第4回研究会:せんだい歴史学カフェ×歴コミュ研「銀幕から読み解く歴史像」

今月も歴史コミュニケーション研究会にお邪魔してきた。今回のお題は、第4回研究会:せんだい歴史学カフェ×歴コミュ研「銀幕から読み解く歴史像」

定期的に、西洋史を中心とした歴史学の話題をUstreamで提供されているせんだい歴史学カフェのみなさんがゲストということで、これは見に行かねばということで行ってきた。自分の研究課題を社会にフィードバックしなければというのは常に思っているけど、思うのと実際に行動に移すのには大きなギャップがある。それを定期的につづけられているというのは非常に素晴らしいと常々思っている。

18:00ちょっと過ぎから始まり、終わったのは20:30。トラブルありとはいえ長丁場の会だった。せんだい歴史学カフェのみなさん、歴史コミュニケーション研究会のみなさん、お疲れ様でした。以下、感想を思いつく限りメモ。

大谷哲さん(東北大・古代ローマ史) 「映画『アレクサンドリア』における古代末期社会と宗教の表象―皇帝、司教、修道士、哲学者―」

映画自体が面白そうだった。

青柳寛俊さん(東北大・初期キリスト教史):「福音書とイエス像 −共観福音書メル・ギブソン『パッション』を中心に−」

  • 共観福音書という言葉を知ったことと、福音書共観表
    • 「共観」という言葉は面白い。なんか研究で使えそうな気がする。
    • 個人がさまざまな情報を発信する社会であるので、ある事柄に関して多くの解釈が存在する。TwitterfacebookなどのSNSはある意味「共観」を記録していくサービスであると言える。
    • SNSで記録される歴史的事象が、100年後、数百年後まで残った時には「共観資料」みたいなジャンルで、いろいろな歴史的事象についてまとめられ、分析されていくんだろうか。

永本哲也さん(東北大/東海大・ドイツ近世史 「『キング・フォー・バーニング』に見る、史実とフィクションの関係」

  • 日本ではマイナーな話でも、ドイツではドラマが作られる程度にメジャーな話であるという当たり前の事実
    • 今の大河ドラマの話だって、海外ではマニアックな歴史エピソードだものね。
  • 史実とは反しているが、人々の持っているイメージの再生産 or イメージの強化に寄与する歴史ものについて、歴史家やわれわれはそれにどう向き合うのか?という問い。

杵淵文夫さん(東北大・ドイツ近現代史) 「禁酒法の時代―『アンタッチャブル』より―」

  • 禁酒法はざる法というのが面白かった。

細谷要さん(東北大・ドイツ近代史) 「映画『ワルキューレ』にみるヒトラードイツ国防軍との関係」

  • 映画の説明よりも、解説にあったヒットラーの暗殺計画が何度もあったというのが現在に知られているということが一番の不思議だった。暗殺計画って、そんなに記録に残されるもんなの?
  • 終戦1年前の1944年の時点でも、国務省の大将級の将官が暗殺を試みる状態というのがすごい。どんだけ軍を把握できていなかったんだという印象。
  • 当時のイタリアや日本においては、暗殺計画はなかったんだろうか?
  • 現ドイツがナチス・ドイツとの連続性を切るための一環として、ヒットラーの暗殺は何度も計画されていたという事実が必要とされて、本来ならば表にでないような暗殺計画が記録に残されるようになったのではないかと夢想した。

柳原伸洋(東海大・ドイツ現代史、本研究会の主催者) 「3本の映画に見る東ドイツ ―『グッバイ、レーニン!』『善き人のためのソナタ』『東ベルリンから来た女』」

さすがのプレゼン力。少なくとも『グッバイ、レーニン!』は見ようと思った。残り二つは精神的に耐えられるかわからない。

  • 映画をより楽しむためのスパイスとしての歴史的知識を提供する。東ドイツでは秘密警察の非公式協力者が100人に1人いるということを知っているのと知らないのでは映画鑑賞時のスリルが違う。同様に東ドイツでは秘密警察による電話の盗聴が当たり前だったことを…。
  • 「〜で絶賛」「〜で〜賞受賞」という映画を日本に持ってくるとき、映画そのものだけでなく、映画を楽しむための前提知識も一緒に持ってこないと、肩透かしに会うかもしれない。

懇親会

今回もいろいろと面白い話を伺った。

  • 初期キリスト教(〜3世紀ぐらいまで)は裕福層が対象。交易を通して点で広まっていった。
  • 殉教者がカレンダー埋めるほどに増えたのは、キリスト教がマジョリティーとってから。各地域に広まっていったキリスト組織を束ねていく過程で、その土地土地の風習を盛り込む形で殉教者が使われたのでは?とのこと。取り込む風習が先にあり、都合の良い殉教者を探すという展開があったのではないか?
  • 聖人も同様。
  • 初期キリスト教の組織構築過程の研究が十分進んだら、「白いたい焼き」屋とかのローカル食べ物屋が日本全国に散らばっていくさまと比較してほしいところ。「〜系」ラーメンののれん分けの歴史とかでも面白そう。
  • 「ヨーロッパの成り立ち」という授業。でも、ヨーロッパって何?でつまづく。ロシアはなんでヨーロッパに入れてもらえないのか、入らないのか。
  • 「第3のローマ」。あの半島は「第三〜」好きだなぁという感想。
  • ミュンスターミュンヘンを間違える痛恨のミス。再洗礼派の話好きなのに間違えた。

おわりに

  • 私の中で地中海南側。北アフリカにおけるキリスト教というイメージがほとんどないのに気付いた。
  • ロシア謎過ぎ。

おまけ

懇親会でご紹介した世界史厳しいと実感させてくれるパラドクスゲームたち。強い国は強く、弱い国はつぶされる。それがパラドクスゲームの掟。なんで、うまい人はあんなにいろいろできるの?