異分野の成果があなたの分野の発展に役立った事例はありますか?

事業番号13:競争的資金(若手研究育成)についての仕分け人の疑問行政刷新会議事業仕分け対象事業に対してのパブリックコメントを書こう!参加記(2):明日から始める情報発信に関連して。

日本国民の大半が「科学、スポーツ、芸術などは余裕があるときに行うことであり、不況で余裕がない現在はこれらをやる必要がない」と考えていると仮定したとき、「科学研究は科学技術立国のために必要不可欠だ」という主張は、何かしらの共感や理屈付けが伴っていない限りまったく届かない主張になってしまう。

子ども手当てや高校の授業料無償化は、明らかに科学研究やスポーツ・芸術振興と同じような投資なのだけれども、「未来を担う子ども達に選択の可能性を増やそう」という多くの人が納得する(全ての人ではないところに注意!)物語を持っているため、支持率が高い。

これを真似て、基礎研究や応用研究の必要性をアピールするためには、今まで無駄と思われていた研究成果が*年後に〜に使うという用途が提案されて**の分野の基礎的技術/ホットトピックになっているというエピソードが有用だと思う(こういう利益を説くアプローチは、当然、副作用があるけれども現在の状況ではもっともアピールできると思う)。

この不況下においても基礎研究の灯をともし続けるべきだと思う人は、ぜひ、この3連休中に「今まで無駄と思われていた研究成果が*年後に〜に使うという用途が提案されて**の分野の基礎的技術/ホットトピックになっている」というエピソードをブログや自分のWebページにアップして欲しい。自分で書くのが難しい人は、そのようなエピソードが書かれている本の書評は紹介をしたり、それが書いてあるWebページを紹介して欲しい。

「今まで無駄に思われていたもの」という点とは違うけど、基礎研究の有用性を示したエピソードの例としては以下のエントリーが参考になる。

有機化学の分野で、エノラートの化学と呼ばれるものがあります。C=O結合の隣で炭素-炭素結合を作る反応で、まず最も基本的な合成反応といえるものです。この基礎研究が与えた影響がどのくらいか、調べてみたことがあります。

とりあえずこの反応を使って作られた医薬のうち、手近な資料に載っていたものだけで、総売り上げは楽に2兆円を超えていました。抗生物質、スタチン剤など主要な医薬も多く含まれますから、命を救われた人、病苦から解放された人は数知れずでしょう。

情報はリンクしあっていたほうが良いので、可能ならばこのエントリーにトラックバックを打っていただけると嬉しい(Web上にあるだけで、検索には引っかかるので「基礎研究 役に立つ」あたりのキーワードを入れてもらうだけでもOK)。

私の知っている事例:素因数分解Amazonでのショッピング

私が感動したのは、RSA暗号のエピソード。数学の整数論という分野において、ある数字Xが与えられたとき、それは何の素数(1と自分自身以外では割り切れない数字)を掛け合わせて作られた数なのかを見つける方法(素因数分解)が研究されており、誰が行っても必ず同じ結果がでる方法(機械的な手法)を考えると、既に分かっている素数を使って小さい順にその数字Xを割っていくしかないということが分かった。この方法だと、数字Xの桁数を変えることで、最新のスーパーコンピューターでも素因数分解するのに1時間〜数億年かかるように調整できることが分かった。(この部分は不正確な記述があります。Marriage Theoremさんが訂正してくださいました。こちらどうぞ)

この数学者だけしか楽しめないような事実を基にして、公開鍵暗号の典型例であるRSA暗号という画期的な暗号方式が提案された。このRSA暗号は、発展をとげて、今のインターネット上の買い物を支える基本的な技術となっている。数学の整数論において素因数分解について研究がされていなければ、Amazonやe-Bay、Yahoo Auctionなどは存在しなかった(あるいは、発生が遅れた)ぐらいの技術。

wikipedia.jaなどでRSA暗号の部分を読んでもあまりわかりやすくないし、ドラマチックでもないので、以下の本がオススメ(私はこれを読んで感動した)。

ハードカバーで暗号自体の歴史をじっくり読みたいならば以下の本がオススメ。

人類の科学がグネグネしながらも、知見をあつめて発展してきた歴史を知りたいならばこちらが面白い。この本を読むと科学というのは天才だけのオペラなのではなく、たまにはバトンを落としてしまうような人間たちによるリレーなのだということが良く分かる。アインシュタインがいなくても相対性理論は生まれただろうけど、誰かがその研究をしていなければ、その研究は生まれなかった。世界規模で多様なテーマにそれぞれがそれぞれのやり方でタックルし続けていくことが重要なのだとわかる。