理数系の技術者は求められているのか余っているのか?〜アメリカの話

FlipboardでOfficial ACMのツイートしている記事を眺めていたら、自分の分野の話のせいか面白くて小一時間読みふけってしまった。で、何が面白かったのかというと「アメリカも日本と同じでいろいろ雇用問題抱えているんだなぁ」ということ。

Community Colleges Should Urge Women to Pursue Science and Math Careers, Report Saysによると、貧困層の女性による科学(Science)、技術(Technology)、工学(engineering)、数学(Mathematics)の分野の学位取得が減っているという話。この4分野をSTEM分野というらしい。日本ならば理工系や理数系というところ。STEM分野は、高収入が期待される分野であり、かつ、2008年から2018年にかけてこの分野の雇用者数は10%増えることが見込まれているとのこと(すなわち成長分野である)。

STEM分野に進んだ場合と進まなかった場合の給与の違いは次のとおり。

In 2009, women in non-STEM careers had median annual earnings of $35,633, the report says. In certain STEM fields, those median earnings ranged from $41,091 (for engineering technicians) to $71,944 (for electrical and electronics engineers).

非STEM分野ならば年収$35,633 (1ドル100円として、356万円ぐらい)、あるSTEM分野に就職すると中間的な給与で年収$41,091(410万円)から$71,944(719万円)が見込まれるとのこと。

これを読んで「なるほど、アメリカでも理数離れ&貧困層女子問題があるんだ。でも、理数系に進むと未来が明るいんだな」と思っていたところ、この楽観を打ち砕く記事が。

Science-and-engineering workforce has stalled in U.S., report saysという記事。内容は、科学・工学の雇用は頭打ちになっているのでは?というもの。科学・工学の分野は国を牽引する分野と言われ、成長分野と言われているけど実際のところこの10年でアメリカの全労働者の5%という値をずっと示している。しかも、この2年間は5%を下回っている。一方で、時給は上がっている。なので、需要が崩れた時に一気になりたたなくなるのでは?そして、実は成長分野じゃないのでは?という話になっている。もちろん、一つ上のSTEM分野とまるごと一致しているわけではないかもしれないけど、アレアレという話。

そして、H-1B workers are better paid, more educated, study findsという記事。H-1Bというのは専門家ビザらしい。内容は、H-1Bビザを持っている労働者の方が、米国民の労働者よりも給料高いし、若いという話。H-1Bビザの持ち主を受け入れることで、国内の産業が活発化するっていってたけど、米国民のシェアを奪っちゃっているんじゃない?という内容になっている。1つ上の記事と合わせて、雇用の枠が増えていないのに、さらにそれが外国人にとられてしまっている可能性があるので、さらにアレアレ?という感じになる。

日本も「日本人学生はダメだ!優秀な留学生に仕事がとられる」と言っているけど、同じようにアメリカもそういっているんだなという雰囲気があり、ホッとしてはいけないけどホッとした。でも、あんなにITが強いアメリカでこの状況ならば、日本のITはどうなのとも思ってしまう。

で、別の記事としてDigital skills shortage leaves EU youth a step behind。ヨーロッパの若年層が雇用に必要となるITスキルを身に着けていないことに危機感を覚えているという話。ゲームやスマートフォンなどには習熟した「デジタルネイティブ」ではあるけど、あくまでもゲームやスマートフォンの利用者としての「デジタルネイティブ」であるので、職に就けない若年層のITスキルが低いよとのこと。

最初の記事と合わせて、政府レベルではSTEM分野(コンピュータ含む)が成長分野であるという認識(期待)があり、その分野の人材が減ることに危機感を覚えているものの、労働市場ではSTEM分野の人材が求められていないため、一方でSTEM分野の学位をとったものたちが職にあぶれ、一方でSTEM分野に進まなかったものたちも職にあぶれ、どっちにせよSTEM分野だめじゃない?という雰囲気になっているような気がした。

以上、雑感でした。

余談として、斜め読みなので誤解しているのかもしれないけど、To Detect Cheating in Chess, a Professor Builds a Better Programの記事がいろいろな意味で面白かった。内容は、チェスの不正を見ぬくプログラムを開発しており、結構できるようになってきているよというもの。面白いと思った理由は、第一にNewYorkTimesはこういうのを記事にしているということ。第二にチェスの試合の不正用途にコンピュータ持ち込んで次の手を探すということやっているということ(トイレに持ち込んでいたらしい)。第三にチェスで不正をしているということを棋譜から証明しようと考えて、実際にやり、かつ、うまくいく目星がたちつつあるということ。

上のちょっと暗い気分になる記事の一方で、楽しい記事があるというのもOfficial ACMは目利きがいいなと思った。