不満は相対的なもの

当事者ではないと「〜が満たされているなら十分じゃない」と言ってしまうけど、当事者だと「Aは〜できているのに、私が〜できないのは不公平だ」と感じてしまう。

ただし、ここで確認しておくべきは、移民の周辺化や当事者の不満は相対的なものだということである。たとえば、移民集住地区の住居の多くは、鉄筋コンクリートの3〜10階建ての集合住宅で、現在の住民の多くは衛星放送で出身国のテレビ番組をも視聴できる環境にある。

教育面での格差についても、統計局の資料で近年の大学進学率をみると、ネイティブのスウェーデン人が約45%であるのにたいし、移民二世(両親が外国生まれ)のそれは40%弱と、その差は5%程度であり、しかもこの10年間でその差は半分ほどに縮小されてきている。構造的な差別化傾向がみられるとはいえ、公的な支援体制はある程度整っており、移民の生活条件が一般的な意味で劣悪だとはかぎらない。
Synodos:スウェーデンの移民暴動に関する報道をどう見るべきか 渡辺博明 / 現代スウェーデン政治より)