「うつっぽ」は自発的なセルフチェック促進ツールを目指すのはいかが?

動機は素敵だけど手段としていまいちでは?:うつ通知サービス“うつっぽ”うつっぽ改善案とずっと絡み続けて恐縮ですが、またうつっぽについて。

さまざまな意見を踏まえた上で「うつっぽ」の改善についてのコメントがでました。現在はうつっぽの主たる目的であるメール送信機能も停止しています。

私がうつっぽ改善案で書いた意見も取り入れてもらい、エントリーにしたかいがあったと思うのですが、メインコンセプトの「匿名メール送信」を止めるほどの決意があるならば、もっと、根本的にサービスを変えてしまえばよいと思います。今のコンセプトの一番の問題は、うつっぽいかもと感じている本人の同意を得ることなく、他者が「うつっぽ」に該当者へのサービス提供を依頼するという点にあることです。私の先の提案はこのコンセプトが変わらないという前提での提案であり、正直なところ小手先の改善案でした。

ですが、「うつっぽいかもと感じている本人の同意を得ることなく、他者が『うつっぽ』に該当者へのサービス提供を依頼する」というコンセプトを変えても別に良いというのであれば、話は別です。今、想定している「うつっぽいと感じる人」よりも、もっと手前の人が対象になってしまうかもしれませんが、「(FacebookTwitter)上の知人が『うつっぽ』のセルフチェックを使っているのを見聞きして、自分もちょっとチェックしてみようかな」と思わせることをコンセプトにすれば、一番の問題点は解決します(もちろん、効果も下がります)。

目的が「自殺の最大要因であるうつ病を予防する」ですので、残酷な発想ですが、間接的な提案ではなく、直接的提案が必要と思われる人はサービスの対象から外すのは目的とも合致していると思います。実際、「うつっぽ」のトップページには以下のようにあります。

うつっぽメールを送る対象は、「がんばりすぎていて心配な人」であり、既にうつ病の方は対象としておりません。

K6を定期的に利用してセルフチェックをする職場・友人関係であると知らしめるために「うつっぽ」を使う

「うつっぽ」で使われているセルフチェックのK6という問診票は、ちゃんと効果がある問診票のようです。ただ、これはスクリーニングのための問診票なので「本当は特に調子が悪くないけど、調子が悪いという結果がでる」という点に厳しいものじゃないはずです(そうじゃないとスクリーニングにつかえない)。

なので、これを「自分がうつ病かどうかの判定に使う」のは想定外の使い方で、「うつっぽ」の目的にあるように次の段階(二次スクリーニング)に進むのが良いわけです。なので、これは職場や学校の健康診断的な使い方をされた方が、そもそもの目的にあっているわけです。

予防という観点からすれば、職場の同僚の多くが、定期的にK6を用いてセルフチェックし、自分の状態を確認しているという職場が増えることはとても良いことです。また、ちょっと「精神状態悪いな」と思っている人にとって、職場が「定期的にK6を用いてセルフチェックし、自分の状態を確認している」という意識の高さを持っているということは心強いのではないかと思います。

どうやって「職場や友人が定期的にK6を用いてセルフチェックし、自分の状態を確認している」という状況を広めるか

  1. TwitterおよびFacebookと連動し、サービス利用者がK6でセルフチェックしたという事実をフォローワーや友人に広める
  2. サービス利用者のメールアドレス、Twitterアカウント、Facebookアカウントを管理して、1か月に一度「セルフチェックの注意喚起メッセージ」を送る
  3. K6でセルフチェックし、陽性になった後の体験談(どう対応したのか)を投稿してもらい、閲覧できるようにしておく(U2Plusの宣伝混ぜるのもよいと思う)
  4. サービス利用の対価として、定期的(1か月に1度か2週間に1度)に宣伝ツイートを流させてもらう。内容は自覚しやすい注意症状(「急に朝起きられない」とか「寝れない」とか)をが起こっていないかを訪ねる質問文とK6セルフチェックへのリンク。これをRTや「いいね」してもらうことで、フォローワーや友人の目に入ることを期待する

Twitterではやり続けている診断メーカーをまねたらよいと思います。診断結果がフォローワーのTLに流れるので、「あの人がK6を使ってセルフチェックした」という事実を広めることができます。診断結果自体を流すかどうかは要検討ですが、自分の知り合いがセルフチェックをしているのを見れば「そんなこと調べてしまう私はもう…」という心理的障壁が減ると思います。

また、定期的に(1か月に1度が良いとおもいますが)セルフチェックを促すメールを送るべきです。K6は最近の調子を見るスクリーニングテストであるそうなので、1度やれば十分というわけではないです。1か月間の履歴を表示してあげると、自己管理に便利だと思います。

そして、K6で陽性になった後のケアを充実させるべきだと思います。一番良いのは、自分のブログ、TwitterFacebookにどう対応したのかを書いて公開してもらうことです。たとえば、「上司や同僚と相談して、ちょっと仕事の量減らした」「早く帰って、睡眠を多くとるようにした」「産業医に相談した」など。「陽性=終わり」でなく、「陽性=ちょっと行動変化させる」という認識を定着できれば、素晴らしいと思います。理想ははかるだけダイエットiPhoneアプリ:計るだけダイエット)や早起き生活のように、行動変化のきっかけとなれるようにするのが良いと思います。ただし、K6のチェックは毎日してもしょうがないでしょうから、1か月に1度ぐらいの頻度でやってもらうようにするのが良いかと。

最後にどうやって、本当にセルフチェックをしてほしい人の注意を引くかですが、やはり調子悪いときは何らかの違和感を覚えているはずです。ですが、「これぐらい大したことないや」と思って見ないふりをしているのだとおもいます。精神的な話ではないですが、私も、昨年の春先に体調崩して病院通いするはめになったときに、振り返ってみると違和感自体はもっと前から感じていたのですが「まあ、日常生活おくれるし問題ないだろう」と見ないふりをしていて、ある日、見過ごせないレベルまで行ってしまい「やばい、病院いこう」となったのでした。多くの人にとって、違和感ぐらいをベースに病院行ったり、誰かと相談したり、自分の生活様式を変えるのはなかなか難しいと思います。ですから、病院行ったり、誰かと相談したり、自分の生活様式を変えるぐらいの根拠を違和感に与えてやるのはとても重要だと思います。

違和感を覚えている人に、うつっぽの「身近にこんな様子をした人はいませんか?」という自覚可能な事柄を質問の形で目に入るようにすれば、違和感を行動に移すためのエネルギーが与えられると思います。その上、セルフチェックは周囲の人もやっていると感じていれば、セルフチェックする敷居も下がるのではないかと思います。

そして、「K6でセルフチェックしているかどうか」を相談して良いのかの判断基準として、陽性がでたときの相談相手として選択することも可能かと思います。

おわりに

以上、「うつっぽいかもと感じている本人の同意を得ることなく、他者が『うつっぽ』に該当者へのサービス提供を依頼する」というコンセプトを変更するという前提で提案を書いてみました。