科学と神秘のあいだ

この本は前書きに書いてあるとおりの本だと思った。

このちょっと風がわりな(じゃないかとおもう)エッセイの中で、僕は科学的な「ものの見かた」や「考えかた」にまつわるあれこれについて、書いてみた。

ニセ科学批判の本、あるいは内田さんの科学との正しい付き合い方のような科学啓蒙書ではなく、まさにエッセイ。でも、そこはかとなく、kikulogTwitterで繰り返し述べられているキーワードが登場するのでそういういみでは期待を裏切らない。

面白かったのはMakeの話題。こんな雑誌があるなんて知らなかった。書中に登場したウダーについては生で見たことがあるので「ああー、あれ面白いんだよねぇ」とニヤニヤしながら読んでいた。そして、たまたま今日の安住紳一郎の日曜天国のおでかけリサーチがたまたまMake Tokyo Meetingの話題だったのでシンクロニティーを感じた。

次に面白かったのはテルミンの話題。確かに物理学者だからといってテルミンを演奏していることを納得するのはおかしい。全然関係ないわ。あと「テルミン顔」やテルミン演奏の面白さなどが語られていて面白かった。

他にも「人間には説得力と納得力がある」という話。納得力が高すぎるからこそ、へんてこな話にも納得してしまう。たくさんのお勧めSF小説、ロックバンドの話題とか面白かった。

私のような読者が期待するニセ科学的な話題(あくまでも話題であって論破などをしているわけではない)も豊富だった。キーワードは以下のとおり。

あと、著者の菊池さんのニセ科学に対する姿勢が本の中で書かれていた。

いうまでもなく、ホメオパシーにしてもEM菌にしても、それ以外のニセ科学にしても、科学的にはてんでおかしい。あるいはオカルトやスピリチュアルなど、「まったくのでたらめ」と断言しちゃってかまわないものも多い。それなら、おかしいものについて「おかしい」とはっきり言ってあげるのはとてもだいじなはずだ。

それでも、ただただ「間違っている」と言い続けるだけでは、その言葉はおそらく当事者の耳には届かない。動機や個人的体験といった、簡単には否定できないものがそこにはあるはずだから。

どうしたらいいのか、答えがあるわけじゃないけど、「伝えかた」というのはたぶんものすごく大事で、そしてものすごくむずかしい。それでも、とりあえず伝えようとしないことにはなにも始まらないから、僕たちは手探りで進んでいくしかないんだ。
(pp. 150 - 151)

科学者は「〜なものだ」と思っている人には、ちょうど良い解毒剤だと思う。オススメ。