はてなブックマークボタンの悪質なところ

自分の記事を読みに来てくれた読者のWebページ閲覧履歴をMicro Adに販売していたことです。これが、はてなブックマークの利用者がブックマークしたページの履歴(ブックマーク履歴)をMicroAdなどの広告会社に販売していたのならば、ちゃんと同意を取っている限り問題ではないです。

サービスの利用者自身が納得した上で、その人のそのサービス上の行動履歴を利用するのは別に問題ありません(それがサービス利用の対価だったりするので)。しかし、今回のはてなブックマークボタンの話はこれとは違います。

まずは、トラッキングクッキーの仕組みをご参照ください。

はてなはてなブックマークボタンを通して収集していたのは、そのブックマークボタンが置いてある記事の閲覧者のWeb上の行動履歴です。その記事の閲覧者がはてなのサービスの利用者とは限らないし、その記事を閲覧することの対価として、Web上の行動履歴(MicroAdのトラッキングクッキーを発行するスクリプトが埋め込まれているWebページへのアクセス履歴)をMicroAdへ提供することを同意していません(ほぼ、100%)。

そして、一番「はてな、やっちまったな」と思う点は、はてなブックマークボタンの設置者にちゃんと伝わるようにこの仕組みを説明していなかった点です。ブログやWebサイトの作者が、面白いコンテンツを用意すればするほど、トラッキングされる人が増えるという仕組みになっていました。

変なたとえ話で恐縮ですが、今回の話はこんな感じ。

  • 路上パフォーマンスやっている人(今回の場合、Webサイト運営者)に「これつけると、〜で便利だよね」と思わせる缶バッチ(はてなブックマークボタン)を無料で配布する。
  • 「確かに、これ便利だな」と缶バッチつけてパフォーマンスしている(はてなブックマークボタンを自Webサイトにつける)。
  • いつのまにやら、そのパフォーマンスの見物人に缶バッチから超小型無線機(トラッキングクッキー)が射出され、見物人(Webサイト閲覧者)にくっつき、以後、同じ缶バッチをつけているパフォーマー(MicroAdのトラッキングクッキー発行スクリプト設置サイト。はてなブックマークボタンを設置しているサイト以外もある)に会うたびに「この人はX月X日に〜というパフォーマンスをみていましたよ」と報告されつづける。
  • そして、路上パフォーマーはそんなことが起こっていることは知らない。
  • パフォーマーが見物人を集めれば集めるほど、行動履歴収集される被害者を増やしてしまっている。

ほとんどの場合は、Webの行動履歴ぐらいどうってことないのですが、このやり方はあんまりでしょ?(ただし、図書館の貸出本の履歴についてすら、思想・信条の自由、読書の自由の観点から問題視されている。図書館での貸出記録の保存をめぐって−行政は説明責任を果たし、市民は慎重で冷静な議論を。)なんで、あんまりかと思うかというと、私は今回の話でいうと被害者でなく加害者であるんです。

はてなブックマークボタンを外す前(2011年9月〜先日のエントリーまで)私の記事を閲覧してくれたみなさんのブラウザーにはもれなくMicroAdのトラッキングクッキーが埋め込まれており、MicroAdのトラッキングクッキー発行スクリプトはてなブックマークボタンだけでなく、忍者ツールなども)が設置されるページにアクセスするたびに、「この人は、以前別のMicroAdのトラッキングクッキー発行スクリプトが埋め込まれている〜というページも見ていますよ」と報告されていたという状態です。

「えぇー」としか言いようがないです。繰り返しますが、今回の話はサービスの利用の対価として、自分のサービス利用履歴が利用されていたという話ではありません。自分が加害者になるつもりがないのに(そして、自分に直接的なメリットがないのに)、加害者になってしまった(行動履歴を集める片棒を担いでしまった)という点が問題です。

以下の謝罪エントリーはこの部分がちゃんと説明されていません。

はてなダイアリーも使い慣れているので使い続けたいですし、はてなブックマークも便利なので使っていきたいのですが、上記のことをちゃんと説明しない点と上記のやり方自体をどう考えているのか(ちゃんとアナウンスしていないことを問題としているのか、上記のような無自覚の加害者を作るのはやっぱりまずいと持っているのか)を説明しないと、ちょっとどうなの?という感じです。

私は 前のエントリーで、今回の話をAppLogの話とか虚構新聞iPhoneアプリの話と比較していましたが、今の認識ですとそれらのよりも一段階上のやばさです。AppLogも、虚構新聞iPhoneアプリも、サービスの対価の側面といえなくもないですが(サービス利用開始時に許諾した範囲外の個人情報利用)、今回はこのサービスにかかわっていない人を個人情報収集対象としています。コネクトフリーに近い話(コネクトフリーのサービスを提供していた各店舗がはてなブックマークボタンの設置者に対応すると思う)。

今後について

はてなは皆様からのご意見を真摯に受け止め、今後は重要なお知らせについて、ユーザーの皆様に告知するよう徹底します。また、はてなブックマークボタンからの第三者への情報提供を行いません。

これからも、はてなブックマークをよろしくお願いします。
はてなブックマークボタンが取得した行動情報の第三者への送信を停止しました

ユーザでない人の個人情報収集(Web上の行動履歴収集)をしていたのだけれども、「今後は重要なお知らせについて、ユーザーの皆様に告知するよう徹底します。」でそれは防げません。一番、やばいところをちゃんと認識しているのかがすっごく心配です。

追記2:何をはてなにしてほしいか

今回の話に関する問題点をちゃんと列挙し、それぞれについてどう認識しているのか(問題とはみなさないというのもアリ)、(問題とみなすならば)なぜ発生したのか、今後どうするつもりなのか(再発を防ぐ、適切な手続きにのっとるなどなど)をちゃんと述べてほしい。

私としては、はてなダイアリーはてなブックマークも、はてなスターも使いつづけたい。でも、何をどこまで認識しており、どうするつもりなのかを述べてくれないと使いつづけても良いかどうかの判断がつかない。認識していない問題の再発を防ぐなんて不可能なので、まずは認識しているかどうかが重要だと考えている。

ぜひ、よろしくお願いします → id:jkondo