リンク:子宮頸がん、予防の手を緩めずに

慢性疼痛に悩む子どもの存在が明らかに

思春期の子どもに限らず、痛みや不随意運動で苦しんでいる人々はなかなか診断がつかず、適切な治療を受けることが難しいようです。同じ症状が常に出ている場合、例えば右の脳に異常があるから、左半身が動かないというときは、何か器質的な問題があると分かります。ところが、昨日は痛いけれど今日は痛くない、昨日は倒れるけど今日は倒れないというのは、器質的な問題ではなく、機能性症状だと判断されます。世の中にそういう症状で苦しんでいる子どもたちが相当数いるということが、HPVワクチンを接種するようになって、あぶり出されました。

2012年までに、HPVワクチンの接種率は約70%になりましたから、およそ300万人の女子にワクチンが接種されています。この中で、因果関係は別として、機能性身体症状の発生数は10万接種当たり1・5件です(表1)。ワクチン接種前の時期にどれだけの発生があったかは、前述のようにレジストリ制度のない日本では、さかのぼって調べることは不可能です。

機能性身体症状で、原因がはっきりしないけれども、ともかく「痛い」という人たちの治療について、日本は遅れています。大切なのは、心と体の両方からアプローチするということです。

まず、精神科や心療内科など、心を診療できる科を受診してもらう。そして、適切なカウンセリングや認知行動療法と共に、痛み止めは整形外科や麻酔科、リハビリはリハビリ科というように、学際的にみんなで治していくということです。

それを心へのアプローチをせずに、体の症状ばかりにこだわっていると、いつまでも、検査漬け、薬漬け、そのうち「嫌だ、治らない」となります。しばらくしてから、「これは精神的なものもあるかもしれませんから、精神科へ行きませんか」と言われると、「絶対に嫌」となります。さらに「家族内の葛藤があった」などと言われると、保護者は「子どもがこんなになっているのは、私のせいだというわけですか?」。そうなると、もうその医療機関には行きません。しかし、機能性身体症状は誰にでも、どの家庭にでも起き得ることなのです

機能性身体症状には包括的な取り組みが必要

普通に生きていることで受ける日常のさまざまなストレスが、精神面に現れたものがうつ病であることは、既に皆さんご存知だと思います。一方、自分で解決できないストレスが身体面に起きてしまうのが、機能性身体症状です。しかし、最初は機能性だといっても、痛いからと長い間体を動かさないでいたりすると、今度は手足が固まって、機能性が器質性になっていきます。それを早く治さねばなりません。

弟が小学生のころ急に膝が曲がらなくなった。曲げると痛いとのこと。膝の部分にギブスをしているように膝関節を伸ばしたまま生活していた。でも、弟が寝ているときに私が弟の膝を曲げても、弟は痛みでは起きない。膝も柔らかく曲がる。ところが、弟が起きているときに膝を曲げようとすると弟は痛みで泣き叫ぶし、膝はなかなか曲がらない(弟が力をいれているから)。病院でレントゲンとっても、異常無し。上記の記事でいう機能性の身体症状だった。結局1年ぐらい膝が曲がらないまま生活し、1年後ぐらいに徐々に膝が曲げられるようになり、普通に生活できるようになった。

体に異常はないし、寝ているときは正常に動くのだから、完全に「気持ちの」問題と外から見ていて思ったけど、本人にとっては痛みは現実にあるし、日常生活に多大な不便を強いている問題だった(当時、家のトイレは和式だった。学校のトイレも職員用トイレを除いて和式だった)。こういう体験があるので、上の記事で述べられていることは本当にそうだと思う。