斉藤 泰雄: 識字能力・識字率の歴史的推移――日本の経験,2012

ブログつくったカパ:図書館系勉強会KLC「近代日本の出版流通と「読書国民」の誕生 「図書館史を勉強したい」answer編経由で、かたつむりは電子図書館の夢をみるかのmin2-flyさんの発表資料を見た。

こういう話だと背景に識字率の話が登場するかと思ったのだけど出てこなかった。で、気になってGoogleで検索したら以下の文献を見つけた。大変おもしろい文献だった。

上記文献のまとめ部分より転載。

江戸末期において、当時の日本はすでに庶民層を含めてかなり厚みをおびた識字人口層をかかえていた。学校教育の普及が低迷していた明治初期 20 年代半ばまで識字人口層は、江戸末期とあまり変らず、文部省の自署率調査によれば、識字率は最大で、男子で 50 〜 60%、女子で 30%前後であったのではないかと推測される。壮丁教育程度調査によれば、それが開始された明治 32 〜 33年 頃は、青年男子のおよそ半数の者は、読み書き能力の不確かな者とされたが、その比率は、その後の日清、日露の対外戦争を転機として小学校への就学率が急速に向上する状況の後を追うようにして、急速に減少することとなる。

こうして、青年男子 (20 歳 ) の間における新規の非識字者の出現は、1925 年 ( 大正末 )頃までにはほぼ根絶されたと推測される。青年女子の場合も、明治末までに男女間の就学格差が急速に改善されたことを考えると、ほぼ 10 年間の時間差はあるものの、男子の場合とほぼ同様な状況が出現したものと推察される。

終戦直後に行われた日本人の読み書き能力調査は、はからずも、日本人の間で読み書き能力を欠く者 ( 完全文盲、不完全文盲 ) がきわめて少ないことを実証してみせた。1959 年に文部省が「わが国の文盲率は世界でも最も低い部類に属している」と明言し、事実上、わが国には識字教育の課題は存在していないことを宣言する根拠はここにあった。また、戦前期における社会教育の歴史を概観しても、これまでのところ、わが国においては、途上国において見られるような組織的、体系的な識字教育キャンペーンが行われたという形跡を発見することはできない。

江戸時代からそれなりに文字を読める人は多かったとのこと。ただ、このブログの関心事からすると機能的非識字に関してはどうなのかについてすごく知りたい。