不正とミスを区別するのは難しい

理研を擁護するわけではないけど研究論文(STAP細胞)の疑義に関する調査中間報告についてで以下のように述べられているのは理解できるし、そういうしかないだろうなと思う。

  1. Obokata et al., Nature 505:641-647(2014) Article(以下「論文1」と記載):Figure 1f のd2およびd3の矢印で示された色付きの細胞部分が不自然に見える点については、この図を作製する過程には改ざんの範疇にある不正行為はなかったと判断される。
  2. Obokata et al., Nature 505:676-680(2014) Letter:Figure 1b(右端パネル)の胎盤の蛍光画像とFig. 2g(下パネル)の胎盤の蛍光画像が極めて類似している点については、Fig. 2g 下の画像は、本文及び図の説明の中に言及されておらず、規程に定める「改ざん」の範疇にあるが、論文作成過程で図を削除し忘れたという説明に矛盾等は認められず、悪意があったと認定することはできないことから、研究不正であるとは認められない。

この概略でも調査委員会調査中間報告書でも悪意があったかどうかを非常に気にしているけれども、悪意の有無が研究不正であるかどうかの必要条件であるので致し方ない。

「研究不正」とは、科学研究上の不正行為であり、研究の提案、実行、見直し及び研究結果を報告する場合における、次に掲げる行為をいう。ただし、悪意のない間違い及び意見の相違は研究不正に含まないものとする。(米国連邦科学技術政策局:研究不正行為に関する連邦政府規律2000.12.6連邦官報pp.76260-76264の定義に準じる。)

  1. 捏造(fabrication):データや実験結果を作り上げ、それらを記録または報告すること。
  2. 改ざん(falsification):研究試料・機材・過程に小細工を加えたり、データや研究結果を変えたり省略することにより、研究を正しく行わないこと。
  3. 盗用(plagiarism):他人の考え、作業内容、結果や文章を適切な了承なしに流用すること。

研究活動の不正行為に関する特別委員会:科学研究上の不正行為への基本的対応方針より)

そして、悪意というのは内面的なものであるので、悪意があることを客観的に証明するのは難しい。推定無罪の原則により客観的に証明できないならば悪意はないものと判断するしかない。「でも、結果として、まともな論文になっていないじゃないか!」という反論が当然あると思う。おっしゃるとおり。なので、理事長も、センター長も、著者らも論文の撤回をしようとしているのだと思う。

でも、調査委員会調査中間報告書において継続調査中の項をみるかぎり、少なくとも電気泳動像に関しては改ざんが認定されそう。博士論文の画像の使いまわしは、仮に説明どおりだとしても胎盤の画像の件と合わせて実験データの管理能力が疑問視されそう。