暗号解読

おもしろかった。暗号に関する基礎知識といろいろなエピソードがしっかりと学べて、おもしろい一冊。特にお気に入りはイギリス政府に隠されていた公開鍵暗号の開発者たちのお話。公開鍵暗号の発明は本当にドラマティックなエピソードで大好きだ。

p. 379:イギリスの隠された公開鍵開発者たちのエピソードの部分より。

やがてコックスも自分の仕事の大きさを理解した。そして、自分の仕事は、イギリスが生んだ二十世紀初期最高の数学者の一人、G・H・ハーディをがっかりさせたかもしれないと思った。ハーディは一九四〇年に『ある数学者の弁明』という著書の中で誇り高くこう述べたのだ。「真の数学は、戦争にはまったく役立たない。数論を戦争に利用する方法は、これまで誰も見出していないのだ」ハーディの言う真の数学とは、コックスの仕事の中核となった数論のような純粋数学のことである。コックスはハーディの間違いを証明したことになる−難解な数論が、将軍たちが完全な秘密のうちに戦闘計画を立てるために使えることがわかったのだから。

公開鍵暗号の発明は、以下の2点を示しているので好き。

  • これまで完全に役に立たないと思われていた数論の研究成果がこれからの情報化社会に欠かせない技術を生むことになったという、研究の多様性の重要さをはっきりと示している
  • 異分野の知識が別分野の目的意識、要求の下で新たな価値を発見されることがあるという例を示している

今回、この本読んで「鍵配送問題」と「公開鍵の仕組み」をごっちゃにして覚えいてることが分かった。別々の話なのね。そして、知識が増えたという点ではもっとも良かった点が「量子暗号」と「量子コンピュータ」の仕組みを大雑把だけど把握できたという点。そりゃすごいは。どうプログラミングしてよいのかさっぱり検討がつかない。

暗号がわれわれの生活に欠かせなくなってきている現在、楽しく読めて、かつ、知識も増えるというこの本はおすすめ。