LINE使いのためのPCメール入門(案)

以前に携帯メール世代とPCメール世代が仲良く生きていくためにというエントリーを書いたけど、あれから6年。既に「携帯メール」は過去のものとなりつつある。最近、ちょっとだけLINEをやってみたので、そんな小さな経験を元にちょっと違いをまとめてみる。

まとめ

  • LINEは誰からのメッセージなのか把握してから読み始めるが、PCメールはメッセージ読んでから誰なのか把握する
  • LINEではメッセージごとに名乗らないが、PCメールではメッセージごとに名前が必要
  • LINEには件名はないが、PCメールには件名が必要
  • LINEはトーク相手・グループ中心、PCメールは要件中心
  • LINEは短く頻繁に、PCメールはまとめて、やりとり最小限に
  • LINEは感情をやりとりする。PCメールでは言葉をやりとりさせる
  • LINEはメッセージを場に置く、PCメールはメッセージを相手に届ける

PCメール、携帯メール、LINE、TwitterFacebook

このエントリーでいう「PCメール」は、パソコン上のメール読み書きソフトウェア(メーラー。代表的なものはWindows Mailなど)やGmailActive! MailのようなWebメールサービス上で読み書きされるメールのこと。

「携帯メール」は、主にフィーチャーフォンガラパゴス携帯、ガラケー)でやりとりされていたメールのこと。

実のところ携帯メール世代とPCメール世代が仲良く生きていくためにを書いたころと比べて、GmailやActive! MailなどのWebメールサービスの普及、そして、iPhoneAndroid端末などのスマートフォンの普及、そして、Wifiの普及により、「PCメール」と「携帯メール」の境目は上のような機能的なものでなく、文化的なものになってしまっている。スマートフォンGmail経由でやりとりするメールは「PCメール」なのか?「携帯メール」なのか?正直、書き方と取扱い次第でどちらなのか変わる。

このエントリーでいう「LINE」はもちろんLINEのことなのだけど、類似のカカオトークなどのメッセンジャーサービスも合わせて考える。

Twitter」はTwitterなどのオープンマイクロブログ、「Facebook」はFacebookなどのクローズドなメッセンジャー機能付きのSNSを考える。

もっと、若い人向けのサービスもあるんだろうけど、30代後半たる私はそこまでのアンテナはない。

昔語り:PCメール vs 携帯メール

PCメールは「手紙」の発展、携帯メールは「電話」発展としてそれぞれの利用者に認識されていた。初期の携帯メールでは文字数制限が厳しい(パケット制限もある)かったため、字数を省略することが美徳とされていた。

考え方 PCメールから始めた人 携帯電話メールから始めた人
メールをどうとらえているか? 手紙(ハガキ)の発展形 電話の発展形
メールの受け方 受取りに行く 送られてくる 
メールを送る時間 いつでもよい 受け手が起きている時間
メールの返信はどのくらいの間隔で? 任意(日単位) できる限り早く(分単位、時間単位)
文中での名乗りは する(文頭 or 署名) しない

このため、携帯メール世代とPCメール世代が仲良く生きていくためにのエントリーの冒頭にあるようなトラブルが発生していた。

比較

思いついた観点で比較

違い PCメール文化 携帯メール文化 LINE Twitter Facebookのメッセージ
何に似ているか 手紙・ハガキ 電話 チャット・おしゃべり 掲示板・おしゃべり メール・掲示板
同期・非同期 非同期 同期  同期  同期  同期 
相手の既読状況の確認 できない できない できる できない できる
メッセージを送る時間 いつでもよい 受け手が起きている時間 受け手が起きている時間 いつでもよい いつでもよい
誰が見るか メールの受信者 メールの受信者 グループのメンバー 全世界の人 メッセージの受信者
対話の特徴 相手が明確・基本1対1 相手が明確・基本1対1 相手が不明確・基本グループ 基本、相手はいない 相手が明確・基本1対1
返信の間隔 任意(日単位) 早く(分単位、時間単位) できる限り早く(分単位、秒単位) 任意(日単位) 早く(分単位、時間単位)
送信者の名前 受信者がメール読んで認識 システムが提示 システムが提示 システムが提示 システムが提示
文字数制限 なし なし なし 140字 なし
絵文字・スタンプ 普通使わない 使う すごく使う 使わない 基本使わない
文章の構造化 望まれる 望まれない 嫌われる 無理(文字数制限のため) 用途による
主な利用機器 パソコン 携帯電話・スマートフォン スマートフォン スマートフォン・パソコン スマートフォン・パソコン
主な入力デバイス キーボード 番号入力・フリック入力 番号入力・フリック入力 番号入力・フリック入力 番号入力・フリック入力・キーボード
主たる利用状況 ビジネス プライベート プライベート プライベート ビジネス・プライベート
インターフェース 送信者と件名の一覧が並ぶ 同左 吹き出しで発言を時系列に並ぶ 発言が時系列で並ぶ メッセージが時系列で入れ子に並ぶ

私の認識では、Facebookメッセージは電子メール(PCメール、携帯メール)の代替であり、用途によってPCメール文化寄り、携帯メール文化寄りの使い方になる。LINE、Twitterは電子メールとはまったく異なる用途、作法がある。

メッセージの発信コスト

基本的に以下のことを考慮するとメッセージの発信コストが高くなると思う。

  • 読み手のことを想定する
  • 自分が言いたいことを明確にする
  • やりとりは最小にする

なので、以下のような発信コストがあるとおもう。SNS系に比べて電子メールはメールアドレスの入力、件名の入力などの手順が多いのもコストUPの原因。
「PCメール」>「携帯メール」>「Facebookメッセージ」>「Twitter」=「LINE」

正式な連絡手段・補完的な連絡手段

どこぞで、「普段の連絡はLINEだけど、重要なことは携帯メールで送る」という記事を読んだ記憶がある。正式な連絡手段と補完的な連絡手段は以前書いたとおりの関係だと認識している。

常識は時代とともに変わるものですが、こと「正式の連絡手段に何を使うか」はこの数十年の間に何回か変遷しており、それぞれの常識で躾けられた人間が日本の社会には共存しています。それを理解しなければ、みんなと仲良くやっていけません。

私が理解する限り、「正式の連絡手段に何を使うか?」は新しい技術の登場ごとにちょっとずつ変わってきました。補足的な連絡手段に比べて正式な連絡手段の方が連絡するコストが高いという点がポイントです。
携帯メール世代とPCメール世代が仲良く生きていくためにより)

詳しくは携帯メール世代とPCメール世代が仲良く生きていくためにを読んでいただくとして、正式な連絡手段・補完的な連絡手段の変遷に関する私の認識は以下のとおり。

年代 正式な連絡手段 補完的な連絡手段 備考
1980年代〜今でも 直接会って口頭 電話 直接会うのが正式なのは変わらない
1980年代〜2000年代 電話 FAX
1990年代末 〜 今でも 電話 電子メール(PCメール)
2000年代 電話 携帯メール ほんの一時期・一部の人たち
2010年代 電子メール LINE・Twitter まだ、受け入れられていない

PCメールや携帯メールよりもコストが低い通信手段ができたため、電子メールが正式連絡手段となる可能性がでてきたのがここ数年の動き。

LINEとPCメールの違い

LINEは基本的に複数人で、短いやりとりを頻繁に、短時間で繰り返すことを意識したインターフェース(見栄え)になっている。なので、一人が長々と、言いっぱなしで使うのはあんまり良い使い方とされない。また、初回に会話相手を指定すると(グループを作ったり、話相手を選ぶ)、会話が開始した後は会話相手を再度選ぶ必要はない。多くの場合、コミュニケーション相手は固定的であることが多いので「誰からのメッセージなのか」ということを容易に把握することができる。

PCメールは基本的に1対1で、明確な要件について、できるかぎりやりとりの回数を少なくして、相互に伝達することを目的として発展してきた。このため、ある要件に関して1つのメールで完結した内容になっていることがよしとされる。何度もメールのやりとりしなければ分からないようなメールは、悪いメールの書き方とされる。また、届いたメールに対する返信としない限り、相手の連絡先(電子メールアドレス)を再入力する必要がある。また、メーラーのインターフェースの関係で、まず、送信者と件名の一覧から読むべきメールを探し、本文を読むという手順を踏むので、件名の重要性が高い。

LINEは誰からのメッセージなのか把握してから読み始めるが、PCメールはメッセージ読んでから誰なのか把握する

LINEのインターフェースは、「グループ」or「トーク相手」を選択してから、メッセージの表示画面へ移動するが、PCメールは、送信者と件名の一覧を経て、メッセージの表示画面へと進む。このため、PCメールの方は 1) 面識のない相手からのメール(メーラーに送信者に対する情報が登録されていない)、2) 送信側で送信者情報が適切に設定されていない(メールアドレスだけとか、送信欄の名前の表記が不適切だったりする)場合、メッセージ本文を読むまで、誰からのメッセージなのか把握できない。メッセージ本文に送信者情報がない場合、本文読んでも誰だか把握できない。

この違いに対する対応は以下の通り

  • 署名(signature)を作成し、本文の末尾につける or 自分の名前を書いておく
  • (大学教員など毎日いろいろな人からたくさんメールを受け取る相手の場合)、冒頭に所属と名前を書いておく
  • 自分が使っているメーラーの機能を使って送信者欄(From欄)に自分の名前が記載されるようにしておく
  • 参考:メール署名の常識・非常識:ただし、2010年の記事。
LINEではメッセージごとに名乗らないが、PCメールではメッセージごとに名前が必要

上の違いと合わせて、LINEではトーク履歴(スレッド?)によって、誰がどのメッセージを出しているかは一目瞭然だけれども、メールの場合は、基本的には1メールごとに独立であるため毎メールごとに名前を書いておく必要がある。

この違いに対する対応は以下の通り

  • メーラーの機能を使って、作成済みの署名(signature)を簡単にメール末尾に挿入できるようにしておく
  • (大学教員など毎日いろいろな人からたくさんメールを受け取る相手の場合)、冒頭に所属と名前を書いておく
  • 自分が使っているメーラーの機能を使って送信者欄(From欄)に自分の名前が記載されるようにしておく
LINEには件名はないが、PCメールには件名が必要

多くのメーラーのインターフェースの特徴から、PCメールでは件名が重要視される。多くのメールをうけとったとき、どのメールから読み始めるのかの手助けとなるのが、件名。このため、件名がメールの要件を端的に表していると読み手にとってうれしい。

この違いに対する対応は、高々15文字程度の要件が端的にわかる件名をつけること。

なお、一部の大学教員は、学生からのメールは件名に学籍番号と氏名を書くことを好む人もいる(メーラーの最初の画面である送信者と件名の一覧表示で誰からのメールかわかるため)。私は好まない。理由は何のメールかわからないから。

また、携帯メール文化では件名にすべての内容を書いてしまうこともある。多くのメーラーでは、送信者と件名の一覧表示画面では、件名が高々15文字ぐらいしか表示されないので、このような件名の使い方はPCメールだと好まれない(どうせ、本文見ないといけないし)。

LINEはトーク相手・グループ中心、PCメールは要件中心

LINEでは、先にトーク相手・グループを決めて、その後、話す内容を考える(というか考えないでいろいろ話す)。このため、トーク履歴にはさまざまな要件(話題)が残る。PCメールの場合、基本的には要件ごとにメールを出す。返信も要件ごとに行い、異なる要件には返信機能(reply)を使って返信を出すのではなく、新たにメールを書いておくることが推奨される(ただし、ビジネスメールの場合)。

この違いに対する対応は、1つのメールでは1つの要件について記述するようにする。

LINEは短く頻繁に、PCメールはまとめて、やりとり最小限に

LINEのトークで十数行に渡るメッセージを送るのはLINEのインターフェース的にも推奨されていない(なんせ、Enterキーを押したら即送信というオプションがあり、デフォルトだったりする)。一方、PCメールの場合、ある要件について何度もメールのやりとりしないと理解できないというのは悪いメールとされる。

1メール1要件の方針と合わせて、そのメールを読むだけで要件が理解できるようにメールを書く必要がある。

LINEは感情をやりとりする。PCメールでは言葉をやりとりさせる

LINEの素晴らしい特徴はスタンプを使って、言葉にできないことや言葉にするほどのコストをかけたくないけど伝えたいことを送ることができること。一方で、(ビジネス用途の)PCメールでは言葉を使って何かを報告したり、問合せしたりすることが多い。

とはいえ、あくまでも傾向。所詮コミュニケーションツールなので、その表現の範囲&送信者と受信者の了解の下でいろいろな感情を行き来させることもできる。以下の例参照。

最短の手紙

レ・ミゼラブル』が出版された直後、海外旅行に出かけたユーゴーはその売れ行きが心配で、出版社に一文字「?」と書いただけの手紙を送ると、その後出版社から「!」とだけ書かれた返信が届いた。「上々の売れ行きです!」というわけである。事実数日で完売・売切れの状態であったという。これが世界でもっとも短い手紙となっている。
ja.wikipedia: ヴィクトル・ユーゴーより)

この違いに対する対応は、TPOに合わせて言葉を惜しまずちゃんと説明すればよい。

LINEはメッセージを場に置く、PCメールはメッセージを相手に届ける

LINEで複数人でトークできるように、PCメールも宛先欄に複数のメールアドレスを列挙したり、CC欄に複数のメールアドレスを列挙することで複数人に同時にメッセージを送ることができる。ただし、多くの場合はそのメッセージが主として「誰宛て」なのかをPCメールでは明記することが多い。

特に大学や会社・組織の場合、そのメールに対する返信責任が誰にあるのかを明確にするためにメールの冒頭に誰宛てなのか明記することが多い(推奨される)。

この違いに対する対応は、宛先欄(To欄)にA先生とB先生のメールアドレスを書き、Cc欄にTAのCさんのメールアドレスを書いたときに以下のようにすれば良い。

A先生、B先生
Cc: Cさん

こんにちは、〜です。

その他、PCメールで注意すること

  • 送信者欄(From欄)のメールアドレスに注意。メールアドレスのドメイン(@マークの後ろ)を見て、まともな送信者かどうか判断することがある
  • テキストメールで送ること。HTMLメールは最近はスパムやフィッシング詐欺に多用されているので良いイメージはない
  • PCメールに対して即時返信はあきらめること

おわりに

メールも、Twitterも、LINEも、Facebookもコミュニケーションツールなので、雑談にも使えるし、ビジネスにも使える。一方で、普及した経緯やユーザーインターフェース、主たる利用年代によって、ツールごとにビジネス寄り、プライベート寄りの使い方があるのは事実なので、適切な場面で、適切なツールを使って、楽に、間違いないコミュニケーションをとっていきたいところ。

あと、このエントリーまとめながら思ったのは、PCメールのマナーのほとんどはメーラーのインターフェースに由来しているような気が。件名だけでもLINE風インターフェースにしたらいいんじゃないかと。せめて、Facebookメッセンジャー風インターフェースとか。