尋ね返すように訓練するお仕事

極東ブログ:会話がとてもつらいときで登場する目的語が抜けている発言があったら、目的語を補うために尋ね返すことができるように学生を訓練することに8か月ぐらいかけているのが私の最近のお仕事。

 例えば、会話のなかでこういう発言が向けられることがある。

「補充には数日かかるらしいので、鈴木さんが困るといけないから戻しておきました」

 ここで、私の頭は飛ぶ。飛ぶというのは、ヒューズが飛ぶという、昭和的な事象である。脳髄に激打をくらったような呆然とした状態になる。
〜中略〜

そういう場合、「何の補充ですか?」と聞けばいいだけのことじゃないかと若い頃は思っていて、ひどい目にあってきた。まあ、そのあたりの話は省略。

長いこと生きてわかったことは、まず、わけのわからない会話に対して、とりあえず同意の素振りをして、そこにさりげなく不可知アイテムに関連する情報を求めるキーを差し込むことだ。
〜後略〜

半径5mの観察からすると、学生のほとんど(アジア系留学生も含む)は、わけのわからない会話に対してとりあえず同意の素振りをするという技術はきっちり身に着けている。というか、自分がその技術を行っていることに気が付いていない。なので、その技術を許さないようにこちらがふるまうと傷つけられたような目をする。たとえば以下のようなやりとり。

  • A:「補充には数日かかるらしいので、鈴木さんが困るといけないから戻しておきました」
  • B:「何について補充するの?」「鈴木さんが困る話と、その補充の話は何が関係あるの?」「何を戻したの?」「どうしてそれを行う必要があったの?」

何度もこのようなやりとりを繰り返していると「この人は目的語はっきりさせないと話が通じない」と認識し、主語と目的語をはっきりさせて話すようになる。

なので、私の教育に関する主たるお仕事はめんどくさい人材としての基礎訓練を行って世の中に送り込む点にあるみたい。物事には必ず二面性があるので、リンク先エントリーのような見方もあるのが面白い。私は質問できないということを問題視して、いろいろと試みているけど、質問してしまうことを問題視すればリンク先エントリーのようになるのだと思う。

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