期間限定子育て代理

また今年度もこの季節がやってきた。「師走」誰がうまいことを言えといったと言いたくなる素晴らしいネイミングだ。ご先祖様たちのセンスには頭が下がる。

この時期になると次の3月に卒業・修了する学生達がどんどんと追い詰められ、生まれてから今日まで吸収してきた全てがある意味で剥き出しになる。

  • 他人から要求されていることと自分ができることにギャップがあるときどう対処するか?
  • 自分の意思が通らないときにどう対処するか?
  • 他人の意思をごり押しされたときどう対処するか?
  • 自分の力ではどうにもならないときにどう対処するか?
  • 自分が間違っていたときどう対処するか?
  • 他人が間違っていたときどう対処するか?
  • 自分がした約束が守れなかったときどう対処するか?
  • 他人がした約束が守られなかったときどう対処するか?

家庭やこれまで受けてきた教育、周りの人間の振る舞い、自分の経験から一人一人がいろいろな行動をとる。私個人としては別にどういう行動をとっても、それはその人の個性だから、私に迷惑がかからないかぎりはどうしてもらっても良いのだけど、一助教(大学教員)の立場からすると、どうしても好ましい行動と好ましくない行動に分かれてしまう。好ましい行動とは、卒業・修了に向けて前に進む行動。好ましくない行動とは、卒業・修了に向いていない行動だ。

まあ、せっかくの縁だから、ちゃんと卒業・修了して欲しいので、出来る限り卒業・修了に向けて前に進む行動をとってもらおうと努力するのだけど、これははっきりいって、その学生個人をどうこうというよりは、その学生が育ってきた環境と戦っているのに等しい。その学生が育ってきた環境が持つ説得力と私や私のボス、そして研究室の先輩が提示する説得力のどちらが、学生にとって納得できるかという事態になる。

つまらない事柄や学生が始めて目にする事柄については、我々の説得力が勝つのだけど、つまらなくない事柄(すなわち重大な問題)においては、その学生が育ってきた環境が持つ説得力が圧勝する。そりゃ当たり前の話。これまでの20年以上にわたる教育の成果を最短で半年強、長くて2年半で変えようとするのだからドンキーホーテーもびっくりな蛮勇だ。

当たり前の話だけに、この師走から如月にかけては、私は連敗し続ける理屈となるわけ。たぶん、私だけでなく全国の大学教員のみなさまが連敗記録を更新する3ヶ月なのだと思う。

大学生ともなると親元を離れる人も多いことを考えると、この数ヶ月間だけは親よりも学生を叱り、親よりも学生を誉め、親よりも学生を心配しているに違いない。って言うと学生のみなさまの親御さんに怒られるか。なんせ、親御さんと違い、こちらは期間限定でどんなに問題満載の学生さんとも来年の3月(長ければ数年後の3月)に笑ってお別れできるんだし。

12月の第1週から久方ぶりにキタので、思わずエントリー。