リンク:2014年の人工知能学会誌表紙問題の振り返り

以下の話題でちょくちょく2014年の人工知能学会誌表紙問への言及をみる。
www.asahi.com

その後に振り返りの試みも行われていたのでそれらへのリンクをメモ。振り返ってみると主たる論点違うのね。人工知能学会誌表紙の方は、「女性は家事をする性である」という考えを無性別である人型ロボットに組み込んでいること、そして、それを学会が無自覚に行っていたことが問題点だったと認識している。

当時の反応と表紙の画像
togetter.com
togetter.com

人工知能学会の表明
www.ai-gakkai.or.jp

翌号にて検証の小特集が実施された。翌号の見出し。
www.ai-gakkai.or.jp

以下、小特集の論文。PDFはダウンロード可能。

表象文化論学会においてワークショップも行われ議論されている。以下はそのワークショップの報告。

2014年7月におこなわれた「パネル6:知/性、そこは最新のフロンティア──人工知能とジェンダーの表象」の報告
repre.org

2014年11月に行われた「ワークショップ:人工知能とジェンダー」の報告。
repre.org

追記(2022年1月28日)

初めから女性研究者のストーリーを考えており、その導入が切り取られて批判が集まったというわけではなく、批判が集まったものをどうやってポジティブなものにするのか必死に考えた結果が女性研究者のストーリーとのことです。

多くの議論を巻き起こした直後に発行される 3 月号の表紙デザインをどうするのか,我々はもめにもめた.2014 年初頭の編集委員会は「学会として表紙問題にどう向き合うべきか」の議論にほとんどの時間が費やされた.編集委員会のみならず理事会でも同じ様子であったと聞く.結果として,2014 年 3 月号の表紙は私のアイディアが採用された.3 月号の表紙は「女性アンドロイドの視野」となった.「3 月号に男性アンドロイドを掲載しても,問題は解決されない.むしろ状況は悪化する可能性がある.1 月号の表紙は世に出てしまった事実は変えられない.「うつろな目」と指摘されるこの女性アンドロイドが何を見ていたのか,その先を描こう」と私は主張した.これは考えや含みがある主張でもなんでもなく,後先考えない単なる思いつきだった.

3 月号は何とか世に出た.次に問題となるのは当然,5 月号の表紙デザインである.全くのノープランであった.私はそこで表紙をストーリー仕立てにするアイディアを出した.しかも,まだ表紙に登場していない「女性研究者」が主役のストーリーだ.3 月号の男の子はこの女性研究者の息子,1 月号のリビングは女性研究者の自宅,女性アンドロイドはこの女性研究者が開発したもの......というようにどんどん後付けのストーリーが出来上がり,11 月号までの掲載内容が決まった.我々はストーリーのプロではない.研究者である.だからこそ,研究者がどのように「ニーズ」を知り,どのように「研究の方向性」定めていくのか,研究活動の先,さらには研究人生を支えるものは何かを描きたいと思った.2014 年に発行した計 6 冊の学会誌表紙に展開したストーリーは,編集委員会という全くの素人集団が思い描いたものである.この一年間は,編集委員全員がストーリーを創り出すという未知の体験に知恵を絞り,それと同時に1 月号に無自覚に掲載してしまった表紙デザインの問題について深く反省するものとなった.