10月14日に行われたSPARC Japan セミナー2008 【Open Access Day 特別セミナー】「日本における最適なオープンアクセスとは何か?」に参加してきた。結論から言えば、素人が参加するにはちょっと敷居が高いセミナーだった。それでも、日本におけるオープンアクセスの現状を嗅ぐには良い機会だったと思う。
セミナーのプログラム、講演要旨と発表資料は全部SPARC Japanのページにある。各講演の感想は以下のとおり。
- オープンアクセスの神話と真実 (永井 裕子)
- NIHがらみの部分は私の基礎知識が足りないためさっぱりわからなかった。
- 自分たちが発行しているジャーナルをオープンアクセスにしたら、ジャーナルの地位が高まるというのは幻想というのは納得。知名度が既に高くないとオープンアクセスの旨味はでない。
- 日本の各学会はオープンアクセスに対してよく検討してから自分の学会がどう対応すれば良いかを検討すべき(結果としてオープンアクセスに載らないというのも一つの選択である)という意見には納得。ただし、この意見に対して「撤回してください」というような激烈な反発意見もあった。私としては、このぐらいの考えに対して激烈な反発が出ることに驚いた。
- アメリカとイギリスでは、オープンアクセスという考えが「なぜ、行う必要があるのか?」から「どうやって行うか」に比重が移り始めていること、一方で、日本では「なぜ、行う必要があるのか?」も議論の対象となっていることがわかった。
- 「埋もれた研究成果を投稿・共有するサイト:My Open Archive」をやってきて思うこと (坂東 慶太)
- なぜ、My Open Archiveをやろうとしたのかという点についてお話を聞けてよかった
- 討論の感想
- 「学会は成果を社会に還元するのが使命なので、オープンアクセスに向かうべき」という正論がでてしまい、結構討論が止まってしまった。正論は大前提として、「じゃあ、どうやってオープンアクセスを実現するのか?現在、オープンアクセスを実現できない原因(姿勢や精神的な理由を除く)は何なのか?」を突き進めた方がおもしろい話になったと思う。実際に学会の出版部門の人たちもいたのだし。
- 機関リポジトリや学会のデジタルライブラリーへのアクセスログを利用した解析に関する議論(プライバシー、守秘義務、コンテンツ提供者へのコンテンツ利用情報の提供)は面白かった。マーケティングにおける知見は流用できるのではないかな?
森先生と呼ばれていた方から森重文先生からご説明があった数学の分野におけるオープンアクセスの話は面白かった- 数学の論文の寿命は長く。100年前の論文が参考文献に載ることもめずらしくはない
- 数学の分野では、論文が雑誌に掲載されたときに掲載料をとる習慣はない(数学の研究者はお金がないため)
- 雑誌交換という形で、学外の学術雑誌を入手するというのも重要な論文収集の方法だったが、今は紙媒体の雑誌出版がどんどん取りやめになっているのでこの方法の重要性が減っている
- 電子媒体で論文をオープンアクセスにし、かつ、紙媒体で有料で雑誌を販売していた学会が最近雑誌の販売を止めた。理由は、オープンアクセスにしているため図書館が雑誌の鉱毒を止めてしまったため
森先生がいらっしゃる機関(京都大学の機関?)京都大学数理解析研究所では、5年間機関限定でエンバーブエンバーゴするらしい。エンバーブって何?(コメント欄をご参照ください)
他の方の参加記