PDFファイルの提供なので抜き出してみる。
哲学
- 新渡戸稲造「武士道」
- 新興国として勃興しつつあった日本に対する偏見を意識しつつ、「日本人の魂」とは何かを世界に発信した書。
- 福澤諭吉「文明論之概略」
- 「学問のすすめ」と「福翁自伝」とあわせ読むことが望ましい。
- 国の独立と発展成長のためには、社会全体の知性の向上こそ不可欠であることを明快に示した、近代日本最高の古典である。
- 福澤諭吉「明治十年 丁丑公論・瘠我慢の説」
- 福澤の著作はどれも面白くて読み甲斐がある。短いが、具体的で迫力があり、現代の日本人にも強く訴えかけるものとなると、この2論考が先ず浮かぶ。「文明の虚説に欺かれて抵抗の精神は次第に衰退するが如し」と述べることから始まる福澤の西郷弁護論には感動するばかりだ。
- John Stuart Mill(ジョン・ステュアート・ミル),“On Liberty”(「自由論」)
- 個人に最小限度の選択の自由を賦与しつつ、社会全体としての決定の効率性を保障するためには、社会・経済システムはどのような性能を備えているべきか。この難問の出発点に位置するミルの「自由論」は、繰り返して熟読する価値のある古典中の古典である。
歴史・伝記
- 網野善彦「日本社会の歴史」岩波新書(上中下)
- <日本>の歴史ではない。日本社会は、これまでの歴史教育で学んできたよりもずっとダイナミックであり、かつ、多様な人々、とりわけ女性の活躍で進歩してきたことが述べられている。
- 離島僻地といわれる地域が、実は交通の要衝であったこと、年貢は必ずしも米にのみ現れるものではないこと、社会の構成要素としての「民=常民」は極めて多様なものであったこと、「百姓」はイコ−ル農民ではなくいろいろな職業、商売の人と理解すべきで、また、漁民、漁村などは<海民、海村>と称した方が歴史を正しく説明できる。
- 大谷藤郎「ひかりの足跡―ハンセン病・精神障害とわが師わが友」
- 本書は、ハンセン病などに係る医療行政の中枢を長年担い、患者をはじめ沢山の人々から慈父のように慕われた著者の思想と実践の書である。大部だが目を通されることをのぞむ。
- オルテガ・イ・ガセット「大衆の反逆」
- 1920年代のヨーロッパ社会を分析して書かれたものだが、今日の日本にあてはまることの多いのに驚かされる。大衆とは何か、社会にどのような影響を与えているのか、世界を支配しているものは何か、といったことを鋭く指摘しており、必読の書である。
- 北岡伸一「政党から軍部へ<日本の近代 第五巻>」(中央公論新社)
- 外国と交際するとき、自国の歴史に関する知識は必要不可欠。過剰なナショナリズムや自虐意識に汚染された非学問的な著作が氾濫している中で、最も信頼できるバランスのとれた著作。手に入らない場合には、「<増補版>清沢洌:外交評論の運命」(中公新書)を勧めたい。
- 「<増補版>清沢洌:外交評論の運命」(中公新書)
- ポール・ケネディ「大国の興亡」
- 大きな歴史の流れを史実から解説されており、その社会的特質が理解できる。
- 高坂正堯「文明が衰亡するとき」
- 巨大帝国ローマの衰亡、現代アメリカの苦悩を分析し、日本と対比するとどうなるか。現代日本の対応策を読み取ることができる。
- 塩野七生「ローマ人の物語」
- ローマの歴史は、内政、外交、戦争、権力抗争など国家の政治のあらゆる面とそれを導いた多様なリーダー像を容していて、現代にも、多くの深い示唆を与えている。特にその歴史が人の物語になっていることで、なじみ易く読み易い。
- W・S・チャーチル「第二次世界大戦」1〜4(河出文庫)
- Winston Churchill, THE SECOND WORLD WAR, Abridged one volume editionの訳書、第一冊目の最初は訳文の出来もあって読みにくいのですが、終わりのあたりから劇的な展開となっていく。国家の危機的状況の中での最高指導者の決断力、行動力、忍耐力、識見などが描かれている。
- 半藤一利「昭和史(1926―1945)」「昭和史〈戦後篇〉(1945―1989)」
- いろんな機会に昭和史の断片にふれることはあるが、昭和の全時代を通じたものにふれる機会は少ない。行政官として今日に直につながる歴史を知ることは、とても大切なことであると思う。本書は、昭和通史としてわかりやすく記述している。一読することをおすすめしたい。
- ベンジャミン・フランクリン(松本慎一・西川正身訳)「フランクリン自伝」(岩波文庫)
- ベンジャミン・フランクリン(1706〜90)というと、われわれ日本人は凧を揚げて稲妻が電気であることを証明した実験を思い出す。しかし、それは彼が46歳の時で、17歳でフィラデルフィアに現われた家出少年はその頃にはすでにりっぱな経済的社会的地位を築いていた。
- 「フランクリン自伝」が世界の人々に愛読される所以は、むしろ電気の研究などができるような余裕を持つに至るまでの若き日の刻苦勉励ぶりであろう。自伝はとかく出世物語になりがちなものだが、「フランクリン自伝」には現代の公務員にとっても大切な教訓が数多く含まれている。彼は23歳のときに13の徳目を選んでその実行を自らに課した。そのうち、13番目の徳目「謙譲」はあとから追加したものである。彼は人間の感情の中で「自負心」ほど抑え難いものはないと気づき、高慢・不遜な態度をとらないよう努力した。謙譲を旨としてことば遣いに注意するようになってから、彼の説得力は一段と増し、商売上も公的発言の上でも非常に役に立ったと述べている。また、いきなり自己主張をすることなく、事前に雰囲気を作っておくことの重要性も説いている(彼はこの目的のために、時には自分が発行している新聞を利用した)。
- フランクリンは、独立宣言、米仏同盟条約、対英講和条約、合衆国憲法という独立時の最も重要な四つの公文書に署名している。米国人のみならず世界中で尊敬の的になった賢人の自伝は、日本にとって最も重要な国といえる米国と米国人の理解のためにも必読の書といえよう。
- 山田済斎(編)「西郷南洲遺訓」
- 人倫の道、経国済民の責任を担う者の厳しい倫理等を説いた書。
- 渡辺京二「逝きし世の面影」
- 日本の近代化、西洋化の過程で失われていった「古き良き日本」の庶民の明るさ、優しさ、思いやり、親切さ等を外国人の眼を通して描いた書。
- 「日暮硯」(笠谷和比古注釈、岩波文庫)
続く予定。