御用学者でしょうか

「安全ですか?」っていうと
「現状の放射性物質の降下量からするとただちに健康に影響はありません」っていう。
 
「ただちに?じゃあ、数年後には影響があるってこと?」っていうと
「確率的事象なので、すべての人がこれを由来としたガンになるってわけではない」っていう。
 
「安全かどうかだけが知りたいんだ!」っていうと
「多面的に情報を集めて自分で判断するしかない」っていう。
 
そうして、あとで
不安になって、
 
「あなたの言っていることは政府発表と同じじゃないですか!」っていうと
「現在、手に入るデータを解釈すると結果として同じになっているだけです」っていう。
 
御用学者でしょうか、
いいえ、専門家なら誰でも。

一つの指針

以下のエントリーの提案に賛成です。

レッテル貼りでなく発言の中身のチェックをで書いたとおり、レッテル貼りでなく、発言の中身をみてチェックするべきだと思いますが、発言内容が理解できず、どうしても不安になってしまうならば、適切なレッテルを利用して、情報を絞り込むべきです。

たとえば、原発業界御用学者リスト @ ウィキなどを例として、「あの発言はウソだ!デマだ!」といっている人は、普段はどんな良いことを言っている人でも、今に限り、信用しない側にえり分けて良いと思います。あのリストは基本的に「今の状況が安全であるなんて信用できない」という考えから、逆算して、その考えに反する発言をする人を御用学者としているだけです。

どうせ、内容をチェックしないなら、kikulog:地震・津波・原発についての信頼できない情報源kikulog:地震・津波・原発事故に関する信頼できそうな科学情報を参考にしたほうが良いです。

追記

パロディーにこういう注釈をつけるのは無粋ですが。

「ただちに」をどう考えたら良いのかについては以下をご覧になられたら良いと思います。

追記2:はてなブックマークコメントより

  • yu-kubo どうしてみんな,こう流行に乗りたがるのか,わけがわからないよ。(←お前もな)

私もQBネタで作りたかったです。でも、さっぱり思いつきませんでした。

  • T-3don 専門家の仕事は不安を打ち消す事じゃないしね。
  • amamako id:T-3don"専門家の仕事は不安を打ち消す事じゃない"じゃあ誰がそれを打ち消すのか、どのように分業を行っていくかが、震災以降の課題となっていく(というかもうなっている)のだろうな。

正しいデータおよび、検証可能かつ妥当と思われるデータの解釈を提示するのが専門家の第一義的な役割だと思います。いろいろな方がおっしゃっていますが「安全」と「安心」は違っており、「安全」であると説得されても「安心」できないことは結構あると思います。

このパロディーを「そうだよねぇ」と思う方の多くは、今回の件に関して「安心」を諦めている方じゃないかなと個人的に思っています。安全なところへ避難するコストと止まることによるリスクを比べ続けなければならない状況ですから、そもそも「安心」できるわけないです。

  • mad-p「御用学者」も結局はレッテル貼りなんだよな。自分で調べずにまるごと受け入れるかまるごと拒否するかのどっちかを選びたい心理なのか。リスクを0/1でしか考えようとしないのと同じ?

情報処理のコストを下げる方法としてレッテル貼りは悪くない戦術だと思います。自分の知識では、個々の発言の妥当性を判断できないと自分で認識した上で、発言者で発言の内容の妥当性を近似するという発想は、素直な発想だと思います。

ただし、この御用学者というレッテルはあまりにも粗雑に見えたので、このエントリーを書きました。実際に御用学者と呼ばれるべき人はいるんでしょうが、「チェルノブイリ以上の悪い状態」と言わない人たちは全員御用学者なんていう粗雑な基準じゃあ、発言者で発言内容の妥当性を近似する戦略をとった人たちにとって、あまりにもアレです。

  • wh_cm 本郷に住んでいる身としては、理学部や工学部から人がいなくなってから慌てるのでもいいんじゃなかろうかと思っている。

良い判断基準だと思います。ただ、正常性バイアスにお気をつけください。

  • @htsujii 専門家なんて、ある分野で論文を1本書けば、世間的にはそう呼ばれる。むしろ、常識人であることの方が大事だと思う。

だからこそ、発言内容の妥当性で判断すべきだと思います。

  • @happylab まぁでも、確率論的事象を自分で考えろって言われても数学者じゃないし

これは、私の言葉の選択がいまいちという皮肉ですね。「確率的事象」という言葉を使ってすみません。

  • aoi-sora 自己決定、自己責任。その陥穽は、自己決定に必要な情報が十分かということと、確かな情報を読み解くための知識と技術が身についている必要があるということ。原子力工学のことなんて、普通は知らんよ。

おっしゃるとおりだと思います。だからこそ、自分から2〜3人介して、要な情報が十分かということと、確かな情報を読み解くための知識と技術が身につけている人にたどりつけるような社会が望ましいわけです。日本の教育システムに関する今の私の考えで書いた「高校と社会の間のギャップを埋める知識・技術を教育する機関」の必要性は、今回の状況で示されつつあると感じています。

  • elm200 御用学者じゃなければ「被曝量は社会全体で増えますから、被曝量に比例して将来、がんになるひとは増えますが、他の原因でがんになったひとと区別できません」っていうんじゃない?

言わないと思います。「メカニズムからすると被曝量に比例して将来、がんになるひとは増えると考えられますが、他の原因でがんになったひとと区別するのが難しいので、今のところ実際に被曝量に比例して将来がんになるひとは増えるかどうかは明らかではありません」と言うのだと思います。

実際には、統計的にがんが増えたのかどうかをチェックしているのだと思いますが。

  • ahmok 御用学者は政府発表のデータしか使ってないってこと。専門家なら独自にデータ集めろよ。つまり、御用学者(自称専門家)はアテにならないから、自ら専門家になりましょうという話にしか聞こえない。

間違い。資金と権力を持っていない専門家は、基本的に東京電力保安院発表のデータしか使用できていません。私も実験で訓練されていないので良く忘れますが、Googleでキーワード入れたらすぐにデータ出るわけではないのです。

  • highAAA 「ただちに影響はない」「絶対に影響はない」どっちにしても不安になる一般人です。専門家の人が誠実なのは知ってる!自分で打ち勝つしかないんだよなあ。

「今、自分は不安である」と認めて、そこで終わりにするしかないと思います。不安なものは不安です。実際にスリーマイル島以上チェルノブイリ以下(今のところ)の歴史に残る原発事故は起きているのですから。不安に思わない方がおかしいくらいです。