この記者さん特有かもしれないけど、偽陽性率と偽陰性率がわかるように数字を載せているのが新鮮。
血液中に含まれるリン酸の濃度を測り、うつ病を診断する検査法を、慶応大の研究成果をもとにしたベンチャー企業が開発した。従来、研究されてきた血液による診断法に比べ簡便なことが特徴。健康診断で使うことで早期発見につながる可能性がある。
開発したのは「ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ」(山形県鶴岡市)。22日に、東京都で開かれる日本生物学的精神医学会で発表する。
同社は、国立精神・神経医療研究センターで「大うつ病性障害(うつ病)」と診断された31人と、年齢や性別の構成が近い健康な35人の血液を分析。うつ病患者は、血漿(けっしょう)中の「エタノールアミンリン酸」の濃度が低いことを見つけた。
このリン酸の濃度を調べて、うつ病患者を正しく診断できた確率は82%、健康な人をうつ病でないと診断できた確率は95%だった。 (強調はnext49による)
イメージとして、新聞は常に「うまくいく可能性」だけに着目して記事にすることが多かったように思う。でも、この記事は誤る確率もわかるように載せている。プレスリリースが良かったのか、記者が良かったのか。でも、この記事だと検査を受けたときにどのくらいその結果を信じて良いのかがわからない。
数年前に読んだ数字に弱いあなたの驚くほど危険な生活―病院や裁判で統計にだまされないためにに、偽陽性や偽陰性という言葉がでてきていた。病気の検査であるならば、病気で無いのに病気と判断される(偽陽性)、病気なのに健康と判断される(偽陰性)だったと記憶している。
-- | 実際に大うつ病 | 大うつ病でない |
検査結果で大うつ病 | 真陽性 | 偽陽性 |
検査結果は大うつ病でない | 偽陰性 | 真陰性 |
「数字に弱いあなたの驚くほど危険な生活―病院や裁判で統計にだまされないために」の自然頻度という考え方で、実際に検査を受けたときに「大うつ病」と判断されたとき、本当に大うつ病である人数を考えてみる。
わが国のうつ病の有病率は、大うつ病の12カ月有病率*が2.2%、生涯有病率*が6.5%、また、軽症うつ病の12カ月有病率は0.8%、生涯有病率が2.7%と報告されています。およそ30人に1人が過去12カ月間に、およそ10〜15人に1人がこれまでの生涯にうつ病を経験した計算になります。
また、男女比でみると、女性の方がうつ病になりやすく、およそ男性の2倍多いと考えられています。
大うつ病の12ヶ月有病率を使って考えると、1000人中、22人が大うつ病、978人が大うつ病でない。大うつ病の22人中18人(22×8.82=18.04)がこの検査により大うつ病と判断され、残り4人が大うつ病ではないと判断される。大うつ病でない978人中929人(978×0.95=929.1)は大うつ病でないと判断され、49人は大うつ病と診断される。だから、この検査で大うつ病でないと診断されたときに、本当に大うつ病でない確率は99.57%。よって、検査結果をほぼ信じてよい。逆に大うつ病だという検査結果のとおり大うつ病である確率26.85%なので、より詳細な検査が必要だと思われる。表にまとめると以下のとおりになる。
-- | 実際に大うつ病 | 大うつ病でない | 検査結果が信じられる確率 |
検査結果で大うつ病 | 18人 | 49人 | 26.85% |
検査結果は大うつ病でない | 4人 | 929人 | 99.57% |
有病率に生涯有病率6.5%を使うと以下のようになる。
-- | 実際に大うつ病 | 大うつ病でない | 検査結果が信じられる確率 |
検査結果で大うつ病 | 53人 | 47人 | 53.00% |
検査結果は大うつ病でない | 12人 | 888人 | 98.66% |
大うつ病であるという検査結果の信頼性がグッとあがるんだ。へぇー。