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卒業論文第0稿を1日ででっち上げる法

はじめに

マライア・キャリー山下達郎が君臨する季節が参りました。もう、時間がありません。卒論を書き始めましょう。

あくまで第0稿です。指導してくれる教員や先輩に提出すると鉄拳制裁が飛びます(鉄拳が飛ばない場合は、言葉の大量破壊兵器が飛んであなたの心を砕きます)。

必ず、第1稿に品質向上をしてから提出しましょう。

第0稿の目的

うまれて初めての論文執筆はそんなに簡単な作業ではありません。第0稿の目的は精神的な安心感を得ることにあります。0(ゼロ)から1を生み出す作業と1を10にする作業を比べた場合、明らかに前者の方がつらいです。そこで、ひどい代物であったとしても1を用意し、精神的ハードルを下げようというのが目的です。

第0稿が満たすべき条件は以下のとおりです。

  1. 書式が提出版と同じである
  2. PDFにしたときに、一見、出来上がっているように見える
  3. 何を書くのかがおおまかにつかめる
  4. 図、表、例題、ソースコード、数式の配置がだいたい決まっている。

前提:構成案が整っている

俺様に論文を指導してもらいたければ以下の手順を踏みやがれ!のとおり、構成案ができあがっているものとします。もし、まだ、構成案ができてないならばこちらを先に終えてください。

心得

高速に第0稿をでっちあげるためには以下の心得が重要です。

  • 誤字・脱字上等!
  • コピペ上等!
  • 違和感はハワイに旅行しろ!
  • 反省はおとといきやがれ!

勢いが重要です。絵を描くとき、彫刻を彫るときのどちらも、大雑把なアウトラインをつくることから始めて、綺麗に仕上げるのは最後にします。いきなり細かいところから始めると、全体のバランスが崩れます。細かい直しは第0稿から第1稿への品質向上の際に行います。

作成順序

頭を使わないところから作業を進めるのがコツです。特に、できる限り早く書式が整って、論文っぽく見えるようにするのが肝要です。

  1. 先輩の卒論原稿の入手
  2. 表紙の作成
  3. 章・節・小節の作成
  4. 参考文献リストの作成
  5. 図、表、数式、ソースコードの作成&貼り付け
  6. コピペ
  7. 文章の執筆

先輩の卒論原稿の入手

まず、自分の研究とある程度似ている(特に構成や話の進め方が似ているのを選ぶのがコツ)先輩の卒業論文原稿を入手します。なぜ、これを行うかというと書式を整える作業で手抜きをするためです。ですから重要なのは書式です。以下の順番で適切な論文を選んでください(数字が小さいほど優先度が高い)。

  1. 書式が今年度の書式と同じである(似ている)
  2. 論文構造が自分の書きたい論文と同じである(似ている)
  3. 研究成果の主張の仕方が自分の書きたい論文と同じである(似ている)
  4. 背景、目的、専門用語が自分の書きたい論文と同じである(似ている)

論文を入手したならば、作業ディレクトリ(フォルダ)を作成します。自分の名字が田中ならば、「Tanaka_B10」とでもディレクトリ名をつけましょう。卒論に関するファイルがすべてこのディレクトリに格納するようにしてください。バックアップをとるのが簡単になります。

入手した先輩の卒論原稿を「Tanaka_B10.tex」(Wordならば.docかdocx)と名づけます。

SubversionやGitなどのバージョン管理システムでTanaka_B10のディレクトリごと管理しておくと、操作を間違ったたときのダメージが減ります。

表紙の作成

表紙を今年度版に作り変えます。基本的には以下を変えるだけで良いはずです。

  • 提出年月日
  • タイトル
  • 氏名、学籍番号
  • 指導教員名
  • (所属名変更があったら)所属
  • 市町村合併などがあったならば)住所

この段階で、一度PDFファイルを作成し、表紙を眺めてみましょう。なんか、やり遂げた感がでてくると思います。この「なんとなく、一仕事終えた」という満足感が重要です。適宜、自分を褒めましょう。

また、作業の一区切りごとにバックアップをとるのを忘れないでください。バージョン管理システムで管理するならば、トイレやお茶くみのために席を離れるたびにコミットしてください。手動で丸ごとバックアップならば、少なくとも半日に1度バックアップをとってください。

章・節・小節の作成

次に、構成案で作った章・節・小節のタイトル、トピックセンテンスをコピーしていきます。

  1. 元の文章をそのままに章・節・小節のタイトルだけ置き換える
  2. 元の文章をそのままに各章、節、小節のそれぞれのトピックセンテンスをそれぞれの章、節、小節の冒頭にコピーする。
  3. LaTeXの場合)ラベルを置き換えた章・節・小節のタイトルに合うように置き換える(エディタの置き換え機能を使う)
    • 私の場合は\label{chapter:〜}、\label{sec:〜}、\label{subsec:〜}という名づけ方をしている。

LaTeXやWordの場合、この時点で目次が作成されます。また、PDFファイルを作成して、画面に表示し、満足感にひたりましょう。ボリュームといい、見た目といい論文がかけているような錯覚に陥るはずです。

参考文献リストの作成

引き続き、頭を使わない作業に没頭します。次は、参考文献リストを作ります。今現在、参考文献に使うとわかっている文献をすべて参考文献リストに列挙します。

ここで重要なことは、指定されている書式どおりに丁寧に参考文献リストを作るという点です。参考文献リストを何度も作り直すのは手間がかかりすぎます。一度目の作成で、綺麗に作ってしまいましょう。

参考文献リストの書式は、指定があるならばそれに従い。指定がないならば、科学技術情報流通技術基準:参照文献の書き方に従っておけば無難です。後の編集や対応付けを簡単にするため、著者名順で参考文献リストを作っておくと良いと思います。

BibTeXを使う場合は.bibファイルを用意しておけば良いです。BibNameは自由で良いです。私は「ファーストネームの頭文字.姓_キーワード_会議or雑誌名略称XX」というルールにしています。Naoto Kan: Datsu Ozawa, Proc. of International Conference of Minshu, March 2010 という政治に関する文献があった場合は、「N.Kan_Political_ICM10」とBibNameをつけています。

図、表、数式、ソースコードの作成&貼り付け

ちょっと、頭を使う作業に入りましょう。必要となりそうな図、表、数式を作成します。また、必要に応じて、ソースコードを貼り付けます(アルゴリズムを表すために擬似コードを作成します)。

IMRAD(Introduction, Method, Result, Abstract, Discussion)の構成になっている論文の場合、図、表、数式、ソースコードはMethod、Result、Discussionに登場するはずです。構成案と研究の成果(実験結果、調査結果、理論式、ソースコードなどなど)を眺めながら、必要そうな図、表、数式、ソースコードを作成しましょう。

重要なのは必要そうであるということです。実際にはどういうものが本当に必要な図、表、数式、ソースコードなのかは作りながら考えます。とりあえず、研究成果をいじくりまわして、トピックセンテンスを補強する図、表、数式、ソースコードを作成してください。

そして、作成したらそれを原稿に貼り付け、その説明文もあわせて書いてください。ざっとでかまいません。また、ラベルも貼り付け、本文中で参照できるようにしておきましょう。LaTeXの場合なら、私は以下のようにラベルを命名しています。

  • 表:\label{table:〜}
  • 図:\label{fig:〜}
  • 式:\label{equation:〜}
  • アルゴリズム: \label{alg:}

これが終わったら、元の原稿に存在した図、表、数式、ソースコードを削除してください。

その後、また、PDFファイルを作成して眺めてみてください。どうですか、かなり論文っぽいですね。

コピペ

続いて本文の執筆に入ります。まずは、論文で書きそうな文章を他の文献からコピペします。当然「コピペして良いのか?」という疑問が浮かぶと思いますが、構いません。ただし、最終的には加工します。

まずは、剽窃を気にしないで論文に必要そうな事柄は手当たりしだいコピペしてください。また、コピペ元の文が日本語だろうが英語だろうが、常体でかかれていようが敬体でかかれていようが気にせずとりあえずコピペしてください。ただし、出典を必ずメモしておいてください(出典がわからなくなると後で地獄をみます)。

コピペ手順

  1. 元の原稿において流用できそうなところ以外は削除する
  2. 流用できそうな部分を適切なトピックセンテンスの説明センテンスとして配置する
  3. 参考文献からトピックセンテンスの説明センテンスとして必要そうな部分をコピペしてくる(括弧書きで出典をメモしておく)

加工します。

  1. 常体にそろえます
  2. 表現を整えます
  3. 一言一句まるごと使う場合:引用符で括り、参考文献を引いて引用として使います。
  4. 要約してつかう場合:要約した事実や主張を誰がしているのかを示すために参考文献を引きます。
  5. 一般的な事柄(教科書に記載されているような事柄)の説明の場合:読者の前提知識、前後の文章との整合性を考慮して、語句や文章の追加削除をします。一般的な事柄の説明は、ちゃんと説明しようとすると誰が説明しても同じような文章になりますので剽窃をそれほど気にしないで結構です。
  6. 文の構成だけ使う場合:現象の説明の仕方などは決まりきっているので、単語や数値を置き換えて使います。
  7. 文章の構成だけを使う場合:テーマによって話の展開を流用できるので文を置き換えて使います。

この時点では、説明不足や論理の飛躍など不自然な点がバリバリ残っていると思いますが、とりあえず気にせずガンガンとコピペします。

IMRADの構成の場合、M→R→D→I→Aの順番で作業した方が効率が良いと思います。IntroductionとAbstractは論文執筆で一番難しい章です。

また、PDFファイルを作成します。そして、この段階でのものを印刷します(両面印刷で十分です)

文章の執筆

色付きペンを用意します。印刷したものを音読(声に出せない環境でも心の中で声に出して読み上げます)。すると、誤字・脱字、論理の飛躍、説明不足、意味不明な点がどんどんと目に飛び込んでくると思います。気が付いた段階で原稿にどんどんとメモしてください。ただし、すぐに編集に向かわず、頭からお尻まで読み終えてください。

あなたは、自分が作ったものがかなりひどい代物であると気づいたはずです。しかし、なんとなく、自分の書きたいことの大まかな姿が見えているはずです。そこで、もう一回、音読します。そして、きがついたことを原稿にメモします。

この原稿に書かれた不備をすべて潰すことを目的として、文章を追加していきます。IMRADの構成の場合、M→R→D→I→Aの順番で作業した方が効率が良いと思います。

終わったら、PDFファイルにします。論文の第0稿の雄姿を眺めましょう。

第0稿の完成、第1稿への道のりの始まり

ここまで終えたならば、第0稿が満たすべき条件はすべてクリアしているはずです。

  1. 書式が提出版と同じである
  2. PDFにしたときに、一見、出来上がっているように見える
  3. 何を書くのかがおおまかにつかめる
  4. 図、表、例題、ソースコード、数式の配置がだいたい決まっている。

1日でできると書きましたが、1日8時間作業して3日ぐらいかかっていると思います。でも、それは太陽系第三惑星が3回自転したというだけで、あなたの諦めないこころは1日目の72時間目をがんばっているだけです。気にしたら負けです。

第0稿から第1稿にするには以下の自己チェックリストの力を借りるのが良いと思います。

また、先輩や指導教員に第1稿をみてもらう際には以下のエントリーを読んで気持ちよく指導してもらえるように準備してください。

おわりに

私の経験からすると卒業論文は最低でも第4稿にならないと提出レベルには達しません。それぐらい、卒論生のみなさんは大学3年生までに報告書を書く訓練が足りません(私が学生のときももちろんそうでした)。

優しい先輩、指導教員に十分な時間を与えて、論文を指導してもらいましょう。もし、不幸にして、あなたがそういう環境にいないのであれば同級生同士で論文の読みあいをしましょう。その際には上記の MyOpenArchive:卒業論文・修士論文自己チェックリストを参考にしたり、大学院生が卒論・修論指導をすべき理由とそのやり方に従い、礼儀正しく指導してあげる/もらうようにしましょう。

追記

タイトルからすると、手抜きで卒論を仕上げる方法みたいですが、そうではなく書き始めの負担をできる限り下げる方法です。この方法は、R. Lewis et al: 科学者・技術者のための英語論文の書き方のStory Board の作り方を応用したものです。

上記の本から該当部分を引用。

Story Boardは、何かをつくるときに、その最終的なイメージを明確にするためによく使われる。論文執筆の場合にもStory Boardは役に立つ。
〜略〜
まず、投稿しようとする雑誌から、自分が書こうとしている論文に対応する論文を一つコピーする。その論文を見れば、何語ぐらいで論文を書けば良いか、表題や図、参考文献などにどのくらいのスペースを割けば良いかをしることができる。
〜略〜
次いで、同じ雑誌から文章だけのページをコピーする。(もし、そのようなページがなければ自分で作れば良い)。このコピーを使って、主題(タイトル)や参考文献、そして本文だけからなる論文をつくる。そこに、Introduction, Methods, Results, Discussionなどのsection titleを加える。このとき、各sectionの大きさは、それぞれのsectionにどの程度のデーターを入れたいかという、自分のイメージに合わせて決める。それから、Materials, MethodsというようなMethods sectionに対応するsub-titleや場合によあってはResultsやDiscussionに対応するsub-titleを加える。各section titleやsub-titleの間のスペースが本文を書くときに使えるスペースである。次に、書こうとする論文に必要だと考えている表や図を加えてみる。たとえ、必要な図や表すべてに対し完全なイメージが出来上がっていなくても、せめて何が必要かということに関してかなりしっかりした考えを持っていなければならない。
〜略〜
このStory Boardは、書こうとする論文の構成や、書くsectionやsub-sectionに配分する単語数がよくわからない経験の浅い書き手にとって、とても便利である。
〜略〜
Story Boardを用いる利点の一つは全体の字数の目安をつけられることである。
(pp. 126 - 127)