イギリスの本屋には伝記が少ないのか?

追記(2012年11月29日)

WirelessWire News(ワイヤレスワイヤーニュース):キャリアポルノは人生の無駄だの著者からのコメント。

こいつもワシの記事を良く読んでいないアフォである。英には伝記は売ってないと書いてない。自己啓発本と経営者の自慢伝記があまりないと書いているのである。ダラダラながい読書感想文。http://bit.ly/UsKSsW
Twitter:May_Romaさんのツイート

本文

成功者の成功談を聞いたって、自己啓発に参加したって、普通の人々である我々には関係ないんですよという話。ロールモデルとして適切な対象を選びましょうねという点ではそのとおりだと思う。でも、気になったのは本題でなく以下の部分。

日本で本屋に行くと、学生さんやサラリーマン向けの「仕事とは何か?」「ライフハック」「グローバル人材になるためには」という目がチカチカする様な題名の「自己啓発書」や、世界的に有名な企業の創業者の「自伝」(いや、自慢本)が山の様に並んでいます。
〜中略〜
ちなみにイギリスの本屋もイタリアの本屋もドイツの本屋も、こういうキャリアポルノが全然売ってないんです。なんでないかというと、99%の人々は最初から自分もジョブスや勝間女史になれるとは信じてないし、なりたくもないし、なりたいと思う機会もないんです。

上記の定義によると「キャリアポルノ=自伝 or 自己啓発 or ビジネス系HowTO本」なので、伝記とは関係なのかもしれないけど、ジョブズの本もキャリアポルノとして挙げられているので、ビジネス系伝記もキャリアポルノ候補なのだろうと判断。で、先日読んだ記事にアメリカでは伝記が一ジャンルというのを聞いていたので「イギリスとは違うのか」と不思議に思った。

オバマ再選が決まってホッとしたのも束の間、週末を迎える前にペトレイアスCIA長官が不倫で辞職というニュースに驚愕。しかもそのお相手が彼のバイオグラファーというので二重のショック。ちょうど良い機会なのでアメリカにおける「バイオグラフィー」というカテゴリーについて書く。

日本だと、ノンフィクションというくくりの中に入れられてしまいがちだが、アメリカでBiographyといえば、少し大きめの本屋に行けば別に棚が作られていたり、ピューリッツァー賞ではGeneral Non-Fictionとは別にBiography or Autobiographyというカテゴリーが別枠で設けられているし、全米書評家協会賞(NBCC)でもGeneral Non-Fictionとは別にBiography、さらにAutobiographyというカテゴリーがあるほど、「評伝」「自伝」はノンフィクションの中でも別格の扱いだということがわかるかと思う。

アメリカでは伝記が一大ジャンルとのこと。ではイギリスの場合は?Google先生に尋ねてみると、アメリカと同様に伝記は充実しているとのこと。

連休最後の日、さっぱりしない天気。日用品の買い物ついでに、近くの本屋に寄る。街中にあるようなでかい本屋ではないが、一通りの品揃えはある。日本での自宅近くの行きつけの本屋と同じぐらいの規模だ。

同じ郊外の住宅街にある本屋でも、ロンドンと東京では随分品揃えが違うような気がする。店の品揃えの違いか、それともイギリスの本屋の特徴かが分からないが、独断で気がついたことをいくつかメモすると・・・

職業柄、どうしてもビジネス関連のコーナーに足が向くのだが、こちらの近くの本屋はビジネス書の品揃えは全然ダメ。3メートル分の棚ぐらいしか置いてない。ビジネスだけで一コーナーある日本の本屋とはえらい違いだ。あまりこちらの人はビジネスノウハウを本で得るということをあまりしないのだろうか?
〜 中略 〜

伝記もこっちは多い。アメリカでもやたら伝記が本屋に置いてあってビックリした覚えがあるが、イギリス人も伝記好きなのだろうか?日本はあまりないような気がするが・・・

今でも、イギリスやアメリカの本屋さんへ行くと、必ず伝記のコーナーがありますよね。英語圏の伝記には、歴史記述に加えて、人物に対する伝記家自身の見立てというのが含まれている、それが魅力の一つなんでしょうね。

このようにイギリスでも伝記は一大ジャンルの様子。一方で、一つ目の引用元に書かれているようにビジネス書というジャンルはあまりないみたい。そういう意味で、イギリスではキャリアポルノは受けないというのは正しいのかもしれない。イギリスやアメリカの伝記好きは上記の引用文を含む部分で解説されている。

Q: ジョンソン自身がジェイムズ・ボズウェルによる『サミュエル・ジョンソン伝』というイギリスの伝記の登場人物となっており、もういっぽうでは『イギリス詩人伝』という伝記の作者でもある。その両面にいるのはおもしろいと思うのですが、そのあたりを・・・

「伝記」というと、17世紀後半、詩人のドライデンが「biographyバイオグラフィー」という言葉を使ったのが最初だと言われています。

なぜその時期にこの単語が生まれたかということなんですけれども、それまでの伝記は、聖人伝や国王の伝記、あるいはクロニクル(年代記)というような、聖人君主の記録だったわけですけれども、名誉革命と前後して、曲がりなりにも市井の人々が主人公になるような社会が出来上がる。その人たちが文学表現のターゲットになってくるわけですね。絵画のほうで、例えばホガースのように、やはり市井の人々を題材にした作品が出てくるのもちょうどこの頃です。

今でも、イギリスやアメリカの本屋さんへ行くと、必ず伝記のコーナーがありますよね。英語圏の伝記には、歴史記述に加えて、人物に対する伝記家自身の見立てというのが含まれている、それが魅力の一つなんでしょうね。

〜中略〜

結局、革命を経たイギリスでは、17世紀後半以降、個人というものが注目されて、それで伝記というジャンルが成立してくる。
〜後略〜

この解説が正しいならば、伝記の対象となっているのは歴史上の偉人たちはもちろんとして、いろんな分野の有名人も対象となっているのではないかと思う。伝記というジャンルの成立が清教徒革命や名誉革命が原因というのは面白い。いろいろな人の伝記(自伝含む)が出版されるというのは市民の地位がそれなりに高い証拠として考えてもよさそう。

イギリス、イタリア、ドイツなどで伝記は一大ジャンルなのかどうかをAmazonのジャンル数でチェックしてみた方もいる。