TPP締結による国民皆保険制度の崩壊について

たしか、オバマ政権はアメリカ国民皆保険制度を導入しようとしていたはずだし、国内の社会保障制度が何で通商条約によって制限をうけるのかがさっぱりわからなかったので、以下の記事を読んでそれを恐れる理屈はわかった。

主旨は、「混合医療を認めると、企業にとって保険適用外になる先進医療が利益の源泉になり、日本の健康保険適用対象とするためにクリアしなければならないハードルを越えるという動機がなくなり、保険適用外のままでいようとする。よって、本来ならば健康保険の範囲内に入るべき医療行為が入らなくなる可能性があり、混合医療を認めないときならば救えていた命が救えなくなる。」というものだと理解した。

多少はそうなるんじゃないかと思う。ただし、

  • アメリカのように国民皆健康保険制度を導入したい国およびしている国があるから、そこと連携して国民皆健康保険制度を残すようにしたら良いのではないか
  • 十分な実績が積まれれば、普通に保険適用対象の医療行為になるはず。これまでもそうやって保険適用対象を広げてきたのでは?
  • 混合医療を認めないことにより救えない命と混合医療を認めることにより救えなくなる命をくらべないと。今現在、混合医療を求めている人はいる。

混合診療」という言葉をご存じだろうか。初めて聞いたとき、いろんな治療法を合わせて行うことかと思ったが全く違った。保険のきく診療ときかない診療を組み合わせて行うことだそうだ。「なんだ、そんなことか」と思うが、では、これが我が国では認められていないということはご存じだろうか。
〜中略〜
混合診療の禁止は治療が受けられないということではなく、保険適用外の治療を受けようとすると保険適用の治療まで全額患者負担となるということだ。たとえば、保険適用になる100万円の薬を使った場合、自己負担は30万円、その上、高額療養費制度によってさらに負担が減る。この薬に加えて保険適用外の薬を10万円使った場合、患者負担は40万円ではなく110万円、さらに診察料や検査料など他の全ての費用も保険適用外となってしまうのだそうだ。

司法では、先月、混合診療で保険が適用されないのは不当だとするがん患者の訴えが最高裁で退けられた。無制限に混合診療を認めると患者負担の不当な増加を招くというのがその理由だ。判決には、特定の診療について混合診療を認める「保険外併用療養費制度」があるので、その対象を早急に拡大すべしという裁判官の意見が添えられた。

一方、規制緩和などについて民間有識者が議論している内閣府の規制改革会議などは何年も前から混合診療の解禁を求め続けている。日本では新薬の承認に時間がかかり、海外で使われているが国内で使えない抗がん剤などが多いこともその主張の背景になっている。リスクは高くとも保険がきかず高額で新しい治療法を使ってみたいという国民の声を無視すべきでないということだ。

今でも保険外の診療は受けられないわけではない。だが、上の例でいくと何十万円も負担が増す。保険外の治療を受けると、保険の対象になっている治療まで全額自己負担というのは、まるで罰ゲームのようだ。

TPPの話が始まるまで、混合診療の議論は、国民が治療法をどこまで自由に選べるかということについての考え方の違いを反映したものだと思っていた。だが、もし、ほんとうに医師会が言うように、TPPによって海外からの圧力が強まり、国民皆保険制度が危機に瀕するなら、ちょっと深刻だ。
Japan Real Time - jp.WSJ.com:TPPは国民皆保険制度を破壊する?

上の記事をみるかぎり、オール or ナッシングを医療行為でするのは良くないのではないかと思う。Google混合診療への反対意見を読む限り、その本質は「政府(厚労省)不信」にあるのだと理解した。つまり以下の懸念。

  • 本来の医療行為はすべて健康保険の対象とすべきなのに、医療費削減の理由で健康保険の範囲内とするものをわざと範囲外にする
  • 現在、健康保険の範囲内の医療行為を医療費削減の理由により、健康保険範囲外にする

実績がない(日本においては実績があるとは認められない)医療行為はどう考えても健康保険の範囲内にいれるべきではない。でも、実績がなくてもそれを必要とする患者がいる。このときに、その医療行為をどうするのか?というのが混合診療の必要性なのだけど。まあ、それなりにうまく行っているシステムは変更するなというのも経験的な真理であるわけだけど。

TPPが締結されると、この政府不信に由来する混合診療の懸念の成就する確率があがるということなんだろうか?ここのメカニズムを説明している記事を読みたい。

参考