アサーティブな振る舞いについて2冊

研究室に入る前に「アサーション・トレーニング」「アサーティブ」などのキーワードが含まれている本を1冊は読んでみると良いと思う。特に、自分は人間関係が苦手であると思っている人ほど読んだ方が良いと思う。新社会人になる人は卒論や修論が終わり次第すぐに読んだ方が良い。

私は以下の2冊を読んだ。

以下、メモと感想。

人間関係のあり方を3つに分けたとき以下のように分けられる(と主張する心理学者がいる)

  • 非主張的(non-assertive):自分の気持ちや考え、意見を表現しなかったり、しそこなったりすることで自分から自分の言論の自由(人権)を踏みにじっているような自己表現のこと。
  • 攻撃的(aggressive):自分の意思や考え、気持ちをはっきりと言うことで、自分の言動の自由を守り、自分の人権のために自ら立ち上がって、自己主張はしているものの、相手の言い分や気持ちを無視、あるいは軽視して、結果的に相手に自分を押し付ける自己表現のこと。
  • アサーティブ(assertive):自分も相手も大切にした自己表現のこと。

開発現場のストレスを減らすアサーティブ会話術 キッチリ上達する7日間講座は、IT開発現場におけるケーススタディを通して、アサーティブな振る舞いとはどういうものかを学ぶ形式。改訂版 アサーション・トレーニング ―さわやかな〈自己表現〉のためには、トップダウン式にアサーティブな振る舞いとは何か、なぜ必要なのかを説明する形式。2冊を読んだ限りだと、結局は訓練がものを言うみたいなので、考え方がわかりやすく、ページ数も少ない後者がおすすめ。

「開発現場のストレスを減らすアサーティブ会話術 キッチリ上達する7日間講座」には、4つの約束、9つの権利が紹介されている。

  • 4つの約束
    • ごまかさない
    • 素直に伝える
    • 対等な目線で話す
    • 結果に責任を持つ
  • 9つの権利
    • 自分の感情と意見を持ち、それを表明する権利
    • 自分の意見を主張しないでいる権利
    • 尊重され、面目を保つ権利
    • 自分の話に耳を傾けてもらう権利
    • 自分の価値観を大切にする権利
    • 「NO」という権利
    • 欲しいものを望む権利
    • 自分の時間や身体、所有物をどうするか決める権利
    • 失敗する権利とそれに責任をもつ権利

「改訂版 アサーション・トレーニング ―さわやかな〈自己表現〉のために」では、5つの基本権利が紹介されている(具体的に数えあげると100以上あると言われているらしい)

  • 5つの基本的権利
    • 私たちは、誰からも尊重され、大切にしてもらう権利がある
    • 私たち誰もが、他人の期待に応えるかどうかなど、自分の行動を決め、それを表現し、その結果について責任を持つ権利がある
    • 私たちは誰でも過ちをし、それに責任をもつ権利がある
    • 私たちには、支払いに見合ったものをえる権利がある
    • 私たちには、自己主張をしない権利もある

上の列挙をしたものを読んで「うわっ、権利ばっか主張して義務を果たさないやつらがしょっちゅう言っていることばかりじゃない」と思うかもしれない。少なくとも私はそう思った。で、本を読んだ上で私が理解したのが、「アサーティブな振る舞いというのは、『これらの権利は私だけにあるのではなく、私を含めたすべての人にある』という前提の下でどうやって振る舞うかということを突き詰めていく」ということ。自分が上の約束や権利にしたがい行動をすると、必ず他人の約束や権利と相反する。そのとき、互いの権利を主張し、かつ、自分の主張や要求を相手に伝えるかというのがアサーティブな振る舞いの本質であると理解している。

私がこの2冊のアサーティブの本、そして、あなたを危機から救う一分間謝罪法を読んで、気が楽になったというか、納得が言ったことは「自分の主張を相手に述べること」「自分の主張を相手に理解してもらうこと」「自分の主張に対して相手に賛同してもらうこと」はどれも独立の話であるということ。そして、自分が気持ちよく生きていくため(少なくとも自己嫌悪に陥らないために)には、少なくとも「自分の主張を相手に述べること」ができなくてはならない。相手の協力を得るためには、少なくとも「自分の主張を相手に理解してもらうこと」ができなければならない。そして、自分ができる最大限のことは「自分の主張を相手に理解してもらうこと」までであり、「自分の主張に対して相手に賛同してもらうこと」は相手の責任(権利)であり、自分の責任(義務)ではないということ。

アサーティブな振る舞いの概念は、「自分の主張を相手に述べること」「自分の主張を相手に理解してもらうこと」「自分の主張に対して相手に賛同してもらうこと」はどれも独立の話であるということを理解させてくれる。あとは、どうやって、「自分の主張を相手に述べること」と「自分の主張を相手に理解してもらうこと」を成し遂げるかだけれども、アサーティブな振る舞いにおいては、これらは先天的なものではなく後天的に獲得可能な技術であると説明している。これも、人付き合いが苦手な人にとっては、気が楽になる話。

私は、職場においては攻撃的、プライベートにおいては非主張的な振る舞いなので、これらの本はとても勉強になった。ただし、実際に振る舞えるどうかはこれからの訓練がものを言うので、アサーティブな振る舞いは人間関係の特効薬とは言えない。