診療報酬明細書と共通番号制度を結びつけるべきなのか?

NHKニュース:厚労省の診療データ 約8割が活用できずの最後にある専門家の意見はいろいろと省略されているんじゃないの?

厚生労働省が4年前からデータベースに蓄積している診療報酬明細書のおよそ58億件のデータのおよそ80%が、特定健診のデータと突合できず、糖尿病など生活習慣病の対策に活用できなくなっていることが分かりました。

厚生労働省は研究班を作って原因の調査を始めました。

このデータベースは、生活習慣病の対策に役立てようと、特定健診メタボリックシンドロームと診断された人が、その後どのような病気になりいくら医療費がかかっているかなどを分析するため、厚生労働省が、4年前に5億円余りをかけて導入しました。

これまでに、40歳以上が受ける特定健診などのデータがおよそ9000万件、その後どのような医療を受けいくらかかったかが分かる診療報酬明細書のデータが58億件余り、名前や生年月日を暗号化して登録されています。

しかし、厚生労働省が去年、同じ人について健診と明細書のデータを突合して分析しようとしたところ、明細書のおよそ80%のデータが突合できなかったことが分かりました。
厚生労働省は、名前のデータが健診ではかたかなだったのに、明細書では漢字だったことなどから、暗号化する際、違う記号になった可能性があるとみて、専門家による研究班を作って原因の調査を始めました。
厚生労働省は「想定外のことで、原因を突き止めて、何とか突合できるようにしたい」としています。

専門家「共通番号制度利用すべき」

医療経済学が専門で東京医科歯科大学の川渕孝一教授は「8割が突合できないのであれば、客観的で中立的な研究事業もできず、ゆゆしき問題だ。手書きから始まった明細書とデジタル化した特定健診を突合させるのは難しく、今後導入される社会保障や税の情報を一元化するため国民一人一人に番号を割りふる共通番号制度を、医療にも利用すべきだ」と話しています。

もちろん、共通番号制度を医療にも適用すれば今回のようなことが起こりづらくなるけど、膾に懲りて羹を吹く、あるいは牛刀を持って鶏を捌くという話になる気がする。今回のデータベースがなぜ必要であるのかというと

  1. 診療報酬明細書のデータが分散して保存されている(病院や各健康保険の管理組織) or 保存されていない
  2. 個人が利用する健康保険の種類が時間とともに変わる
  3. 特定検診の結果がデータベース化されていない
  4. 特定検診の結果と診療明細書のデータが連携していない

つまり、上記のデータベースは基本的に以下の情報を管理している。

  • 個人と特定検診結果の対応(1対多)
  • 個人と健康保険番号の対応(1対多)
  • 健康保険番号と診療報酬明細書の対応(1対多)

記事からすると、個人を特定できないようにするため「個人と健康保険番号の対応」「健康保険番号と診療報酬明細書の対応」をデータベース内で管理せず、データ格納時に「個人と健康保険番号の対応」「健康保険番号と診療報酬明細書の対応」から「個人と診療報酬明細書の対応」を生成して格納している様子。で、今回はその対応付けが間違っていたという話っぽい。

この話において、共通番号制度を利用すると楽になるのは「個人と健康保険番号の対応」「健康保険番号と診療報酬明細書の対応」から「個人と診療報酬明細書の対応」生成する部分。診療報酬明細書発行機関がそもそも「個人と診療報酬明細書」をセットで発行することになる。

コスト削減になるので良いように思えるけど以下のようになる。

  1. 今回のデータベースでの管理対象外の人の国民全員について個人と診療報酬明細書が対応づけられる
  2. 他のセンシティブな情報と診療報酬明細書の対応が簡単になってしまう

今回の話に限っていうと1の影響が大きすぎる。たぶん、「共通番号制度利用すべき」の真意は、医療に関して診療報酬明細書を用いたデータマイニングをやりやすくし、医療を発展を支援できる環境を用意するという点にあるのだと思うけど、それに伴うデメリットも併記しないと。