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Web上での研究内容について何を書かない方が良いのか?

まとめ

  • 行っている研究の価値が何から発生しているのかを理解し、価値を損じる可能性のあることを書いてはいけない。
  • でも、そんなのがすぐにわかるんだったら、卒業研究や修士研究やる必要はない。研究の主責任者が教えるべき。

本文

論文や研究成果として「新規性」が求められる限り、以下の懸念は当然のこと。私もボスと相談して研究室メンバーの外部公開のポリシーを定めないといけない。

検索をしてみると、確かに期待した情報も数多く得られたのですが、学部や修士の学生が「俺こんな実験やってます!」とか「こういう研究テーマを行なっています!」という呟きがかなり引っかかり、非常に危機感を覚えました。「お前、正気か?」くらいのテンションでした。

なぜ研究テーマや実験内容をつぶやく(ネット上で公開する)のがまずいのかというと、競合する研究者に情報が漏れる可能性もあるからです。

ただし、この話は分野やテーマ、手法によって大きく異なる。一概に研究(開発も同様)についてWeb上で触れてはいけないとしてしまうとそれは羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹くになってしまう。

  • 研究への関わり方
    • 自分一人で進めている研究:公開に伴う不利益は自分一人で受ければ良いので問題ない
    • 自分が主責任者(予算執行者)として進めている研究:共同研究者に迷惑がかかるが、責任者は自分なので問題ない
    • 自分は主責任者の下で研究の一部(すべて)を進めている研究:研究に不利益がでる可能性があるので注意が必要
  • 競合者との関係
    • 競合者がいない:基本的に問題ない。
    • 競合者がおり、アイデアおよび手法がわかればわかっても、すぐには実行できない:地理的 or 物理的 or 技術的 or 金銭的 or 政治的要因により、すぐには実行できないならば、問題ない
    • 競合者がおり、アイデアおよび手法がわかるとすぐに実行されてしまう:注意が必要。世界トップレベルの実験系研究ではキーワード一つで出し抜かれる恐れがある。今までは低温・低湿度で行うのが常識である実験を「実験中蒸し暑くて…」などとつぶやいたら「アレ?」と思われる可能性もある。
  • 研究の売り
    • 売りは結果:注意が必要。過程よりも結果が重要な場合は結果を他者に出されたら終わり
    • 売りは過程:注意が必要。ただし、ある結果に至る過程は複数あるのが当たり前なので、その過程がわからければ良い。
    • 売りはアイデア(机上の話):予定された手段で外部に発表するまで黙っているべき。理論的な話は実験的・実現的話に比べて短時間で発表しやすい。
    • 売りは解釈:解釈対象のデータが独占的なものでないならば注意が必要。その場合は視点や解析手法を公開してはいけない。解釈対象のデータが非公開かつ独占的なものであるならば、むしろ視点や解析手法について公開して情報交感交換したほうが良い。

自分が取り組んでいる研究の価値は何に由来するのかによって、何について論文公開前(製品発表前)に発信してはいけないのかが変わる。一方で、研究の質を高める一般的な手法(メタ研究技術、すなわち、クリティカルリーディング(批判的に本を読む方法の理解)、論理的思考法(演繹的思考法、帰納的思考法、仮説生成的思考法とこれらの思考法の限界の理解)、証拠に基づく議論術、技術文書作成法、あと研究分野によっては協調的作業の経験など)についてはいくら発信しても何の影響もない。むしろ、互いに教えあった方が有意義。

実験に関しても、実験手順(プロトコル)そのものに価値があるならばそれを類推できることを書いてはいけない。一方で、その分野においてある実験機器を使うのが当たり前の場合、その機器の使い方や注意事項などを公開して共有するのは問題ない(むしろ、した方がよい)。

で、ここいらへんの話を学生が理解できないのは当然。SNSおよびマイクロブログ全盛時代である今は、研究の主責任者が何を述べて何を述べてはいけないのかを説明しないといけない(すなわち、今やっている研究の価値はどこから発生しているのかを説明し、理解してもらわないといけない)。それを説明する気がないなら、研究経験の練習としてバレても問題ないことを学生にやってもらうのが良い。

不特定多数を対象とした研究関連SNSおよびQ&Aサービス

企業の製品開発や企画立案もおなじだけれども、上記の「競合者に出し抜かれる」あるいは「研究・製品・企画の価値を損じる」という理由で、情報発信が難しい点が不特定多数を対象とした研究関連SNSおよびQ&Aサービスが乗り越えるべき壁。

この部分で安心感を与えないかぎり、不特定多数を対象とした研究関連SNSおよびQ&Aサービスはうまく載らない。正直なところ、私は、分野によっては、Mendeleyが行っているような論文推薦サービスすら忌避されると思っている。一番良いのは、実際に面識がありオフラインで信頼関係が構築されている人を支援する研究関連SNSおよびQ&Aサービスだと思う。そういう意味で、Twitterやブログでのこみいった研究相談は非現実的に感じている(どの段階から公開すべきでない話題に切り替わるかわからないため)。

余談:このブログの場合

一応は気をつけている。プログラミング系、サーバー管理系、メタ研究技術系については隠しても何の価値もないと思うし、私が他の方が公開してくださっていることで助かっているので、私も備忘録の代わりにまとめて公開するようにしている。研究のアイデアやメモっぽいことも書いているけど、それは今は手が回らないので誰かが先にやるならばしょうがないと割り切って載せている(私が欲しいけど、私ができないからとりあえず公開して、誰かがやってくれるのを待っているという面も大きい)。

リンク先ブログのはてなブックマークコメントにある「学生さんや院生さんの悪口をつぶやいてる教員さんもだいぶ心配にはなるよね。」が耳の痛いところ。一応、単なる愚痴で終わらせず、じゃあどうすれば良いのかに発展させてエントリーを書いているつもり。たまに、純然たる愚痴をTwitterに流しているけど。