研究費・プロジェクト系教育経費の 効果的予算措置に関する中間報告 (案)

文科省:第2回会合(予算監視・効率化チーム)の配布資料にある別紙(資料3)研究費・プロジェクト系教育経費の 効果的予算措置に関する中間報告(案)(PDF)を読んだ。

民主党政権になってふがいないような感じを受けるけれども、文部科学副大臣の鈴木さんを中心とした、情報公開、プロセス公開、意見収集をしようという試みは素直に素晴らしいと思う。「大学教員」や「研究者」とひとくくりにされがちなように、「官僚」や「霞ヶ関」とひとくくりにしがちだけど、良いことをしてくれる人を味方にし、邪魔臭いことしてくれる人を傍観させるのが物事を進める基本なので、大いにエールを送りたい。

上記の「研究費・プロジェクト系教育経費の 効果的予算措置に関する中間報告(案)(PDF)」は、以下の意見収集結果がほぼそのまま記載されている。

茂木さんがエントリーに上げている「より有効な使い方の模索」についても検討されている。

特に8ページの「研究者・研究機関が研究資金を効果的・効率的に活用できるようにするため、競争的資金の使用に関わる各種ルール等を統一化及び簡素化・合理化する。」は、巨悪がいないし、心躍らない地味な動きなのだけど、地味だけに徹底されると現場にとって、研究者を支援してくださる事務のみなさまにとってかなり嬉しい話。

  1. 研究費の合算使用ルールを他の競争的資金制度に取り入れる【運用事項】
  • 一部の制度で認められている研究費の合算使用ルールを他の競争的資金制度に取り入れる
  1. 費目構成の統一化【運用事項】
  • 経費は「直接経費」「間接経費」「再委託費・共同実施費」の3つの区分とするとともに、直接経費の区分は、「物品費」「人件費・謝金」「旅費」「その他」の4つを基準とする
  1. 繰越手続きの簡略化・弾力化【運用事項】
  • 研究費のうち国からの補助金及び国からの委託費については、まずは、科学研究費補助金の事例を参考に、繰越に必要な書類の簡素化を図る
  1. 費目間流用ルールの統一化【運用事項】
  • 流用可能な範囲を直接経費の一定割合とする
  1. 実績報告書の提出期限の延長 【運用事項】
  • 実績報告書などの必要な報告書の提出期限を5月末までとして統一化する
  1. 経費の使途に関する確認【運用事項】
  • 直接経費及び間接経費の趣旨及びその使途を各研究機関に対して十分に周知する
  1. 研究費を容易に返還できる仕組み作り【運用事項】
  • 全ての研究費について、配分機関として未使用額がどのように生じたのか確認する必要があると判断した場合にのみ、理由書を求めることとする

(色付けはnext49)

特に賛成するのは、繰越、実績報告書の提出期限の延長、使わなかった研究費の返還。研究は未だ誰もしらないことに対して挑戦する行為なので、予想通りに進むことが少ない。繰越や返還は予想外のことが起きたときに、与えられた予算を有効活用(場合によっては返却して無駄遣いをしない)ことを許してくれる。また、実績報告書の提出期限が5月末に延びることで、期限一杯(2〜3月)に実験がおこなえるし、5月の連休前の入学&授業開始時のどたばたと報告書作成がかち合わないのでとってもありがたい。

次の9ページ目の「)研究費の電子申請システムの充実と研究成果情報の活用促進」にも賛成。特に「政策決定に必要なエビデンスの整備にも貢献する」という文言はとても重要だと思う。今の時代、カンや経験に基づく政策決定は無理。科学行政もデータを蓄積すべきだと思う。また、e-RadReaDに並んで、Researchmapという言葉がでてきているのも良いことだと思う。Researchmapに登録している研究者や大学院生もいまや3500人超えだし。

そして、地味ながら本当に必要とおもうのが、14ページの「効率的な調達を可能とする購買システムの構築」にある以下のクレジットカード導入の検討。

2.各研究機関におけるクレジットカード導入の検討 【周知事項】

  • 各研究機関の実状にかんがみ、不正使用防止等の所要の措置を講じた上で、効果が大きいと考えられる場合においては、物品購入時におけるクレジットカードの導入を推進することが期待される(最も効率的なシステムの導入が期待されるものであり、研究者個人所有のクレジットカードによる立て替え払い及びコーポレートカードの導入等の形態を問わない)

私も熟議で教えてもらうまで勘違いしていたのだけど、研究費を用いて物品を購入する際にクレジットカードの使用を使えるかどうかは、各研究機関ごとの方針によって定められており、文科省が禁止していたのではないということ。これは「周知」&「他大学での事例」を示すことでどの大学でも導入できる可能性があるのが素晴らしい。

今やネットでいろいろと物が変える時代で、クレジットカードが使えないと本、論文、試薬、文房具、出張のためのチケット、ホテルの予約、国際会議の参加登録などが一切できない。研究者個人所有のクレジットカードによる立替払いだと、支払い証明書を所属機関に提出しないといけないため、できるかぎりコーポレートカードの導入が好ましい(さらにいえば、研究室単位で)。大学の研究室ごとにコーポレートカード出したら、年間数十万〜百数万円はカード使ってくれるんだから、カード会社もかなりねらい目だとおもうけどなぁ。

複数年度予算に関しても触れられているが、こちらは茶山秀一:国費による研究開発における信託の活用の可能性が有望だと思う。

とりあえず、文科省:予算監視・効率化チーム Good Job!