若手行政官への推薦図書リスト

PDFファイルの提供なので抜き出してみる。

哲学

  • 福澤諭吉「文明論之概略」
    • 学問のすすめ」と「福翁自伝」とあわせ読むことが望ましい。
    • 国の独立と発展成長のためには、社会全体の知性の向上こそ不可欠であることを明快に示した、近代日本最高の古典である。
  • 福澤諭吉「明治十年 丁丑公論・瘠我慢の説」
    • 福澤の著作はどれも面白くて読み甲斐がある。短いが、具体的で迫力があり、現代の日本人にも強く訴えかけるものとなると、この2論考が先ず浮かぶ。「文明の虚説に欺かれて抵抗の精神は次第に衰退するが如し」と述べることから始まる福澤の西郷弁護論には感動するばかりだ。
  • プラトン(藤沢令夫訳)「国家(上)(下)」
    • プラトンの対話編の最高傑作であり、現代でもリアリティのある主題も含め、政治や教育の在り方に関する原理的諸問題について丁々発止の対話が展開されており、正義や国家についてのプラトンの考え方に賛同するか否かを問わず、自ら対話に加わって、原理的な問題をめぐる議論の進め方を修得することを薦めたい。

歴史・伝記

  • 網野善彦「日本社会の歴史」岩波新書(上中下)
    • <日本>の歴史ではない。日本社会は、これまでの歴史教育で学んできたよりもずっとダイナミックであり、かつ、多様な人々、とりわけ女性の活躍で進歩してきたことが述べられている。
    • 離島僻地といわれる地域が、実は交通の要衝であったこと、年貢は必ずしも米にのみ現れるものではないこと、社会の構成要素としての「民=常民」は極めて多様なものであったこと、「百姓」はイコ−ル農民ではなくいろいろな職業、商売の人と理解すべきで、また、漁民、漁村などは<海民、海村>と称した方が歴史を正しく説明できる。
  • 内村鑑三「代表的日本人」
    • 日蓮から西郷隆盛まで5人を選び、日本人の持つ特質、良さを世界に向かって知らせようと原本は英語で書いたもので、大変な反響を呼んだ。同じ時代に同じような意図で書かれ、国際的に話題となったものに岡倉天心の「茶の本」と新渡戸稲造の「武士道」がある。これら3冊はぜひ読まれるべき本である。
  • オルテガ・イ・ガセット「大衆の反逆」
    • 1920年代のヨーロッパ社会を分析して書かれたものだが、今日の日本にあてはまることの多いのに驚かされる。大衆とは何か、社会にどのような影響を与えているのか、世界を支配しているものは何か、といったことを鋭く指摘しており、必読の書である。
  • 高坂正堯「文明が衰亡するとき」
    • 巨大帝国ローマの衰亡、現代アメリカの苦悩を分析し、日本と対比するとどうなるか。現代日本の対応策を読み取ることができる。
  • 塩野七生「ローマ人の物語」
    • ローマの歴史は、内政、外交、戦争、権力抗争など国家の政治のあらゆる面とそれを導いた多様なリーダー像を容していて、現代にも、多くの深い示唆を与えている。特にその歴史が人の物語になっていることで、なじみ易く読み易い。
  • W・S・チャーチル「第二次世界大戦」1〜4(河出文庫)
    • Winston Churchill, THE SECOND WORLD WAR, Abridged one volume editionの訳書、第一冊目の最初は訳文の出来もあって読みにくいのですが、終わりのあたりから劇的な展開となっていく。国家の危機的状況の中での最高指導者の決断力、行動力、忍耐力、識見などが描かれている。
  • 半藤一利「昭和史(1926―1945)」「昭和史〈戦後篇〉(1945―1989)」
    • いろんな機会に昭和史の断片にふれることはあるが、昭和の全時代を通じたものにふれる機会は少ない。行政官として今日に直につながる歴史を知ることは、とても大切なことであると思う。本書は、昭和通史としてわかりやすく記述している。一読することをおすすめしたい。
  • ベンジャミン・フランクリン(松本慎一・西川正身訳)「フランクリン自伝」(岩波文庫)
    • ベンジャミン・フランクリン(1706〜90)というと、われわれ日本人は凧を揚げて稲妻が電気であることを証明した実験を思い出す。しかし、それは彼が46歳の時で、17歳でフィラデルフィアに現われた家出少年はその頃にはすでにりっぱな経済的社会的地位を築いていた。
    • 「フランクリン自伝」が世界の人々に愛読される所以は、むしろ電気の研究などができるような余裕を持つに至るまでの若き日の刻苦勉励ぶりであろう。自伝はとかく出世物語になりがちなものだが、「フランクリン自伝」には現代の公務員にとっても大切な教訓が数多く含まれている。彼は23歳のときに13の徳目を選んでその実行を自らに課した。そのうち、13番目の徳目「謙譲」はあとから追加したものである。彼は人間の感情の中で「自負心」ほど抑え難いものはないと気づき、高慢・不遜な態度をとらないよう努力した。謙譲を旨としてことば遣いに注意するようになってから、彼の説得力は一段と増し、商売上も公的発言の上でも非常に役に立ったと述べている。また、いきなり自己主張をすることなく、事前に雰囲気を作っておくことの重要性も説いている(彼はこの目的のために、時には自分が発行している新聞を利用した)。
    • フランクリンは、独立宣言、米仏同盟条約、対英講和条約、合衆国憲法という独立時の最も重要な四つの公文書に署名している。米国人のみならず世界中で尊敬の的になった賢人の自伝は、日本にとって最も重要な国といえる米国と米国人の理解のためにも必読の書といえよう。

続く予定。

追記(2011年11月14日)

続けなくてごめんなさい。人事院が公開してくれました。