調査結果や測定結果に誤差や偏り(バイアス)があるというのを理解する

先に結論

  • 完全に正確な調査結果や測定結果というものは存在しないことを理解する
  • 誤差や偏り(バイアス)が含まれるのが当然
  • だからこそ、どのように調査/測定したのか、あらかじめ予想される誤差やバイアスは何のかを明らかにされていることが重要

文科省厚労省の調査結果はウソ?

調査方法

全国の大学、短期大学、高等専門学校専修学校の中から、設置者・地域の別等を考慮して抽出した112校についての調査。調査校の内訳は、国立大学21校、公立大学3校、私立大学38校、短期大学20校、高等専門学校10校、専修学校20校。

調査対象人員は、6,250人(大学、短期大学、高等専門学校併せて5,690人、専修学校560人)。

各大学等において、所定の調査対象学生を抽出した後、電話・面接等の方法により、性別、就職希望の有無、内定状況等につき調査。なお、内定率とは、就職希望者に占める内定取得者の割合。

あんまり調査方法が詳しく書いていないので良くないのだけど、全数調査でないことは分かる。

57・6%。先日、文部科学省厚生労働省から来春卒業予定の大学生の就職内定率(10月1日時点)が発表された。1996年の調査開始以来、“最悪”の数字である。

だが、就職コンサル会社・ブレーンサポートの社長・木村俊良氏がこう断言する。
「国や大学が公表する就職内定率なんてものは、広告主を意識して数字を水増しする新聞の公称部数と同じ。現実とはかけ離れたものです」

いったい、どういうこと?
「この調査では『内定者÷就職希望者数』によって就職内定率が算出されますが、今回、調査対象になった大学は、全778校中、わずか62校にすぎません。さらに調査依頼先となった大学は、東大、一橋大、早稲田大、慶應大、上智大、東工大、津田塾大……と、就職に強いとされる名のある大学ばかり。 MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)クラスでさえ中央大しか入っていません。『これじゃ当てにならん』と文科省の幹部自身がボヤいていたほどです」(木村氏)

この調査は毎年4回実施されるもので、就職(内定)率は回を追うごとに高まっていく。例えば、今春卒業した大学生の場合、62・5%(昨年10月時点)↓73・1%(12月)↓80%(今年2月)と上昇を続け、最終的な就職率は91・8%(4月)に。

ところが、この年の大学卒業者54万人中、進学も就職も未定のまま卒業した学生は8万7千人に達した。約6人に1人が“就職難民”となったことを考えれば、91・8%という数字がいかに現実離れしたものかがわかるだろう。

こうして就職(内定)率がつり上がってしまう背景には調査協力する大学側にも問題がある。ある採用コンサル会社の社長がこうささやく。
「大学にとって就職率は経営の浮沈にかかわる生命線ですから、受験生やその保護者への公表値は基本的に“盛られた数字”なんですね。必然的に文科省厚労省に報告する就職率も現実離れしたモノになってしまうのです」

就職率を盛る!?
文科省厚労省)は調査依頼先に調査票を送付すると、あとは大学側に任せきり。そこで各大学の就職課は意図的に分母(就職希望者数)を減らし、分子(内定者数)を増やすことで就職率を水増しするのです。“留年組”など就職をあきらめた学生を就職希望者枠からごっそり省き、非正規雇用になる学生をこっそり内定枠に加える。こうして最終的に内定率90%超という非現実的な数字が作り上げられるのです」

実際、各大学が直面している現実は相当厳しい。
「ウチの大学の内定状況は約30%で、近隣の大学もほぼ同じレベル。全国平均の内定率を知った学生は自信を失っています」(栃木県・理系A大学)

関西で“関関同立”の一角を担うB大学でさえ「就職希望者の半分が“就職留年”する予定(就職担当者)という。
関係者の間で「実際は40%そこそこではないか」ともささやかれる現4年生の就職率だが、数字上は「最終的には90%近くまで上昇する」(木村氏)見通しだ。

来春、数字には表れない“ステルス就職難民”が大量発生するのは間違いない。
(取材・文/興山英雄)

記者が悪いのか、コンサルの方が悪いのかわからないけど説明が不正確過ぎ。サンプル調査なのだから

  • 「今回、調査対象になった大学は、全778校中、わずか62校にすぎません。」っていっても全数調査でなくサンプル調査だから。文句を言うならば、この調査対象になった大学では全体の傾向がわからないと批判しないといけない。
  • 「MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)クラスでさえ中央大しか入っていません。」は当たり前。同じ傾向を示す大学の代表校が今回中央大学だっただけ

一方で内定率が高めに出るというバイアスの指摘は全面的に正しいと思う。

  • そもそも「就職希望者」だけを対象にしており、就職を諦めた学生は数値に反映されない
  • 就職内定率が大学の評価に直結するので内定率を高く出したいという大学側の意識がある
    • 余談:だから、調査対象校名を明らかにしていないんだと思う
    • これは国が発表する失業率も同じ
  • 内定先は考慮されない。

また、大学というのは小学校〜高校までと違い学生に対する強制力に欠ける。よって、以下のような自体も発生する。

  • 調査対象の学生でもそもそも連絡がとれない
  • 調査対象の学生が調査に協力してくらない

以上より、この調査の数値が現在の大学生の就職状況を正確に表しているかというとそうとはいえない。では、この調査は「大嘘」なので信用できないのかというと、そうではなく家庭用体脂肪計と同じで、数値そのものは信用できなくても継続して測定しているため傾向はわかる。大学のメディアリテラシー、統計の授業、実験、卒業研究などで習う基本のとおり測定や調査には誤差やバイアスが含まれるのをあらかじめ理解して利用することにしたがうべきである。

おわりに

「調査結果が正確ではない=ウソついている」という発想だと、人生は辛すぎるし、ウソデータしか手に入らなくて憂鬱になる。そもそも、原理的に、あるいは経済的・政治的に大きな誤差や高いバイアスが含まれる調査しかできないことがある。「調査結果が正確ではない=誤差・バイアスを理解して利用しよう!」という姿勢の方がいろいろと数値データを利用できてハッピーになる。

一方で、調査結果や測定結果に誤差や偏り(バイアス)が含まれているのが当たり前という認識にたてば、調査方法を明らかにせずに数値を出してくる組織や企業が悪辣であるということが良く理解できると思う。明らかに我々を騙しにかかっている。そういう組織や企業には遠慮なく「お前は不誠実だ!」と考えよう。