ブレインライティング

ブレインストーミングの欠点である

  • 発言する人と発言しない人に極端に分かれる
  • 考えるときに沈黙できない

を改善するために提案された手法。

この本は、プレインライティングの考え方とやり方、筆者オリジナルのブレインライティングのやり方(ポストイットを使った方法)が紹介されている。さらに、この本が素晴らしいのは、ブレインライティングでアイデアを大量に出した後にそれをどのようにまとめるのかについて、筆者が選んだ有力な方法を紹介してくれている点。Amazon.co.jpの書評を見ると、他の本と被っている点もあるとのことだが、逆に言えば、アイデアを大量に出し、それをまとめる手法を求めている人にとって最初に買うのに適した方法。

全部で3部構成となっている。

  • Part1: ブレインライティングの考え方、やり方、利点の紹介
  • Part2: 筆者が提案する発想法の3つの分類とそれぞれの分類で代表的な手法の紹介。ならびにそれぞれの手法をブレインライティングへ応用する方法
    • 自由連想法:あるテーマに対して制限を設けずに自由にアイデアを出す方法
    • 強制連想法:テーマに何かを無理やり関連付けて発想する方法。
      • 特性列挙法
      • チェックリスト法
    • 類比発想法:あるテーマの本質が同じである事柄を列挙し、列挙した事柄に対するアイデアと元のテーマを関連付けて新たなアイデアを発想する方法
      • ゴードン法
      • シネティック法
      • NM法
  • Part 3: 大量のアイデアを収束させる方法の紹介。筆者が提案する収束法の3分類の紹介とそれぞれの分類の代表的な手法が紹介されている
    • 評価法:空間型法や系列型法を使わずに評価を下したいときに使う方法
      • ポイント評価法
    • 空間型法:内容が似ているかどうかでアイデアを関連付けていく方法
      • ブロック法
      • KJ法
      • クロス法
    • 系列型法:時間の流れ、因果関係の流れに沿って、アイデアを関連付けていく方法
      • フィッシュボーン法
      • ストーリ法
      • カード手順法

上に示したとおり、この本にはさまざまな発想法や発想の収束法(整理法)がダイジェストで説明されている。それぞれの方法がそれぞれ1冊の本で紹介されていることを考えれば、これらの方法がダイジェストで読めるのはお得。興味があれば、それぞれの手法の本を読めば良い。

GTDの提唱者、デビッド アレン氏がストレスフリーの仕事術―仕事と人生をコントロールする52の法則で言っていることだけれども、「やるべき仕事の管理は自分の精神状態や体調、おかれている状況によって左右されない、信頼できる仕組みによって管理されるべき」というのは本当で、体調が良いときや、やる気があるとき、仕事に終われていないときだけに使用できる方法は、はっきりいって意味がない(除く芸術)。

考える行為も一緒。論文・報告書を書かなければならない、研究を進めなければならない、イベントの幹事をしなければならない、グループの運営をしなければならないという状況は、こちらの体調や精神状態、おかれている状況にお構いなしに発生する。そのときに、考え始めるための信頼できる仕組みをいくつか持っているのと持っていないのでは、物事に取り組み姿勢が異なってしまう。

たとえば、冷蔵庫の残り物で10分で夕ご飯を作れるノウハウを持っている人とそうでない人を考えてみたとき、残業で遅くなって家でご飯を食べよう(あるいは家族に食べさせよう)としたとき、「夕ご飯の支度」に取り組む姿勢がまったく変わってしまうのが創造できると思う。前者は、特に苦痛に思わずに夕ご飯を食べる(食べさせる)ことができるが、後者は、頑張って時間をかけて夕ご飯を作るか、お金をかけて外食/中食を用意するか考える必要があり、場合によっては「夕ご飯の支度」という行為を苦痛に感じると思う。

また、世の中の様々な問題は、解決のために何から考え始めてよいのかわからないことも多い。そんなとき、考える手法をいくつか持っていれば、とりあえずそれを使って考え始めることができる。つまり「考え」をスタートする敷居が低くなる。

この本は、考え始めるための信頼できる仕組みを紹介してくれているので良い本だと思う。

ただし、難をいえば途中で説明されている「問題把握」と「問題解決」のプロセスの説明と「発想」と「収束」の手法の関係がごちゃごちゃして理解しづらいのが残念。「問題把握」と「問題解決」で一つの部を構成し、「発想」と「収束」の話と分離して欲しかった。せっかく重要なことが書いてあるのに、各部、各章でばらばらに説明されているので理解しづらい。

あと、この本を通して学べるもっとも重要な原理は、「複数のプロセスが存在する作業において、複数のプロセスを同時に行おうとするな」ということ。「問題把握」と「問題解決」、「発想」と「収束」の二つのプロセスにおいてそれぞれ注意されている。すなわち

  • 「問題把握」を行うときに、「問題解決」を同時に考えるな。「問題把握」は実際に解決できるかどうかを考慮せずに行え。
  • 「発想」を行うときに「収束」を同時に行うな。「発想」はどうまとめるかを考慮せずに行え

ということ。