〜または…」、「 〜 and …」、「〜 or …」
上記の事柄についてパラレリズムを気にするようになると、文章を書く前段階として、話したいことのツリー構造化を行いたくなる(考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則とかが典型的)。ツリー構造で話したいことを整理すると、説明し忘れや、説明したいこと間の詳細度・抽象度の混乱が目に見えるようになる。結果として、説明しなければならないことや検討しなければならないことについての網羅性について担保されるようになる。
パラレリズムに関する訓練は、第6回 微妙な違いを読み解く――パラレリズムで提案されている、表に書き直してみるというのがとても良い方法だと思う。また、ツリー構造で話したいことを整理してみるのも有用だと思う。たとえば、私は iPadならばiThoughtHD、PCなら、FreeMindを使って、マインドマップを書いている。マインドマップ本家のザ・マインドマップは、自己発見の道具として紹介しているので私は好きではないけど、自分の頭の中を書き出しながら整理する道具として使うと非常に有用だと思う。特に、この用途で使う場合は、紙とペンよりも電子ツールの方が修正しやすいので良いと思う。頭の中の単語を書きだしながら、他の単語と関連付けし、時には関連付けを変え、時には複数の単語を統括する上位の概念を追加していくと、説明したいことのツリー構造化がうまくできると思う(個人的な経験だけれども)。
このエントリーの最後はポリリズムの替え歌で締めようと思ったけど、思い浮かばないので割愛。例のサビのリズムでご唱和ください。「パラレリズム、パラレリズム、パラレリズム、パラレリズム、パラレリズム」。