想定読者
日本語ができる研究室に属している修士課程、博士課程の留学生。このエントリーの日本語が理解できない場合には、同じ研究室の日本人学生に説明を頼んでみてください。
まとめ
- 日本語(英語)ができないことを恥かしく思わない
- 簡単な日本語(英語)を使ってもらえるようお願いする
- ミーティングの際には以下をかならず持ち込む
- 録音機
- 辞書
- コピー用紙の裏紙&ペン
- ミーティングの前に説明したいことを紙にまとめておく
- 「わからない」ことをどうにかする
- 完全に理解できたときだけ「はい」「わかりました」を言う
- わからないときは別の表現で説明してもらう
- 図をたくさん描いてもらう
- ミーティングの後にミーティングのまとめをメールで送る
- ミーティングに参加したほかの留学生、同級生と内容の確認をする
- ミーティングしてくれたことに対してお礼を言う
はじめに
私は、工学部の計算機科学/情報工学系の学科に勤務している助教です。ですので、このエントリーは、この分野に特化したものであるかもしれません。ぜひ、自分の先生や先輩にこのエントリーの内容は、あなたの分野で役に立つものであるかどうかを確認してください。
なお、日本の大学では大学の先生の種類は以下のようになっています。
- 教授(professor):研究室を運営しています
- 准教授(associate professor):小講座制では教授の下で研究室運営を手伝っています。大講座制では研究室を運営しています。
- 助教(assistant professor):教授の下で研究室運営を手伝っています。
- 助手(research associator):教授の下で研究室運営を手伝っています。
先生や先輩とのミーティングの目的は何か?
ミーティングの目的は、先生や先輩に怒られるためではありません。ミーティングはあなたが順調に修了(卒業)するために助言を得るためのものです。ですから、嘘をつくのが一番良くないことです。
正直に自分の状況を説明して、先生や先輩から良い助言をもらいましょう。
日本語がわからないことを相手に伝えよう
日本のほとんどの大学では、先生や先輩と日本語か英語で会話することになると思います。多くの大学では日本語で会話することになるでしょう。
あなたが、日本語検定1級を持っていたとしても、日本人が普通の速さで話したならば、あなたは相手が何をしゃべっているのかわからないと思います。
ですが、それは当然です。あなたの国では日本語は使われていないのです。日本人もあなたの国に行ったときにあなたの国の言葉をあなたと同じように話せないはずです。ですから、日本に留学しているあなたが日本語をうまく話せない、日本語をうまく聞けないのは当たり前です。恥かしく思うことはありません。
ただし、あなたが日本の大学院で何かを身につけようと思っているならば、日本語がわからないということをどうにかしないといけません。
まずは、あなたの大学で日本語の学習講座が開講されているならば、それに参加しましょう。また、テレビを良く見ましょう。アニメが好きならばアニメを、日本の歌手が好きならば歌番組を、ドラマが好きならばドラマを見ましょう。また、朝のニュースを見ましょう。
次に先生や先輩に以下をお願いしましょう。
日本語を理解するように努力しよう
あなたが日本語をうまく理解できないのは当然です。ですから、相手にゆっくりと話してもらうようにお願いするのは失礼なことではありません。
しかし、あなたも日本語を理解するように努力しなければいけません。ですから、ミーティングの際には必ず以下のものを用意しましょう。
- 録音機(録音機能がある携帯電話・スマートフォンでも良い)
- 辞書(電子辞書の方が検索が早いので良い)
- コピー用紙の裏紙&ペン(必ずメモをとりながら聞きましょう)
一度では理解できないことも、何度も聞くうちに理解できることがあります。ですから、かならずミーティングに録音機を持っていて、ミーティングの内容を録音しましょう。録音する場合にはミーティングの始めに「録音してよろしいですか?」と必ず尋ねましょう。
最近の携帯電話やiPhone、Android携帯には録音機能が付いていることが多いです。iPodなどにも録音機能がありますのでそれを使いましょう。
また、辞書を用意しておきましょう。わからない言葉があったら「少し、お時間を頂いてよいですか?」と尋ねて、辞書で調べましょう。すくなくとも、そのわからない言葉をメモしておきましょう。
そして、必ずメモをとりましょう。ノートでもよいのですが、プリントの裏紙などを利用すると相手に絵を描いてもらったり、英語の単語を書いてもらったりできます。私は、100円ショップなどでクリップボード(こんなの)を購入し、これにコピーの裏紙を挟んでメモ帳代わりにしています。
自分の説明したいことを紙にまとめておこう
話すことに比べて、書くことは時間をかければ簡単です。ミーティングの前に自分が説明したいことを紙にまとめておきましょう。進捗報告であるならば以下をまとめておくと、うまく離せなくても必要なことはすべて報告できます。
- 前回指摘/助言された点についての対応について報告
- 前回報告時の作業計画
- 前回の報告から今回の報告までに行った作業の一覧
- 各作業の報告
- 各作業の概要(何を行ったのか?what)
- 作業の目的(なぜこの作業を行う必要があるのか、why)
- (必要に応じて)作業の具体的内容(どうやって行ったのか?How)
- 結果と評価(得られた結果は何で、目的をどの程度達成できたのか)
- (もしあれば)トラブル、疑問、相談したい点
- (1ヶ月に1度くらい)中期目的あるいは最終目的に今回の報告まででどの程度近づけたのかについて報告
- 次回報告時までの作業計画
- トラブル、疑問、相談したい点の列挙
日本語で説明したいことをまとめたならば、ミーティングに参加している人の数だけ印刷して配りましょう。
時間がない場合は、必ず伝えたいことを自分の国の言葉でまとめておくのでも十分役に立ちます。日本語で説明しなければならないと思うととても緊張します。ですから、緊張したときでも自分が何を先生や先輩に伝えたいのかをミーティング前にメモしておくのは重要です。
ミーティング中の「わからない」をどうにかする
ミーティングにおいて1番重要なことは「わかった」「わからない」をはっきりと相手に伝えることです。
場所によって会話のやり方は異なります。あなたの国の会話の仕方と日本の会話の仕方が異なっている可能性があります。ですので、言葉や身振りではっきりと「わかった」「わかっていない」を伝える必要があります。
特に、あなたは日本語がよく理解できません。先生や先輩は怖い/偉いので、相手が何を言っているのかわからなくても「わかりました」と言いたくなるかもしれません。でも、絶対に「わかりました」と言ってはいけません。相手が怒ったり、うんざりしていたとしても、あなたがわかるまで繰り返し説明してもらいましょう。
もし、相手の説明がわからないときには次の方法でもう一度説明してもらいましょう。
- 「別の表現で説明してもらえませんか?」
- 「図で説明してもらえませんか?」
- 「数式で説明してもらえませんか?」
留学生のみなさんにとって、重要なことは「わからない」を「わかった」とごまかさないことです。先生も先輩もあなたが日本語が苦手なことは理解しているので、「わからない」といっても失礼ではありません。遠慮なく「わからない」といいましょう。
ただし、ほとんどの場合、あなたが「わからない」のは日本語が原因ではありません。専門知識や研究のやり方がわかっていないのが原因です。その場合には、先生や先輩に専門知識や研究のやり方を勉強できる本やWebサイトを教えてもらい、次のミーティングまで勉強しましょう。
ミーティングの内容について確認をしよう
あなたは日本語が苦手であるため、ミーティングの内容を60%くらいしか理解できていないと思います。必ず、ミーティングの内容について確認をとりましょう。
一番良い方法は、ミーティングに参加した先生や先輩にメールでミーティングの内容を送ることです。あなたにとっては日本語の練習になります。先生や先輩にとっては、あなたの理解度を確認することができます。
メールを送るときには次を注意してください。
- 日本語フォントだけを使う
- テキストメールで書く(GmailやHotmailなどを使う場合には特に気をつけてください)
- メールの本文に書けることはすべてメール内に書く(添付ファイルをできるだけ使わない)
- メールを書き終わったら必ず2回は見直す
また、メールを送る前にミーティングに参加している他の留学生や同級生にミーティングの内容を確認しておくのはとても良い習慣です。
ミーティングしてくれたことにお礼を言おう
ミーティングの最後には必ずミーティングしてくれたことについてお礼を言いましょう。たとえ、ミーティング中にとても怒られたとしても、必ずお礼を言いましょう。
また、メールでミーティングのまとめを送るときにもミーティングをしてくれたことにお礼を言いましょう。
あなたがちゃんとお礼をすることで、先生や先輩は次回もミーティングの機会を作ってくれるはずです。
おわりに
たぶん、あなたの国の大学には卒業研究という制度がありません。ですから、あなたは修士課程・博士課程で初めて研究を行うことになります。研究と勉強は異なります。勉強が得意だったあなたにとって、研究はわからないことばかりだと思います。
あなたにとって、先生や先輩とのミーティングは、研究とは何かを学ぶ一番の機会です。この機会を「先生や先輩に叱られるから嫌い」「日本語がわからないから嫌い」と思い、うまく利用できなければ、あなたが日本の大学院に留学してきた意味はなくなります。
ぜひ、先生や先輩とのミーティングをうまく利用して、有意義な留学経験を作ってください。
おまけ
日本人向けにいくつか記事を書いていますので、同じ研究室の日本人留学生に説明してもらってください。